エネルギー問題が深刻化した辺りから、急激に自然エネルギーへの注目が大きくなっている。というか、そうならざるを得ないという風潮が世の中を吹き荒れている。原発の安全神話が崩れ去るという事は、つまり豊かな生活の保障がなくなるという事に直結した話だが、実際電力不足は日本中に影響を及ぼし、人々の生活の利便性だけでなく、経済の停滞を引き起こした。
その数年前、日本はソーラーパネルの開発でも世界一を誇っていたが、ここ数年の経済不振から一気に世界3位以下という地位に落ち込み、そこにきて大震災&電力不足という状態を招いた。
全てが悪い方向に向かっているように思えてならないが、それは政策が悪いのか、それとも企業努力が足りないのか、その答えをハッキリ言える人は少ないのではないかと思う。
誤解を恐れずに私個人の意見を言わせてもらうなら、ホワイトカラーと呼ばれる人達の危機感のなさ、政治家の思想、一部の大企業の経営者と呼ばれる部類の人達の国際観念のなさ…など、大凡大多数の指揮をとる人達の舵取りに問題があったとしか思えない。だが…その中でも問題は政治家で、その政治家を選んでいるのは国民たる我々であり、その我々そのものが政治に無関心である事が大きな問題だったと言える。
長年、日本は政治的な問題を大きく取り上げなくても世界有数の経済大国たり得た事が、今そのまま危機感となって降り注いでいる。要するに、結局悪いのは今の時代の大人達であり、問題を先送りにしてきたツケが今回ってきているにすぎない。
話が逸れた。
今、深刻化しているエネルギー問題を根本から改善出来るかどうかは分からないにしても、画期的な開発が今ひとつ実を結んだ。
これは大阪大学産業科学研究所の能木雅也准教授らのグループが開発した“紙の太陽電池”である。能木准教授は材料学を研究しているのだが、太陽電池の小型・薄型化の研究において、木材パルプの繊維を暑さ15nmにまで薄くして透明化させ、それを基板として利用することで環境に優しく、製造コストを10万分の1にした紙の太陽電池の開発に成功した。
毎日新聞
紙の太陽電池:製造コスト10万分の1 阪大グループ開発 (現在リンク切れ)
この紙の太陽電池、電力変換効率は3%と、屋根に乗せる太陽パネルの変換効率10~20%のものから比べると低いものの、同じ素子を使用したガラス基板の太陽電池とは同等の変換効率を持つ。
もう少し変換効率が高ければ…と思わなくもないが、製造コストが低い事で使い捨ての太陽電池としての活用が想定できる。何しろ、単価10万円のものが最高1円になるのだ。仮にその10倍のコストがかかったとしても10円である。
また、透明フィルム状の繊維基板は厚さ1mm以下で折りたたむ事ができるため、いろいろな用途に応用ができる。電力変換効率が3%であっても、その使用範囲が劇的に増えれば今まで発電していなかった所で発電ができるわけで、全体を通してみれば画期的な開発と言わざるを得ない。
これならバッグの表面にフィルム状の太陽電池を配し、バッグのポケットに入れた蓄電池を充電、そのまま通信端末を充電という使い方もできる。いや、いっそのこと服に太陽電池を付けて、胸ポケットの蓄電池を充電して…なんて使い方でもいいかもしれない。
太陽電池がダメになれば、交換すればいい。そもそも太陽電池の製造単価は安いのである。
…こんな未来がすぐそこにやってくるかもしれない。
この紙の太陽電池の研究、数年後に実用化という話が出ているが、こういう発明にこそ人材と予算を投入して早期対応すべきである。
もちろん、他にも有効な研究はあるだろうが、海外への技術流出が激しかったここ数年を日本が取り戻す為には、有効な研究に対しての予算集中投入が不可欠だ。
そして世界の中で、あらゆる手段で戦える日本を取り戻さないと、アジアの中でも不穏な波に飲み込まれてしまうだろう。
若い世代の中には既に目覚めている人も多い。今本当に目覚めなければならないのは、世の中に大きな影響を与える事のできる大人達である。