おそらく、ほとんどの日本人にRPGって何?と聞くとコンピュータRPGの事をイメージするのではないかと思う。
ファミコンから始まり、PlayStationやPS2、PSPなど時代に合わせてハードも増え、また移り変わってきているが、根本的にハードウェアと向きあって遊ぶRPGをイメージすると思う。
まかり間違ってTRPGをイメージする人は、ほとんどの場合いないと思われる。
多分、私でもそうだと思う。
そもそもTRPGという言葉も知らない人の方が多いはずだ。
だが、もともと欧米ではRPG=TRPG(そもそもTRPGは和製英語)の事を指し、ゲーム機でプレイするRPGはコンピュータRPGと呼ばれる事が多い(…今の時代ではそうでもないかもしれないが)。
ではTRPGとはなんぞや?
知らない人も多いと思うので簡単に言うとテーブルトークRPGの略である。
テーブルトーク…テーブルと話すという意味ではない(爆)
テーブルで複数人が会話しながらRPGをするという意味である。
ではそもそもRPGとはなんぞや?
ロールプレイングゲームがRPGの略であり、ロール(役)を演じる(プレイング)ゲームを意味する。
つまり、TRPGとはテーブルを囲んで各々が与えられた役を演じるゲームの事を言う。
そして今日紹介するマンガは、そのTRPGを面白おかしく紹介しているマンガなのである。
といってもすでに絶版したマンガで、今から約14年前に発行されたものである。
昔、ログアウトという雑誌があった。
このログアウトという雑誌は、電源を必要としないゲーム、例えばボードゲームやカードゲーム、そしてシミュレーション(これもボードゲームと言えるかも)ゲームやTRPGを扱った雑誌で、今回紹介したマンガもそのログアウト誌上で連載されていたものである。
欧米では、ファミコンなどのようなコンピュータゲームが流行る前からRPGという役割を演じるゲームというのが存在していて、そもそもRPGは電源を必要としないゲームの代名詞だった。
だが、このRPGは一定のルールに基づいてダイス(サイコロ)を振って行動の成否判定を行ったりしており、結構数値処理するシーンが多かった。
今でいうコンピュータRPGは、そうした数値処理をコンピュータにやらせ、しかもシナリオなどもコンピュータ上で再現したものがその原点である。
コンピュータ上のプログラムでシナリオを実行するため、そのプレイヤーなどの行動には制限が設けられるが、人間がすべての処理を行うTRPGでは、そのシナリオを進行させるゲームマスターの裁量で、そのプレイヤーの行動は無制限・無限大とも言えた。もちろん、逸脱する行動は成否判定時に大きなペナルティを背負う事になるが、行動そのものはアドリブで無限に広がっていく。これは人間にはできてもコンピュータには不可能な事であり、それ故にTRPGは役割を演じるゲームとして無限大の楽しみ方があると言える。
TRPGの最大の弱点は、人間がセッション(TRPGを遂行する意味)のすべてをコントロールするため、ゲームマスターがシナリオを用意し、ある一定のルールを予め決めておき、プレイヤーが一定のルールを順守しながら自由に行動するという事をするため、最低でもゲームマスターがそうした前準備をする必要があり、また複数のプレイヤーが同時に集まる必要がある事が弱点といえる。一人で気軽に…という事が出来ないわけだ。
またプレイヤーはルール以外にはナニモノにも縛られないため、自らの行動を自ら決める必要がある。
与えられた情報から新たな情報を引き出すにも自分の行動を宣言しなければならず、またプレイヤーが知っている事=キャラクターが知っている事ではないという大原則に基づいて行動を決めねばならない。今のコンピュータRPGのように言われた通りに進めていけば勝手にシナリオが進行していくという事はないのである。
つまり、ある種ゲームマスターにも、プレイヤーにも覚悟が必要であり、その覚悟の元でいろいろな行動を可能にし、シナリオを面白おかしく盛り上げていく必要があるのである。
言い方を変えれば、そうした行動と結果によって、ゲームマスターもプレイヤーも自分たちで物語を紡ぎ出す行為がTRPGのすべてと言える。
小さい子供が遊ぶ“ゴッコあそび”とよく似た内容と言えば分かるだろうか。
人と人とが会話で進めていくというゲームであるため、ひょっとしたら現代人には難しい内容かもしれない。
最近、各所でコミュニケーション能力が足りないという話を聞く。
TRPGはまさしくそのコミュニケーション能力で楽しむゲームであり、ケータイメールなどでのテキストコミュニケーション主体の現代人では楽しさを理解する事も難しいのかもしれない。
だが、一度その役割を演じるという演劇的楽しみにハマると、コンピュータRPGよりもずっと面白いと思うようになるかもしれない。
今回紹介する“おこんないでね”というマンガは、作者がそのTRPGを遊んだ時の状況を面白おかしくマンガにしている。ただ…多分書かれている内容のほとんどは事実だろうと思う。
一部、解釈の拡大はあるだろうが、サークル活動的な面白さがマンガになっていると言える。
今から約14年前のマンガであるため、入手もオークションや古本屋になってしまうだろうが、TRPGに興味のある人は一度でも読んでおいて損はないマンガだ。
いや、逆に読んでおいたほうがいいマンガだと私は思っている。
TRPGの楽しさを感じる事のできるマンガは数少ない。この本はその少ない中の一冊である。
…と言っても、2010年の今、TRPGそのものがかなり下火といえる。
日本ではもともと下火傾向の強い分野である為、当時も一般的ではなかっただろうが、今のご時世はもっと異端である。
ただRPGの原点はコンピュータRPGではないという事、そしてRPGとは役割を演じるゲームである事の意味を最も理解できるのがTRPGである事はぜひ知っておいて欲しい事である。
そしてそれらを理解する意味でも、この“おこんないでね”は実に参考になるマンガである。
古い本だが、お薦めの一冊である。
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