いつか観ようと思っていた作品をこのタイミングで…。
事件を乗り越えた作品
昨日、京都アニメーションが放火事件にあって2年が経過した。
スタジオ跡地で追悼式が行われたが、かつて私も似たような業界で働いていた事もあって、この事件はどこか他人事のように思えず、2年が経過した今でも心のどこかに引っかかってくる事件である。
そんな京都アニメーションが事件前から手がけていた作品の一つ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を実は今まで観る機会が無かった事もあって、観ていなかった。
テレビで放送した時も人気作だったが、2020年9月に公開された「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、日本アカデミー賞の優秀アニメーション作品賞を受賞した名作でもある。
事件以降に公開日を延期こそしたが、作られた作品は事件を乗り越え作られたものだけに、この受賞は感慨深いものがある。
この事件は、まだ裁判という方向では何も進んでいないに等しく、仮に司法が法に則り解決に向けて裁かれたとしても、結果何かが変わるのかというと、おそらく変わる事はない。
それだけ大きな損失があったという事、それだけ深い傷をたくさんの人々に残したという事である。
そして、この事件にもし何かしらの変化を与えることができたとするならば、それは新たに生み出される作品が多くの人の心に響く事ではないかと思う。
そういう意味では、昨年の劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、一つの峠を越えたところに位置する作品ではないかと思う。
前情報なく観る
で、本題のヴァイオレット・エヴァーガーデンだが…実は私はこの作品に関して何も情報も持っていなかった。
原作も読んだことはなく、アニメに関しても一切、それこそプロモーションビデオですら観ていなかったのである。
いや、一つだけ情報を持っていたとしたら、主人公たるヴァイオレットの声を石川由依が担当した、という事ぐらいである。
で、折角なのでテレビ版をとりあえず観てみようという事で前情報なく観てみたのだが…これが話題作になる意味がよくわかった。
作画の良さはさすが京アニといったところで、主人公に石川由依を抜擢したのも納得であった。
というか…石川由依は人形のような役が多いように思えてならない(爆)
幼い頃から戦場に駆り出されたことで普通の感情を持つことなく成長した少女が、人々の思いを代筆する自動手記人形という仕事を行うにあたり、いろいろな人と出会う事で徐々に「心」というものを見出していく様は、どこかNieR:Automataの感情を持つことを禁止されているアンドロイド「2B」に通じるものがあり、同じ石川由依が演じているという事の共通点に因果を感じる。
作品そのものは私がどのような修飾を書き並べても、おそらく表現する事は叶わない。
観た事がない人であれば、一度観てみる事をオススメする。というか、おそらくPVを観た段階で、もっと深く知りたくなるのではないかと思う。
京アニは心に響く作品が似合う
京都アニメーションというスタジオは、アニメ制作会社としては個人的に一風変わっていると思っている。
それは、アニメ作品の中でもアクション性よりも心に訴えかける作品の方が向いているという事である。派手なアクションがあるような作品よりも、人々の思いを連ねる作品の方が、京アニは名作となる傾向がある。
もし、京アニが「Fate」シリーズを手がけていたら…「Fate」は名作にならなかったかもしれない。
もちろんそれは逆も同じ事が言えるのだが、おそらくは制作サイドの好みの問題だったり、或いは演出方針の問題だったりと、理由はいろいろあるのかもしれない。が、このヴァイオレット・エヴァーガーデンという作品に関しては、京アニで制作された事が最大の幸運だったのではないかと思う。
まだ7話ぐらいまでしか観ていないので、最後まで観てみないと最終結論は出せないが、作りの良さ、ヴァイオレットと石川由依の相性の良さは本作の決定的優位点である事は間違いない。
こんな作品を生み出せる京都アニメーションがあのような悲劇に見舞われたのは、痛ましいというレベルでは済まない話ではあるが、今後もこの作品作りのマインドは受け継いでいってもらいたいものである。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 公式サイト
http://tv.violet-evergarden.jp/
劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン 公式サイト
http://violet-evergarden.jp/