趣味の領域を出ない逸品。
未来機能がどこまで活きるのか
8月21日に発売が始まったRadeon RX Vega64だが、そのレビュー動画が掲載された。
リアルタイム放送もしていたのだが、私は観る事ができなかったため、今日になっての確認だったワケだが、この二人が野放しになった状態での放送は相変わらずの内容であった。
進行はさておき、そのVega64の動作だが、流石にAMDのハイエンドだけあって、その処理能力は凄まじいものがあるのはよくわかった。
また、加藤氏の説明にもあるように、HBM2をキャッシュメモリとして使用するという未来機能などもあり、如何に革新的な技術を投入しているかもよくわかったのだが、それでもGeForce GTX 1080Tiには届かないという状況は、やはり現在ではNVIDIAの方が一手進んでいるのかな、という事を思わせる。
動画の中でも言われているが、この結果だと普通の人なら無難にNVIDIA製カードを使う方が無難だと言える。何と言ってもワットパフォーマンスが違い過ぎて、いくら最高性能が高くてもその最高性能でGeForce GTX 1080Tiに届かず(1080とほぼ同等)、ワットパフォーマンスでも届かない状況では、選択肢としては普通ならGeForce系を選択するのが真っ当だからだ。
性能が同程度でも消費電力がかなり大きい、となると、選択肢から外れても仕方が無い。
なので、このVegaシリーズは一般人のもの、というよりはAMDのコアファンのためのもの、という言い方が一番無難だと言っている。私も実にそう思う。
また、革新的でも、それら搭載された機能が使われるのはいつの話になるのか?
使われなければ、そもそもその性能を発揮しようがない。それが今のVegaの立ち位置だと言える。
最高性能を求めないなら
ただ、Vegaシリーズで唯一ワットパフォーマンスがGeForce並だったのが、下位モデルのVega56のパワーセーブモードで動作させた時のようで、今回の動画の締めとしては、オススメはVega56と言っている。
Vega56は実際にはベンチマークを回したわけではないが、データとして公開されているものを元に数値化すると、かなりGeForce系に近いワットパフォーマンスを発揮している事がわかる。
絶対性能で言えば、GeForce GTX 1070に並ぶかそのちょっと上を行くかといったところで、最高性能を求めないなら、選択肢としてはVega56が最良と言えそうである。
また驚きなのが、Vega64の動作モードをバランスからパワーセーブにしただけで、消費電力が100W近く下がるという事実である。
AMD系は特にそうなのかもしれないが、とにかく性能を出す為にクロックを上げた結果、ワットパフォーマンスが著しく低下する状況にあるようで、ほんの少しクロックを下げたりするだけで、一気にワットパフォーマンスが向上するという傾向がある。しかも、多少パワーセーブしたからといって、性能が劇的に下がるといった事もないので、実際の運用はパワーセーブ状態がよいのかもしれない。
CrossFire Xは未確認
前述のレビュー動画では、Vega64のCrossFire X動作の確認は行われなかった。というか、行えなかった。
2台目のVega64を接続した段階で、どうもマザーボードが飛んでしまったようで、通常起動が出来ない状態になってしまった。
電源が飛んだのか、マザーボードが飛んだのかはハッキリわからないが、最近の電源は安全装置が多数取り付いているので、おそらくマザーボードが飛んだものと思われる。
…というか、Threadripperのマザーが飛んだとか、悲劇だし(-_-;)
Vega64をCrossFire Xで動作させる時は、おそらく最低でも1,000Wの電源が必要と考えられる。というのは、Vega64&Threadripperの消費電力で460W近い電力が消費されるので、そこにさらにVega64を1枚追加するとなると、700~800Wくらいの消費電力になる。
電源ユニットは電力変換効率というものに縛られているので、例え搭載している電源が1,000Wのものだったとしても、何割かは減衰してしまう。
搭載する電源ユニットに80 Plusというマークが付いているものが最近は多いが、これは80%以上の変換効率を持っているという意味である。詳しくはWikipedia等で確認すると良いが、電源ユニットは掲載されている数値がそのまま出力されるワケではないので、注意が必要である。
今回のレビュー動画の場合、一応1,000Wの電源を使用していたようだが、何かが原因で2枚目を接続した際に問題が発生し、何かがハードウェアトラブルを発生、そのまま起動しない状態になったようである。
しかし…ここまで電力喰いの仕様になると、私の領域を超えてくるな…。
もう一つの問題
Vega64のもう一つの問題は今までもいろんな所で話に出ている価格である。
前述したように、能力的な所で言えばGeForce GTX 1080と同等もしくはちょっと上という程度ではあるものの、消費する電力は対抗製品よりずっと高く、パワーセーブする事で多少改善したとしても今度はそれによって性能が対抗製品より劣るようになるという状況で、現在8万円前後という価格になっている。
米国ではGeForce GTX 1080が499ドルという設定になっていて、Vega64も同じく499ドルと設定されているのだが、それよりも2万円近く高い価格で国内流通している。
流石にGeForce GTX 1080は国内価格で6万円台というのも見えてきている状況に対し、それよりも2万円高いという現状では、ライバルと比較したとき購入するメリットがない。
いくらAMDマニアだとしても、せめてGeForce GTX 1080と同額程度になってくれないと、割高感はどうしても出てしまう。
これと同じことが言えたのが、Ryzen Threadripperである。
ライバルのCore i9よりも低価格でAMDが設定しているにも拘わらず、国内流通にしてしまうと同額程度になってしまい、メリットが薄れるという状況だった。
ところが、ここ最近Threadripperの価格が下がっている傾向があり、最上位の1950Xでは2万円弱の値下がりが起きている。12万円台で1950Xが購入できるとなると、インパクトとしては大きい。
販売店の話では、今回の価格値下がりはメーカーより価格改定だという説明を受けているようだが、それが本当だとすると発売後半月で価格改定が実施された事になる。
これと同じように、Vega64もベンダー仕様のものが登場する時には価格が6万円台になっていれば、今感じる割高感もなくなるのではないかと思うが…。
このAMD製品が割高になるというのは、流通レベルで発生している問題だという話もあり、そこで決定される価格を変えて低くするのは結構時間がかかり難しいという事らしいが、Threadripperでは現実となったようなので、Vega64もぜひその辺りは期待したいところである。
ドライバの熟成度
今回のVega64に関しては、まだまだドライバの熟成度が足りていない、という事も考えられる。
HBM2を使用しているという事も踏まえて考えると、従来のビデオカードとは根本的に異なる部分があり、また今回はGCNも改良されている為、ドライバの熟成は今後も必要と思われる。このドライバの更新で性能が割と上がる事もあるので、Vega系はまだまだ未知数な部分があるのではないかと思う。
また、そもそも各種アプリケーション周りでも、AMD製品への対応が必要という側面もある。これはRadeonだけの話ではなく、Ryzenも同じではないかと考える。
AMDは今までもハードウェアは良いがソフトウェアが弱いと言われていた。最近はそこら辺も見直されているとは思うが、まだまだその傾向が残っている可能性もある。
なので、このあたりの熟成度が上がってくれば、まだまだ製品性能の伸び代はあると考えられる。
…という話をAMDファンは常に考えていて、希望を持ち続けている(爆)
実際、全くのウソとは言えない話なのだが、マトモに信じても期待通りの結果が得られる話でもない。
未来に対しての夢を持ち続ける事ができる事はできるが、真っ当に考えるなら、今の結果を見て判断すべきであり、今回のレビュー動画の結果等で、最終的にAMD製品を選ぶのか、NVIDIA製品を選ぶのかを考える必要がある。