5月からSIMロックフリー化のガイドラインが実施されはじめた。
恩恵を受けられるのはコレから
正直、今回の一歩前進は大きいとは思う。
でも恐らく誰一人として満足はしていないだろう、とも思う。
何故なら、結局SIMフリー化が可能な端末は5月以降に発売される機種からであり、従来機種はメーカーによって可能だったり不可能だったりする為、現時点では恩恵を受けようがないのだ。
しかも、ドコモなどの一部機種では、従来より改悪となった側面もある。その対象となる人々からすれば、今回の一歩は前進ではなく後退であり、納得できない人もいるだろう。
さらに言うなら、2年縛りの問題も消費者の望みに達したかというとそうとは言い難い。結局2年縛りは有効のままで、ただ切替の有効期間が1ヶ月から2ヶ月に伸びただけの事である。
そもそも、2年縛りとは何なのか? という事を改めて考える必要があるように思うのは私だけだろうか?
間口を広げられるのか?
私が望むのは2つ。
一つは従来機種もSIMロックフリー化の対象にする事である。
ただ、これをイキナリ実現すると、日本の3大キャリアが困るという事も理解しないわけではない。
だから条件が付いても仕方が無いと思うし、むしろ付けるべきだと思う。
条件としては、その機種を契約してから2年以上経過している事。コレでいいと思う。2年以上経過しているという事は、少なくとも端末を月割で買っている人は端末代の支払いが終了しているワケだから、メーカー側としても機種代金の回収を終えている事になる。少なくともこの問題さえクリアできていれば、メーカー側としては大きな損害を出す事はないハズだ。
それと、私のもう一つの望みというのは、2年縛りをなくすのではなく、初回の2年のみにする、という事である。
2年契約を続けた後は、そうした縛りを設けない。これがもう一つの望みである。
そもそも2年縛りとはどういう事なのか?
1ヶ月あたりの使用料金を安くする代わりに、2年という間、確実に通信量を徴収できる…という仕組みであり、この縛りは現在固定のインターネット回線契約にも用いられている。
だが、そもそもの「縛り」はそうした事から始まったのであり、それを強制しているウチに2年縛りが当たり前のように事が運ぶようになってしまった。
私はそれが問題ではないか? と思うワケである。
消費者が選べる契約体系
日本と海外が大きく事なる側面は、キャリアがハードウェアをコントールしているか、そうでないかという事である。日本では、ハードウェアをキャリアが扱っていた事により、問題が深刻化しているように思う。
海外でももちろん「縛り」は存在するが、端末自体の所有権という問題が明確化されている。だから2年の間、端末代を支払いきったなら、その端末に関する自由は消費者に帰属し、そこからSIMロックを解除しなければならなくなったり(しなければ訴訟になる事もあるからだ)、そこから派生する問題を回避するために、縛り後のサービスを何かしら用意するキャリアがある。
だが、日本は端末を買ったユーザーに所有権があるにも関わらず、その端末がキャリア固定である事を良い事にキャリア側が強権発動している。「通信」というものと「ハードウェア」というものが、切り離されて考えられていないのである。
この従来のやり方が、日本のサービスをややこしいものにしている。
家電量販店などで、お年寄りが「内容がわからないからお任せします」と、そのキャリアの販売員にお任せにしてしまっているケースも十分ありうる。それぐらい複雑な契約体系なのである。
ここまで複雑化しているのは、ハードウェアを月割で販売しているからであり、その体制と通信サービスを融合させてしまっているから発生する。
購入したハードウェアは誰のものなのか?
まずそこから真っ正面から考えていかないと、通信サービスの“適正価格による”サービス向上は中々にして難しいように思う。
だが現状は理想とはかけ離れている。
だからイキナリ通信とハードウェアを切り離せとは言わない。
私は2年縛りは最初の2年は仕方が無いと思っている。安くはなくなっているハードウェアの月割の支払いもする場合、月々の支払いは重くなるのは当たり前の事である。だから通信費を安くする為にも2年間は安定した通信費を支払い続けるという契約をするのは、消費者の自由だし、そういうルートを用意するキャリア側にも賛同する。
だが、問題は2年後の話である。2年間でハードウェアの支払いは終了し、今後はその分が月々の支払いから軽くなる際、そこからの通信費の支払いは、消費者が選択できるようにするべきではないかと思うのである。
月々の通信費を安くしたい人は、継続して2年縛りにすれば良いし、その縛りがイヤな人は月々の通信費が高くなるという契約にできれば良いのである。
おそらく、そうならない最大の理由は、MVNOの台頭によるものがあるからではないかと思うが、通信事業の自由化を進めていく上で、このキャリア側の縛りという問題、SIMロックの問題は、こうした問題を解決していかないかぎりは軽くならない。
総務省のお偉方は、その辺りをちゃんと考えているのだろうか?
結局は、3大キャリアとの関係を考えて、踏み込む事ができずにいるのではないだろうか?
問題解決はコレからが本腰
私は、5月から始まったSIMロック解除のガイドラインはまだまだ序の口だと思っている。
私は、国内のあらゆる“形のあるモノ”の内需が冷え込んでいるのは、通信という“無形である”サービスに国民がかなり大きなコストを支払っているのも一つの大きな理由だと思っている。
従来の日本では、形のあるモノに対しての消費が多かったが、ケータイやスマホが台頭してくるにつれて、徐々に形のあるモノに対してコストを支払わなくなってきている。
もちろん、それだけが理由ではないとは思うが、通信費は今から20年前とくらべて爆発的に増えているハズだ。
別に無形物にコストを支払うのが良くないと言っているわけではないが、国民の消費の割合をもう少し見直さないと、国家全体の産業を一変させなければ企業が成り立たなくなる時代に来ていると思う。
イヤ、ある意味、今はそれ故に好転している企業とそうでない企業に明確に分かれてきているように思う。
国家全体の産業構造を変える方が良いのか?
それとも国民の消費動向を変えていく方が良いのか?
どちらも簡単な事ではないが、景気を左右する大きな問題である事を、総務省は重く受け止める必要はあると思う。事は通信事業者だけの問題ではないのである。
こういう側面があると考えると、そもそも日本の行政体制では難しいように思う。
結局は「その分野は我々の範疇ではない」とかいう、縦割行政の悪い部分がすぐに顔を覗かせるからだ。
時代がこんなにも変化しているのに、行政は変化できないでいる事が、どれだけ国民に負担を強いているか?
日本という国家は誰の為にあるのか?
政(まつりごと)を生業とする人たちには、この問題をもっと真剣に取り組んでもらいたいものである。