シン・エヴァンゲリオン劇場版(終劇)が初週で興行収入33億円を突破した模様。
前作は9年前
私がかつてアニメ・ゲーム・デジタルコンテンツのプロデューサーをしていた頃、既にエヴァンゲリオンは空前のヒット作として認識された作品だった。
ただ、その時にはテレビ版の話から派生した劇場版である「DEATH & REVERSE」「Air/まごころを君に」までの話の時で、それでも20話以降に新たに作り直された話を見れば、その作品の内容については納得のいくものだった(あくまでも私個人の話)。
業界でもエヴァはとにかく伝説の作品として「売れたねぇ」という話をよく聞いたが、その後「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」として改めてリメイク(リビルド(再構築)という表現が多用された)されると発表され、2007年に「序」、2009年に「破」、2012年に「Q」と3作が発表、公開され、その完結編がずっと公開待ちの状態だった。
私は「序」が公開される前にはすでに業界を去り、一人の消費者としてこの状況を見ていたわけだが、ここにきてシン・エヴァンゲリオン劇場版がいよいよ公開となり、今まさに話題をかっさらっている状態である。
もちろん、私も気になってはいる。
だが、いざシン・エヴァンゲリオン劇場版です、と言われても、私は前作「Q」をどこまで覚えているのか? という疑問がついて回った。
実際…思い出してみると、具体的にはあまり思い出せない。
いや、流れはわかっている。だが、細部にわたって覚えていないのである。
特に設定がわからないと、エヴァという作品は面白さが半減するので、もし仮に私が今「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観るとしても、おさらいは必要だ。
というワケで、この週末は「序」「破」「Q」をAmazon Primeで見直す事にした。
確かに再構築
改めて見て思ったのは、たしかにリメイクではなくリビルドだという事。
リメイクというのは、過去の作品に対してその時系列から流れまでをほぼ踏襲し、その表現を新たにする事であるが、シン・エヴァに関して言えば既に時間軸も同じか定かではなく、流れまでもが違っている。
おそらく監督が見せたいだろうテーマそのものは変わらないにしても、そのテーマを彩る全てのものが再構築されている。最終的に20話以降で追加シーンを加えたテレビ版を観た時にも、足りなかった説明などが加えられた事で「ああ、なるほど」と思ったが、シン・エヴァに関して言えば「ああ、こう言いたかったのか」という事が少し見えてくる。
結局は主人公の内向をどのように表現するか、という事に行き着く話なので、そこにいたる経緯はいろんな表現が出来る。
そこにメカメカしい現実的な表現を加えたり、派手な戦闘で虚飾したりはしているが、この作品の根底は間違いなく精神世界であり内向である。
改めて見ると、そのあたりがハッキリと見て取れる。
世間でも言われているとおり、これはおそらく庵野秀明という監督の内向を表現したものだろう…そう思わせる。
生命進化か、環境変化か
環境に合わせて生命が進化する…使徒はそのような表現を作中でされている。
それに対し、人は生きるために自らは変わらずに環境を変える。
これに人の精神世界と内向を組み合わせたら、碇シンジになった…というのが、シン・エヴァの基本的な話である。
この説明が正しいかどうかはわからないが、少なくとも私はそう感じている。
昔、ある人に言われて「ハッ」と気づいたのだが、人間が嫌うウィルスと人間は非常に似ている。ある意味、人間は地球に寄生するウィルス、という事である。
しかも、人間は地球環境を変えて爆発的に増殖している。
その割に、人は群体としての能力はなく、個がそれぞれを理解しようとして最終的には許容しつつも拒絶する。
このような人の在り方を、一人の人間の精神世界で表現したら、確かに碇シンジになるというのもうなずけるというものである。
話をもう一度戻すが…「序」「破」「Q」は確かにビジュアルは新しくなり、表現も豊かになり、見た目や音の派手さも強化されてはいるが、根底は何も変わっていない。
細部にわたる設定の細かさも、観ていて意味がわからないぐらいに凝っている。
だからこそ、今観ても面白いと思うし、完結編が楽しみにもなる。
だが、私個人としては、最終的に20話以降に追加シーンを加えたテレビシリーズの話は、あれはあれで良かったと思えるし、リビルドする必要があったのかな? という気がしないでもない。
邪な目で見るなら、エヴァという爆発的に売れた作品があり、ちょっとケチがついた部分があるので、それを作り直すという名目で、もう一度儲けませんか? と資本を持っている業者に歩み寄って作ったのがシン・エヴァではないか? と思える。
前述したように、テーマは不変である。だからデレビシリーズでも言いたい事はちゃんと伝えていたし、シン・エヴァになっても結局は同じである。
そこには、ただ拘りがあり、話題性がある、という事である。
何が真実かはわからない。ただ、私は3作を振り返って、今更ながらそう思った。
と言うわけで、シン・エヴァを劇場に観に行くかはわからないが、いつかは観ようと思っている。
その時、この私の行き着いた考えが変わるかどうかは、今はわからない。
シン・エヴァンゲリオン劇場版 公式
https://www.evangelion.co.jp/