以前は雑誌付録アンプに興味津々だったが…
バランス駆動
5月30日発売の「DigiFi 第22号」に、バランス駆動対応のヘッドフォンアンプが付録として付いてくる。
雑誌価格は5,500円と高いが、バランス駆動対応のヘッドフォンアンプがついてくると思えば極端に高い買い物ではない。
ただ…残念な事にこの5,500円で購入できる雑誌だけでは実際にはバランス駆動にならない。そう、雑誌付録として付いてくるのは、あくまでも“バランス駆動対応”のヘッドフォンアンプなのである。
実際には、オペアンプがあと2個必要になり、それを追加してやる事でバランス駆動になる。
このアンプの開発は、Olasonicが担当していて、3極のボリューム付きステレオミニとRCA端子をインターフェースとして持っている。これらは切り替えで利用できるアナログ入力で、出力は3ピンXLRバランス端子と3極のステレオミニ端子ととなっている。
ヘッドフォンアンプそのものは13V昇圧駆動になっていて、いろいろなヘッドフォンを駆動させられる。もちろんインピーダンスの切り替えも可能だ。
前述したように、このヘッドフォンアンプをバランス駆動させるには、オペアンプが2個必要になるが、基板上では3個のオペアンプが搭載できるソケットが付けられている。つまり、最初から1個オペアンプが搭載されていて、標準ではそのオペアンプでアンバランス駆動させる事ができる。
搭載しているオペアンプはバーブラウンの「OPA2134PA」で、雑誌付録としては破格の部品が載せられていると言える。
追加でさらなる機能強化
このバランス駆動対応のヘッドフォンアンプには、追加基板が用意されていて、3ピンXLRバランス端子ではない、4ピンXLR端子、3.5mmの3極ミニ端子×2、アイリス端子、2.5mmの4 極ミニミニにも対応する機能を持たせられるようになっている。
その追加基板「DF22-EXP」も3,000円で用意されていて、今回のバランス駆動対応のヘッドフォンアンプと横並びに接続させる事ができる。
さらに、入力端子が全てアナログであるため、この状態だとただのバランス駆動対応のヘッドフォンアンプにしかならないが、DigiFi No15と16でハイレゾ対応のD/DコンバータとD/Aコンバータが既に雑誌付録として存在していて、それらと組み合わせる事でハイレゾ対応USB DACとして使用する事もできる。
DigiFiの雑誌社であるステレオサウンドでは、これらを組み合わせて使用できるようなシャーシなども販売している。
ステレオサウンドストア
http://store.stereosound.co.jp/
基盤剥き出しで使用する分には格安でハイレゾ対応システムを作る事ができるが、販売しているシャーシなどを組み合わせるとかなり高額なものになるため、ここらへんは市販品と相談してどちらが自分として面白く使えるか? という事を検討する必要はあるだろう。
一般化しないハイレゾ音楽
音楽の世界に“ハイレゾ”という言葉が登場して、もう既に結構な時間が経過しているかと思うが、思った程一般に浸透していない印象がある。
たしかに以前よりはハイレゾやDSDという言葉も浸透してはいると思うが、それでもまだ一般的と言い切るには足りていない感じがする。
結局、今巷に溢れている音のほとんどは、CD音源を大きく超えた音源ではなく、未だその技術の上にある音楽が流れている。
それだけCD音源が世間に浸透しているという事なのかもしれないが、音響メーカー含めて音楽メーカーがハイレゾという分野を広めたいと思うなら、まずこの現状を打開する必要がある。
だが、業界自体がハイレゾに移行させる為の難しさの前に屈してしまっているように思えてならない。
もし、CDが飛ぶように売れる時代だったとしたならば、ハイレゾ音楽を収録した音源と通常音源のCDを同価格で販売する事で、ハイレゾ音楽は一気に広まった可能性はある。
だが、CDが売れている時代に存在していたハイレゾ音源メディアであるSACDは、再生させる為のハードルが異常に高かった。SACDプレーヤーだけで安くても十数万円という価格では、とても一般化できるものではない。
であるなら、今の状況でどうやってハイレゾ音源を浸透させていくか?
私は一つの方法としてYouTubeやニコニコ動画、あるいはInstagramなどの動画の音をハイレゾ化し、そうした再生機からハイレゾ化を進めていくしかないだろうと思っている。
もちろん、そうなればネットのトラフィックが増大する事は間違いないのだが、まず巷に溢れている音をハイレゾ化していくしか、普及させる方法がないのではないかと思うのである。
つまり、今の時代は一つの業界が推進させていても達成できない、という事である。あらゆる業界が手を結んでより高度なシステムを構築していかないと、世間一般に浸透しないと思う。
と言うわけで、ハイレゾ音源は私が思うにまだまだ一般化はしないと思う。
だが、それでも少しでも良い音が欲しい、と思うなら、やはりまず最初はスピーカーやヘッドフォンといったアナログ最終出力部分を高度化させるのが良いように思う。
今のアンプから出力されている音もこうした最終出力部分を高度化させる事で、音自体は劇的に変化する。
そして次にD/A変換部分を、そして次にアンプ、といった順に高度化させていけば、良い音に出会えると私は思っている。
まぁ…人によってはD/A変換部分よりも次にアンプだろ、という人もいるかもしれないが。
どちらにしても、良い音と出会うには、現時点ではそれなりの投資が必要である。
その投資を少しでも安くしたいとなれば、今回のDigiFiのような雑誌付録でカバーする、というのが良いだろう。