EIZOからコンシューマ向けモデルとして4Kディスプレイが発売になる。
周辺で発売されていたのは全て海外製だったが、ようやく日本製の登場である。
ナナオパワーを再び?
ナナオと言えばブラウン管時代の名ディスプレイメーカーとして私がもっともイチオシしていたメーカーである。
石川県七尾市に拠点を置くナナオは、その後EIZOと社名変更したが、その頃はブラウン管モニターから液晶モニターへと変遷した頃で、私としてはこの液晶モニターを作り始めたEIZOは、正直ブラウン管時代のナナオのような絶対的な品質という感じのメーカーではなくなっていた。
というのは、液晶パネルに問題があったからだ。もちろん、一部のプロ向け高級機はそんな事はないのだが、黎明期の液晶パネルの中には目にギラついたものを感じるパネルなどもあり、主として海外製液晶パネルにそういったものが多かった。その当時、最高品質と言われていたのが、シャープのAVS液晶パネルで、目に優しく発色性に優れたパネルだったが、EIZOが採用していたのは、韓国製のパネルで、ライバルの三菱製と比較してもそれに劣るとも言えるものであった。ちなみにAVS液晶は、初代PSPに採用された液晶パネルで、当時のSCEにいた久夛良木氏はAVS液晶搭載が可能になるまでPSPの発売をギリギリまで遅らせる、という事もした、とかしなかったとか…。
話を戻すが、EIZOの品質というものが迷走していた時代があった事は間違いない。
それから数年が経過し、概ね全てのメーカーの液晶パネルが安定してくると、EIZOの液晶モニターを問題視する声はなくなっていった。この頃になると、格安な液晶モニターが各社から発売され、品質に関して最上級品を求めなくても安定した製品を消費者が買える時代に突入する。
そうなると、品質を売りにしてきたEIZOからすると従来の製品路線だけでは売れなくなる。何しろ格安製品でも表示品質は良いのだから。
EIZOはその後、マルチメディアに対応するモニターや、廉価製品も発売するが、私の中では絶対的メーカーという座から徐々に消えていくことになる。ま、おそらくそれは私だけの話でなく、過去液晶モニターに品質を求めてきた人全般に言えるのではないかと思う。
そうして数年が経過した今、液晶モニター界に一つの大きな流れがやってきた。
それが4Kというジャンルの登場である。現時点において4Kという解像度で絶対的にコレだ、という製品が見えてこない。海外製で安いモニターも出ているが4Kで60fps、かつ遅延対策があるなど、フルHDで磨かれてきた技術をそのまま4Kに持ち込めているメーカーは不在だ。唯一、4Kテレビの東芝REGZAあたりがそれを実現しているが、PCモニターとして利用するにはまだ敷居が高い部分がある。
そうした状況の中、EIZOがPCモニターとして一つの製品を投下する。
それが「FlexScan EV3237」である。
この製品の狙いがわからない
「FlexScan EV3237」の表示品質は決して悪くない。
PCモニターとして利用する分には困る事はないだろう。何しろパネルはIPSで、輝度が300カンデラ、コントラスト比は1,000:1で応答速度が16ms(中間色5ms)、視野角が上下/左右とも178度というスペックからみても悪くはない。これで4K解像度なのだからまずまずだ。
だが、問題はこのスペックの中でも応答速度が気になる部分ではある。
PCモニターとして使用する分には申し分なくても、マルチメディアを想定したモニターとしては些か物足りない。
機能的には、DisplayPortを2つ、HDMIを1つ、DVI-Dを1つの4系統入力を装備して、上下/左右分割による最大4画面同時表示に対応している為、複数のデバイスを接続しての使用でも結構便利に使える。何しろ解像度が4Kだから4画面表示でもフルHDをドットバイドットで表示する事ができるのだから。
但し、これらの機能を持っているわりに、応答速度が心許ない。折角コンシューマ向けと銘打っているにもかかわらず、マルチメディアで使用するには弱すぎる。
EIZOはこの製品をどのポジションで考えているのだろうか?
現状では悪い選択ではない?
ただ、現状の4Kモニターを考えると、このスペックでも悪い選択にはならないだろう。
私が望んでいるものがハイスペック過ぎるのかもしれない。というか、現状のフルHDモニターと同じ機能を求める事自体が、現時点では早すぎるのかも知れないのだ。
それでも、REGZAの40型ではマルチメディアに耐えられる製品を投入している。但し、このBlogで以前にも書いたが、HDMI2.0でしか実現できないのだが。
だからこそ、PCモニター側でREGZAに対抗できる製品を待ち望んでいるのだが…今回のEIZOの製品ではそれに足だけの製品ではないようである。
最後に。
この製品の直販価格は199,800円である。
この性能の製品をこの時期にこの価格で購入するかどうか?
それは勿論個人の判断によるところだが、私ならパスするだろう。
これぐらいの価格を出すのなら、REGZAの40型に飛びつきたいところである。
EIZOが想定している用途と、私が想定する用途に違いがある以上、今回の「FlexScan EV3237」はベストマッチな製品とは異なるため、この価格が問題だというつもりはない。
ただ、業務含めたビジネスライクな使い方において現在2面以上のディスプレイを運用している人であれば、本製品はベスト製品となり得るかもしれない。