北米でPlayStation4が発売され、すでに半年が経過した。しかし未だ対応していない機器があった。それがnasneである。
今度のtorneは3倍速起動
PS4でネットワークレコーダーのnasneをコントロールするアプリケーション「torne PlayStation 4」がようやく6月10日より提供開始する事が発表された。価格は823円(税込)で、6月10日から7月31日までの期間限定で、無料配信キャンペーンをが行なわれる。
torne PlayStation 4(以下torne PS4と略)は基本的に従来発表されてきたtorneというアプリケーションと同じではあるが、その高速起動は従来のtorneとは比較にならないぐらいに速くなっている。PS4のマシンパワーの成せる技と言ってしまえばそれまでだが、PS3比で約3倍ほど高速起動し、さらにPS3では保証されていなかったゲームとの同時起動にも対応した。これでゲーム中に気になったテレビ番組を手軽にチェックする事が可能になったと言えるだろう。
搭載された新機能
torne PS4はもちろんただのPS3版やPS VITA版の移植というわけではない。
新機能として、トネルフという鳥のキャラクターがオススメ番組を紹介したりする機能が搭載されている。
これはtorneによる録画ランキングの情報などを利用したものではなく、独自データに基づいて番組を選んでいるようで、ただ単に人気がある番組をピックアップしている…という事ではないようだ。
その他、torne PS4の機能を紹介している動画があるので、そちらで詳細を確認して欲しい。
その恐ろしく速い動作は、既存のテレビレコーダーを凌駕する速度だ。
ゲーム以外にもテレビも観る…という人には、このtorne PS4とnasneは異次元の世界を提供してくれるだろう。
アプリケーションの立ち位置が変わった
今回PS4板として登場したtorne PS4だが、PS3版とは明らかに異なっている部分がある。
それは、アプリケーションの立ち位置として「ミニアプリ」に属した、という事である。
PS3版では、実はゲームと同じアプリケーション層にtorneは属していた。だからゲームを起動しながらtorneを操作する事は基本的にできなかった(録画機能そのものはバックグラウンドで動作していたが…)。
ところが、PS4版はこの立ち位置が「ミニアプリ」という位置に属したため、ゲーム起動中でも同時起動して操作する事ができるようになった。ちなみにPS VITA版も「ミニアプリ」に属していて、ゲーム途中に切り替えられるようになっている。もちろん、それぞれのアプリは途中でPauseさせないといけないワケだが、こうしたシームレスな切り替えによる操作で、ユーザー側の使い勝手は向上しているのである。
ゲームもしたいけど途中でテレビも観たい。でもゲームを終わらせるのが難しい…そんなシーンで、torne PS4はユーザーの願いを叶えたのである。
何故今まで出てこなかったのか?
正直、私はそれが不思議でならなかった。
PS3とPS4のアーキテクチャが根底から違うために遅れていた、という事は考えられなくもないが、そもそもPS4のアーキテクチャはベースにx86技術が使われている。それは使用しているコアがAMDのAPUだからだ。
だから、既にPC側で展開しているVAIO TV with nasneがある以上、私としてはtorne PS4はもっと早い段階で登場すると思っていた。
もちろん、従来のPCとPS4が全てが同じとは言わないが、PS3のような完全独立型のコアと違い、x86コアとして共通する部分も多いのも事実だ。
しかし、実際には登場までに半年を要した。
開発順位として、優先度が低かった、という事だろうか?
実はこの理由、単純な話なのだが、PS4の立ち位置に問題があったのだ。
ちょっと乱暴な言い方になるため、誤解を招きかねないが、あえて表現を鋭角化して書くが、画面出力としてPS4はHDMIを採用しているが、実はこうした端子の形状は実際の画面出力フォーマットとは直接関係がない。PS4は色をRGB系で出力するように作られている。これはPS4がゲーム機として特化した形で設計されたからだ。
ところが、テレビ放送やBlu-rayコンテンツの映像出力はYUV系といい、輝度・色差でその違いを表す処理がなされている。つまり、PS4の初期のシステムソフトウェアではRGB系の色表現しかサポートしていなかったため、単純に従来のPS3版などの移植ではダメだったのだ。
そこでSCEはtorneをPS3版と遜色なく動作させるために、わざわざシステムソフトウェア側でYUV処理が行えるような処理を行う様、仕様変更をしたのである。
やはり映像を扱う以上、放送やビデオコンテンツで採用している処理をしないというワケにはいかない。そんな所で色差が出てしまうようではマズイ、と開発陣は考えたようだ。
結果、torne PS4はYUV処理で放送を表示する事ができるようになり、従来と遜色ない表示を可能とした。
また、もう一つ乗り越えなければならない問題があった。
それがHDMI-CECである。
聞き慣れない言葉だろうが、「VIERAリンク」とか「レグザリンク」と言えば分かるだろうか。Sonyにも「BRAVIAリンク」というものがあるが、このHDMI-CECはHDMI端子で接続された機器同士でリモコンの操作コードやコンテンツの種別情報をやり取りして、機器を最適化したりする仕組みで、テレビなどで「シーンセレクトを切り替えました」とかなどの表示が出る時があるが、それはそうしたコンテンツ情報からテレビの機能を最適化して切り替えているのである。
torne PS4もテレビコンテンツである以上、いくらPS4上で動作しているとはいえ、これらのHDMI-CECの情報を扱わないワケにはいかない。そこで、torne PS4は起動時にコンテンツ情報を取得した場合、PS4側でテレビにその情報を送ってテレビを最適化するようにした。もちろんそのコンテンツ情報はEPGから読み取っているそうで、事実上、このtorne PS4を導入する事で、PS4はほぼ寸分無く普通のテレビとして機能するようになった、と言うわけである。
単純に登場までの時間がかかったり理由は、ゲーム機に特化しすぎたPS4の仕様を変更する為だった、というワケである。
元々テレビのセットトップボックスをも意識して作られたXbox ONEでは、おそらくこんな問題は発生していなかっただろうし、そもそもtorne PS4ほどの拘りを持っているかもわからない。
これは家電を取り扱っているSonyというグループの一つであるSCEだから拘った部分とも言える。
とりあえず6月10日にはPS4でnasneをコントロールし、PS4がタダのゲーム機からホームデバイスへと一歩踏み出す事になる。
ライバルと目されるXbox ONEはもともとセットトップボックスの機能を持たせるホームコアデバイスとして設計されているが、nasneとの連動でPS4も同じ土俵へと上る事になる。
いや、日本という地域だけで言えば、Xbox ONEよりはずっと家電よりにシフトした可能性もある。
PS4を持っている人はぜひともnasneと連動させてほしいし、PS4を持っていない人はぜひnasneと一緒に導入してゲームとテレビの融合を体験してもらいたいところである。
かくいう私もnasneは欲しい機器であり、またPS4もどこかのタイミングで…と考えている。
torneでニコニコ実況を観ながらnasneに録画した番組を観る面白さは、実際に観てみないとわからないかもしれない。
テレビはまだまだ面白くできる。
そんな事を感じることができる機能を、torneは持っている。
普段からテレビを観ないとう人も、ぜひ一度体験してほしい…それがtorneである。