初めてこのタイトルをプレイしたのは、名器X68000で発売されたものだった。
リバーヒルソフトというメーカーから発売されたタイトルで、JBハロルドシリーズとは別物のタイトルとして発売された…と記憶している。
JBハロルドシリーズといえば『殺人倶楽部』や『マンハッタンレクイエム』などが有名だが、それらのタイトルは米国でのストーリーであり、どこか小じゃれた展開がウリであった。
そんな雰囲気も決して悪くはないのだが、日本っぽい何かが欲しいと当時思っていた私は、藤堂龍之介シリーズとして発表された、この琥珀色の遺言は実に興味のあるタイトルに映った。
明治から大正という、日本でも和風と洋風がもっとも色濃く混ざり合った時代をモチーフにしているだけあって、現代日本とはまたちがった独特の雰囲気があるこの作品は、そうした時代に何か特別な思いのある人にとっては多分たまらない世界観だと思う。
当時の私は明治維新から昭和初期という時代背景のゲームを好んでプレイしていたため、この作品の世界観は完全にマッチしたものだった。
そもそも琥珀色の遺言という言葉にある琥珀色という言葉も、明治から大正にかけてよくみられた洋館の色を表している。
この時代の洋館というのは、今でいう洋館とは全く異なる建築物であり、ゴシック調やアールヌーヴォー調といった雰囲気で作られたものが多い。
この作品に出てくる琥珀館もアールヌーヴォー調の建築物(記憶ではそうだったと思う…)で、そうした時代のテイストが、ストーリー上にいろいろと現れていた。
アドベンチャーゲームであるため、そうした細かい演出がストーリーに事細かく記載されているワケだが、そういうのを見て、私もいつかはシナリオライターになりたいとよく思っていた。
詰まるところ、私は過去プレイしたアドベンチャーゲームにかなりの影響を受けたと言わざるを得ない。
PCゲームを初めてプレイしたのも、ジャンルはアドベンチャーゲームだったが、その今まで見たことのないスタイルに、自分の未来を見つけたとさえ思っている(今でも)。
そんな私の未来を左右したタイトルの一つが、この琥珀色の遺言だった。
ネタバレになるため各所のストーリーは語らないが、この作品では琥珀館という一軒の洋館の中で連続殺人が起きる。
主人公の藤堂龍之介は、その洋館で起きた殺人事件の調査を依頼された私立探偵だが、調査が進展するというところまで進まない内に次ぎの事件が起きる。
なぜ殺人事件が起きるのか?というその理由は、最終局面になるまでほとんどわからない。わからない理由が、最終局面で一気にあふれる…そういうストーリー構成だったと思う。
文章を読むことが好きという人にはお勧めできる一本ではあるが…ミステリー小説好きにオススメできるかはわからない。
なぜなら…そこはやはりゲーム。歴史のあるミステリー小説と比較すれば、本格的と言ったところで所詮は亜流である。
だが、ビジュアルが伴うストーリーであるところは、小説にはない演出である。
このゲームはそういったところを楽しむものであり、その辺りを評価してもらいたい作品である。
かなりのプラットフォームに移植されているシリーズであるため、おもしろさは保証できるものである。
今回移植されたのはNDSで 発売は12月。価格は3,990円。
もしまだ未プレイというのであれば、価格が安くなったDS版をプレイする事をぜひオススメしたい。