ようやく対応機器が見えてきた4K120pだが技術的にはまだ厳しいという事かもしれない。
垂直解像度が半分?
最近、ネットで騒がれている事象の一つに、4K120p表示の液晶テレビの中には、HDMI2.1対応テレビではあっても垂直解像度が半分になってしまうモデルがある、という噂がある。
これは、要するに垂直解像度が半分になるという事だから、4K解像度の縦解像度が半分、つまり3,840×1,080ドットで表示されてしまっている、という事を意味する。
本来、4K画質なら3,840×2,160ドットが正規の解像度になり、4K120pなら、それを秒間120フレームで表示する、という事になる。
だが、PlayStation5やXbox Series Xなどの現行コンシューマ機などのフルスペック機能でテレビに接続して稼働させると、前述のように縦解像度が半分になるというのである。
もしそれが事実だとして、理由なら考えられる。それは秒間120フレームを表示するにあたって、画面書き換えを容易にするため、あえて見た目に影響の少ない縦解像度を半分にして処理を優先する、という事である。
HDR表示を同時に実施しながら、4Kという解像度を秒間120フレームで表示する事の技術的課題はとてもハードルの高いものである。だからこそ、今までなかなか実現しなかったワケで、今、ようやくそこに到達し始めた状況で、それでも処理に余裕がない状況から、機能としてあえて垂直解像度を半分にするという処置を行っている場合も考えられるのである。
だが、ユーザーサイドからしてみれば、ようやくHDMI2.1対応テレビが登場したところで購入し、フルスペックで楽しめると思っていた矢先、このような処置を受けたとなれば、詐欺だと思ってしまっても不思議でもない。
実際の所、それらがどうなっているのかを、メーカーに質問した記事があったので、紹介する。
impress AV Watch
https://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/1379134.html
メーカーコメントに見る真実
前述の記事を読むに、現時点で確実に4K120p処理を行っているのは、パナソニックのVIERAと東芝REGZAとLGの対応機といえそうである。
ソニーのBRAVIAも「Perfect for PlayStation 5」と謳っている事から問題はないだろうと思われるが、こちらは回答がイマイチはっきりしないところもあり、ユーザー体験として問題がない、という解釈で受け止めると実際には対応していない可能性もありうるのではないかと疑ってしまいたくなる。
このように、メーカーとして言いにくい部分が残ってしまうのは、この4K120pという表示に加えて、画像処理含めたHDRという色管理問題がついて回るからだ。
色補正をしていれば、当然そこにかかる処理も上乗せされるので、処理が間に合わない…までいかなくても、画像処理チップに負荷がかかって問題を起こす可能性がある。
コレばっかりは、画像処理エンジンに使用されている半導体の処理性能に依存する事になるので、まだ技術レベルとしてはようやく追いついたばかり、という状況であれば、このような噂が出てしまうほどに高度な事、と考えるしかないのかも知れない。
ただ、これは時間と共に解決する事ではあるのだが、コンテンツデバイスの対応が早く、それを受けて表示する側のデバイス、つまりテレビの対応が遅れれば、ユーザー体験もそれだけ遅れるという事であり、コンテンツ主導側も思惑がずれる結果となる。
正直、私などはPS5が発売される前からこの事をずっと気にしていたわけで、当Blogでは度々話題に上げていた。
ただ、ようやく技術に手が届く状態になり、少なくとも今の時点でパナソニック、東芝、LGは4K120p表示をリアルに再現する事が出来ている。今後はよりそれらが安定的になってきて、それが過ぎれば8Kや240pへと繋がっていく事になるだろう
倍速駆動と120p
だが、ここで少し技術的な事に詳しい人が気づくかも知れない。
その昔、倍速駆動でテレビは120Hz表示できていた事があるではないか、と。
実際、4Kテレビが出始めた頃、その動きをより滑らかに表示させる為、各メーカーが独自機能で倍速駆動する液晶テレビを発売していた。
当時だと、4K60p(その時は4K60Hzと表記していたかもしれない)の画像を倍速駆動させ、4K120Hzの動作として機能するような機能である。メーカーによっては240Hz、なんてのもあったかもしれない。
倍速駆動できているのに、何故今4K120pが出来ないのか? という事を不思議に思うかも知れない。
確かにそう思われるかもしれないが、問題は表示する事ではなく、そのデータの転送という行為にある。
倍速駆動を謳っていた時は、その倍速に見せるための画像はテレビ内で生成した画像を表示させていたため、転送されてきた画像と画像の間に生成画像を挟むため、データ転送速度そのものは4K60Hzのもの使っていた事になる。なので4K60pのデータ処理ができれば、あとは生成画像を作る為の処理だけ気にしていればよいので、転送までは気にする必要が無かった。
しかし、今問題となっているのは、接続した機器から120フレーム分のデータを受取って(転送して)表示する事になるので、送られてきた全てのデータのデコードを行い、処理信号に合わせて色合いを調整して表示するという、大量のデータ転送とデコードいう行為をしなければならない。自動生成とはここが大きな違いなのである。
画像の自動生成は、実はプロセッサの性能としてはあまり大きな負荷にならない、と言われている。それは、前後の画像が存在するので、その中間画像は予測しやすく、生成そのものに大きな負担がないからである。
それよりも、生データを受取ってそれをデコード(復号)し、大量のデータをメモリ帯域を確保して移動させる方が大変なので、生データ処理の方がずっと厳しいと言える。
表示される絵の枚数そのものは変わらないが、中で行っている処理が全く異なるので、かかる負荷は大きな違いを生む。
というわけで、4K120pのテレビは、現時点でも処理はできるがまだ高度な処理の位置付けにある事はこれで明確になった。メーカーも高い技術に何とか対応しているレベルである事は見えたと思う。
低価格で普及できる製品にこの機能が実装されるのは、もう少し後になる事が予想される。
というか、世間的に4K120pが当たり前になる時代にならないと、価格的にも手頃とは言えないかもしれない。
それでもすぐに欲しい、という人は、対応テレビを購入し、その技術を堪能して欲しい。