私が今のPCを組んだ時は、たしかまだ2TBのHDDが出たばかりの頃で、買うにしても高価だった時期だったと記憶している。
その後1年くらいで2TBのHDDは1万円半ばくらいの価格になり、1.5TBのHDDが1万円を割り込みはじめた。
随分と安くなったなぁと感じるとともに、大容量になったなぁと感じたものだった。
さらにその半年後くらいになると、今度は2TBのHDDが1万円前後くらいになり、1TBのHDDは6,000円台に突入していた。
さすがに1TBのHDDはそこからの価格下落はほとんど止まってしまった感じがあるが、2TBのHDDは現在7,000円台後半にまで落ちてきた。
これらすべてバルクHDDの話ではあるが、それだけ大容量なHDDが安価に出回っているという事である。
この価格下落の最大の原因は、やはりSSDの進出が大きいと言えるが、こうしたハードウェアは価格下落には底というものがあり、今の1TBのHDDなどは完全に底に到達した価格設定になっていると言える。
詳しい価格動向はコチラに任せるとして、今のHDDがとうとうここまで来たという3TBの世界の話をしたい。
今回、3TBのHDDの発売が始まったのがWestern Digitalの、3.5インチHDD「WD30EZRS」である。
当然、世界初の3TB民生モデルであり、現時点ではその使用にいろいろと制限がある(詳細は後述)。
というのも、現状のMBR(マスターブートレコード)の容量の壁を越える容量を持つためである。
このWD30EZRSは、物理セクタサイズが従来の512Bから4KBに拡大した「Advanced Format Technology」を採用している。
Advanced Format Technologyを採用することで、本来ならセクタごとに用意する必要のあるSync/DAMとECCの数が減り、単位面積あたりの記憶容量が増加する。また同時にエラー訂正レートも向上する所も見逃せない。
このAdvanced Format Technologyを採用しているのには容量を稼ぐという意味の他に、もう一つ理由がある。それが「2.19TBの“容量の壁”をクリアするため」である。
現在の主要のMBRパーティションテーブルでは、セクタを2の32乗個まで管理できるのだが、これがセクタサイズが512Bの場合には、計算上2,199,023,255,552Bまでしか管理できない。
しかしAdvanced Format Technologyを採用する事でセクタが4KBとなると、計算上17.5TBまで管理できるようになる。これがAdvanced Format Technologyを採用した最大の理由という事になる。
WD30EZRSは、750GBのプラッタを4枚搭載して3TBとしており、ディスク回転速度は5,400rpm(予測)、キャッシュ容量は64MBとなる。シリーズとしては省電力、静音性に優れる“Caviar Green”シリーズに含まれる製品である。
接続インターフェイスは、SATA II(3Gbps)で、転送速度そのものは従来品と大きく変更がないように感じられる。だが、実際にはプラッタ容量が従来品の666GBから750GBへと向上しているため、若干の速度向上があるようだ。密度が上がればそれだけ速度が上がる、という訳である。
スペック的には堅実な向上ぶりと言えるが、実際に利用するとなると、前述したようにいろいろな制限がある。
利用する際の制限というのは、まずOSを選ぶという事。
残念ながら現時点ではWindowsXPでの利用はできない。というのは、前述したAdvanced Format TechnologyをWindowsXPがサポートしないからである。後日、MicrosoftがXP用にAdvanced Format Technology対応のアップデートを行うかもしれないが、今のところ未サポートである。
Windows Vista 32bit/64bit、Windows 7 32bit/64bit、Mac OS 10.5以降、Linux カーネル 2.6以降であれば、とりあえずデータドライブとしての利用は可能である。
だが、もしこのWD30EZRSを起動ドライブとして利用しようという場合は、さらに制限がある。
OSがGPT(GUIDパーティションテーブル)からのシステムブートをサポートしている必要があるのである。この結果、現時点では32bitのWindows VistaとWindows7はその対象から外れる事になる。
さらにハードウェアにも制限があり、GPTからのOSブートを行なう為にマザーボードがUEFI起動をサポートしている、もしくは、UEFI起動をサポートするSATAコントローラを搭載した拡張カードが必要になるだろう。よって、現時点では対応ハードウェアの方が遅れているという状況にある。
起動ドライブとして利用する事を考えている人は、事前にいろいろと情報を集めておく必要があるだろう。
このようにいろいろと使用するために制限があるため、現時点では対応OSによるデータドライブとしての利用が推奨される。
ただ、価格的には2万円台半ばと、7,000円台に落ち込んだ2TBのHDDと比較しても高い。ただ、消費電力は2TBのHDDとほぼ同じであるため、電源容量やドライブベイの問題がある人にはひとつの選択肢になるだろう。
あと1年~2年で、価格も手頃な価格になるだろうから、まだまだこれからのモデルになるだろうと思う。2TBのHDDも同じ道を辿ってきた事を考えれば、時間の問題である。
というわけで、今は2TBのHDDがお買い得かもしれない。
私もそろそろ必要になりそうだ。