Sandy Bridgeがまだ発表される前の話である。
一部のPC系先行情報サイトでこんな噂が流れていた。
「Sandy Bridgeはオーバークロックが難しい」
なぜそんな噂が流れたのかというと、それはSandy Bridgeがどうもベースクロック固定のCPUらしいからであった。
オーバークロックは通常2つの方法によって行われる。
一つがコア動作倍率を変更するという方法で、もう一つがベースクロックを上昇させるという方法である。
例えばベースクロック133MHz、コア倍率20倍のCPUがあったとしよう。
このCPUは通常、133(MHz)×20(倍)=2660(MHz)、つまり2.6GHzで動作する。
もしコア倍率を22倍に変更(オーバークロック)した場合は、133×22=2926、つまり2.92MHzで動作する。
もしベースクロックを150MHzにした場合は、150×20=3000、つまり3GHzで動作する事になる。
双方とも、同じ3GHz近くで動作するが、その方法は全く異なる。
だが、もし双方のオーバークロック方法が同時に行われたならば…150×22=3300、つまり3.3GHzで動作する事になる。従来のCPUにおけるオーバークロックは、このように二つの方法のバランスで、もっとも高速動作する所を狙ったものである。
ところが、Sandy Bridgeはベースクロック固定という噂。もし本当なら、クロック倍率でのオーバークロックしかできない事になる。
北森瓦版
“SandyBridge”がベースクロック上昇によるOC困難という噂 再び
そしてそのクロック倍率の上限値は倍率ロックフリーモデルで57倍と言われている。どうもその57倍というのも、上限設定値として決め打ちされているものらしいというのである(あくまでも噂で)。
だから噂を信じるとするならば、つまるところベースクロックが100MHzに固定されているSandy Bridgeの理論上の最高動作クロックは5.7GHzという事になる。
もっとも、この理論値はCPUの個体差にも関係がある。個体として57倍で動作できるかどうかは個別の特性によるのである。
しかも、そのCPUと接続するチップセットの特性(というか載せているマザーボードの特性)の影響も受ける。だから理論的に57倍といっても、それが50倍で止まる場合もあるだろうし、57倍まできっかり出る場合もある(ほとんどの場合、理論値いっぱいに出る事はない)。
オーバークロックというのは、このように個体の特性によるところが大きい。
CPUを大人買いする人がいるが、それはこの特性の違いがあるためである。
最近では滅多にいないが、CPUを箱で買い、一つ一つオーバークロック耐性を調べていき、もっとも高速に動作するCPUだけを残し、他はオークション行き。そんな人が昔にはいたのである。
その個体差があるのが常ではあるものの、CPUの歩留まりの良さでそのバラツキが極端に少ない場合もある。
使用するシリコンウェハが均一に組成変化(イオン注入器によって注入されるイオンが平均的に注入されシリコンの組成を均一に変化された場合)していて、半導体の製造が安定してきた時、そのバラツキが小さくなっていく。
そうなると、どの個体を使ってもあまり変化がなくなる。実はこの状態がもっとも望ましい状態なのである。
どうもSandy Bridgeはそうした素性の良いCPUらしいようで、比較的倍率変更で好結果を出しやすいCPUの様である。
AKIBA PC Hotline
Sandy BridgeでOCテスト、空冷でも5.5GHz達成
なんと空冷で5.57GHzである。
しかもさらに冷却したとしても、その結果は変わらず、マイナスにまで持って行くと結果が悪くなるという。
この結果には正直私も驚いた。
空冷で、という所もそうなのだが、この数値から考えて噂であったクロック倍率の上限が57倍というのは、どうも本当らしいという裏付けになったのである。
先行する噂にはいろいろなものがあって、信じるに足らない情報というのも多い。
しかし、ことSandy Bridgeに関して言えば、噂の段階でかなりの正確だったようである。
今はチップセットの問題で今ひとつ盛り下がってしまったSandy Bridgeだが、このように素性はとても良いCPUである。
対策チップセットも徐々に流れてくるだろうから、PCのアップグレードを考えている人はオーバークロックマージンを考えてSandy Bridgeを狙ってみるのも一つの手かもしれない。
意外なまでの性能になるかもしれない。