Apple Silicon「M1」の実力が明確になった。少なくともローエンドはもう駆逐されたと言っていい。
Windowsである必要性
いよいよApple Silicon「M1」搭載のMacBook Air、MacBook Pro、Mac miniがユーザーの元に届き始め、その性能の高さがハッキリとしてきた。
その実力は、Appleが言っていたように少なくとも既存のIntelコアを搭載していたローエンドモデルはどれもが太刀打ちできない性能であり、MacBook Pro 16インチの性能に肉薄するものだった。
マルチコア性能ではまだIntel Core i9に届かないようだが、そもそも現段階のM1の守備範囲はローエンドであり、Core i5あたりを駆逐できれば問題の無い性能と言える。
ポイントは、ARMコードにネイティブ対応していない、Rosetta2によってトランスコードされたプログラムですら、同等の性能で処理してしまっているところである。こうなると、M1コアを搭載したMacを選ばないという手がない。
そもそも、今ローエンドクラスのPCを使っている人は、WindowsというOSである必要性がどこまであるのだろうか?
MacでもOffice 365が動作し、GoogleのWebアプリが使え、Adobeのソフトが利用出来る。よほど特殊なプログラムでない限り、WindowsでもMacでも問題無い時代になっているのではないかと思う。
いや、もっと言うなら、ノートPCである必要性すらないのかもしれない。iPadでほとんどの事が事足りるのなら、そもそもノートPCを選ぶ意味もない。
そういう時代であるからこそ、M1の性能はタブレットよりもちょっと高度な事をしたいと思った人には最適な選択肢になるように思う。
もっともWindowsノートPCの格安と言われる価格帯は、MacBook Airの半分くらいの価格なので、絶対価格でWindowsノートPCを選択するという人もいるのも事実だが、少なくともいろんな面での完成度の高さを10万円強という価格で手にできてしまうMacBook Airは、今の時代の最適解の一つではないかと思う。
コストでみるMac mini
今回、M1の性能の本当のところが見えた事で、一つ私が思ったのは、案外Mac miniがお買い得なPCなのではないか? という事である。
Mac miniは、本体のみでディスプレイもなく、入力機器も自前で用意する必要があるが、既にWindowsのデスクトップPCを持っている人であれば、既存の機器を接続すれば利用出来る、格安Macである。
Mac環境をもっとも安価に手にしたいと思えば、自ずとMac miniが選択肢になるのだが、今回のM1搭載機となったMac miniはその性能からみてもお買い得なPCになったように思う。
例えば、AMDのRenoir、Ryzen7 4750Gを搭載したミニPCを自作したとしたら、少なくともMac miniよりも高く付くし、その性能にしてもApple Silicon「M1」を搭載したMac miniの方が上回るだろうと思われる。しかもMac miniはOSが標準で付いてくるし、そのOSの中にはかなり有用なアプリケーションが多数付いてくる事を考えると、実にお買い得である。
タブレットやスマホで何かするのはちっょとやりづらい、だからPCが欲しい…そう思う人であっても、Mac miniは結構すんなりとそういう人を受入れるような気がする。そう思わせる理由は価格的なところだけでなく、iOSのアプリが動作する可能性が残されている事も理由である。
このように考えると、現時点のMac miniは結構な確度でWindowsキラーではないかとすら思える。
ハイエンドではx86だが…
今回、Appleが発表したApple Silicon「M1」だが、ハイエンド分野で利用される事はまずない。理由はどんなにプロセッサ部分が優秀であっても、I/Oまわりがハイエンド分野で通用するように作られていないという事と、GPU能力が足りていないからだ。せめてdGPUを利用可能だったなら、まだ可能性はあったかもしれないが、全てSoC内で処理を完結させるように作られている事から、どうがんばってもハイエンド分野には通用しない。
だが、もしAppleがApple Siliconの構成にもっと自由度を持たせ、CPUコア数をもっと多く、GPUを外付けに対応させ、搭載するメモリを128GB、いや256GBまで増やしたなら、どうなるだろうか?
もちろん、これは現実的な話ではない。
1チップの中に収めるにはメモリ256GBはあり得る数値ではないし、dGPUを接続すると今まで1チップの中でCPUとGPUが同じメモリにアクセスしていた事で得られていた高速なメモリアクセスが実現しなくなるので、今のM1ほどの性能を出せなくなってしまう。
Appleが、今後Apple Siliconを使ってもっと大規模な高性能SoCを構成するかはまだわからない。ただ、Mac Proなど、ハイエンドクラスのMacをラインナップを実現する時、Appleがどのような手段でそれを実現するのか、とても興味がある。
Appleは2年かけてApple Siliconに切り替えていくと宣言しているので、その間には間違いなく答えは出るだろう。その答えがハッキリした時、IntelやAMDがApple Siliconを超える事ができなかったなら、PC業界は大きく変革しているように思えてならない。
Apple Silicon M1は、それほどまでに今までの枠組みから外れた存在である。