本当の意味で道具になったPCは文具系?
ポータブックという文具
ポメラというテキストを入力する為だけのデバイスを文具という方向から発売していたキングジムが、遂にPC市場に進出してきた。
発表した製品はポータブックという名で、8型クラムシェルノートPCという分類になるが、その入力する為のキーボードに関して言えば、12型ノートPCクラスを搭載するという、話だけ聞いていると「何じゃそりゃ?」的なデバイスである。
まぁ、8型デバイスに12型キーボードを搭載するとなると、普通に搭載したのではキーボードがはみ出るわけで、そのあたりはポメラを作ってきたキングジムらしい解決策で製品化している。具体的には、ほぼ真ん中で二分割するキーボードが左右に分かれ、90度回転させて収納するという、実にキングジムらしい…というか、ギミック好きな人からするとニヤけてしまうような機構を搭載している。だが、この分割式キーボードを搭載する事で、本体サイズA5に近いサイズで快適な入力ができるPCが実現できたのだから、とにかくフットプリントが小さいPCが欲しい、という人にとっては使い勝手の良いPCと言えるかも知れない。
薄い? 小さい? どっちが良い?
この8型サイズのポータブックを見て、私が最初に思い浮かべたのが、VAIO Uという製品である。
VAIO Uは、小型PCに分類されるPCだったが、小さいかわりに厚みのある筐体だった。
当時、私は薄さよりも小ささを求めていた事もあって、とにかく薄さを求める一般的なノートPCよりもVAIO Uの方に魅力を感じていた。私が購入したのは、VAIO U3という二世代目のUシリーズだったワケだがその外観はノートPCのような「板」という感じではなく「塊」といった風貌で、それでもフットプリントの小ささから、鞄の中で他の厚みのあるものと一緒にコンパクトに持ち運びが出来ていた。
その後、UシリーズはVAIO type Uとして進化し、その後このサイズのPCは他社含めて発売されていない。私としては、ある一定のニーズはあるカタチだと思っていたが、多分そんなに数の出るPCではなかった為、終息に向かったものと思われる。
だが、今回キングジムから発表されたポータブックは、まさしくこのVAIO Uのようなサイズであり、かつてVAIO Uを愛用していた人からすると、かなり気になるPCなのではないかと思う。
もう少し進化すれば…
ただ、今回のポータブックは、まだまだその作りは荒削りのように思えてならない。
これはキングジムがPC市場にはじめて参入した製品という事を考えれば、仕方のない事なのかもしれないが、もっと利便性を上げる為の工夫が必要ではないかと思う。
確かにいろんなレビューを見る限り、キーボード自体の作りはかなり良いようだが、キーボード中央に配置された光学式フィンガーマウスと呼ばれるスティック型ポインティングデバイスは、光学式故にその操作感が独特のようで、かつてThinkPadに採用されていたトラックポイントのような使い勝手とは程遠いようである。
また、搭載されている液晶パネルだが、どうもTN方式のパネルを採用しているようで、上下の視野角が狭いらしい。コノ手のPCはとかく小さい事でいろんな場所で運用する事をユーザーは想定するため、上下の視野角が狭いのはある種致命的と言える。
他にも、搭載しているメモリ量が2GBと実に中途半端であったり、内蔵ストレージが32GBと小さいのも気になるし、何より搭載CPUがAtomである事も私的には気になる要素である。
文章のみを扱う事を想定しているが故に、このようなスペックになっている野田と思うが、PC市場に参入してきたPCである事を考えると、もう少しスペックは上で考えないと訴求力は弱いように思う。
これだけの性能でありながら、価格が実売予想価格で9万円というのは、かなり割高に感じられる。スペックだけで見ればタブレットPCと同程度であり、そのタブレットPCなどは、最近は3万円台ぐらいから存在しているワケだから、いくら狙っている層がタブレット層と異なるとは言え、この価格差はマイナス要素と感じる。
つまり、ポータブックはまだまだ進化しないと本当の意味でのユーザーニーズに近づかないように思えるわけである。
ポメラの延長…と考えているだけでは、PC市場に参入した意味はあまりない。PCとしてのポジションに入るのであれば、ポメラではできなかった事が出来るスペックを持っていなければならないし、価格的には総でなければならない、と私は思う。
とりあえず、キングジムがスキマを狙って打ってきた新製品として、その狙いそのものは悪くは内と思う。問題はまだまだあるが、今後に期待したい製品ではある。