6月から順次投入されるという予定のIntelの新CPU“Haswell”だが、使われる状況によって構成がいろいろあり、その中でもチップセットまでをも取り込んだ1チップ版に私的に期待がかかっている。
10年ほど前にCentrinoというブランド名称でノートPCが爆発的に展開した時期があるが、今度のHaswellはそれに匹敵するぐらいの大きなステップアップと言えるようだ。
何がそこまでそうさせているのかというと、CPU処理能力もさることながら、GPU性能、そしてシステム全体の消費電力にまで至る高度化が、大きなステップアップと捉える事ができる。
CPU処理能力に関しては、現在のIvy Bridgeでも十二分な性能を持っていると言える。これは実際に使っている人であればよく分かると思う。特に動作的に軽いといわれているWindows8との組み合わせなら、その動作に不満を持つ人はいないと思う。
そしてGPUだが、これはもう内蔵GPUでもここまで来たか、というぐらいの性能へジャンプしている。標準構成のGT2でも20プロセッサ構成で、上位のGT3になると40プロセッサを内蔵する。また、GT3には2種あり、上位版はオンダイキャッシュとしてeDRAMを実装できる仕様になっている。これによって速度の遅い(ビデオメモリとして遅いという意味)メインメモリでなくビデオ専用メモリでのドライブが可能になり、より高性能化できる事がわかっている。総合的にみてもヘビーな3D演算能力が必要という事でもないかぎりは、必要十二分な性能を持っていると言える。
また消費電力だが、これはもう別次元へと移行しつつある。
というより、この消費電力削減が、Haswellのもっとも大きな進化と言える部分てある。
私が1チップ版に期待するといっているのは、前述したGPUのGT3が搭載されるのはノートPC用Haswellのみであるという事と、その1チップ版Haswellのシステムアイドル時の消費電力が、現時点で100mW以下としている所にある。
システムアイドル時では意味がないのでは? と思う人も多いかもしれないが、通常CPUが稼働している時間の7~8割ぐらいはアイドル状態にあると言える(一般的には9割程度と言われている)。このアイドル時の消費電力を落とすという事は、即ち稼働時間を延ばす最大のポイントになり、また、パフォーマンスが必要な時、つまりはアプリケーションが最大限に稼働している際に高いパフォーマンスを発揮し、処理を素早く終わらせるという事は、即ち稼働時間を延ばすポイントになる、という事である。
高速処理で稼働時間を減らし、より待機時間を増やす事で省電力化する。
まさにこれを実現するのがHaswellという事である。
おそらく、私が期待する1チップ版Haswell with GT3は、15インチ以上クラスのUltrabookに搭載されるCPUではないかと予測している。
15インチクラスで12.8mmという薄さを世界にアピールした、NECのLaVie Xシリーズがその対象ではないかと今から期待しているのだが、このクラスは既に液晶もフルHD化しており、その解像度故のグラフィックス処理能力として、内蔵するGT3は大きく期待できるのである。
また、AppleのMacBook Proでは、既にその上の解像度であるRetinaディスプレイが搭載されているワケだが、もしLaVie Xシリーズ(15インチ以上)にもそうした超高解像度ディスプレイが搭載されたとしても、GT3なら従来よりずっと高度に処理してくれるだろう。
CPUだけでは消費電力は下がらない。
これは昔から言われている事だが、今回のHaswellはCPUバッケージ内にチップセットなどシステム全体を統合した事で、今までよりもずっと効率的に省電力化が進む。
前述している1チップ版Haswellは、MicrosoftのConnected
Standbyをサポートするという点で考えても、その省電力性はズパ抜けていると言える。MicrosoftのConnected
Standbyとは、Windows8で導入された仕様で、従来PCのスタンバイモードである、S3(メモリサスペンド)、S4(ハイバネーション)、
S5(ソフトオフ)という省電力モードに加えて新しく追加されるスタンバイモード。内容としてはシステムステートはS0のままでありながら、プロセッサ、
通信モジュール等が動作しディスプレイがOFFにという状態というものになる。
つまり、Connected Standbyをサポートすると、プロセッサやモデムなどは動いている為メールの受信等は可能で、ディスプレイをONとすればPCを即使用可能となる。簡単に言えば、スマートフォンやタブレットの感覚により近くなる、という事である。
このMicrosoftのConnected Standbyをサポートするには、実に厳しい条件をクリアしなければならない。その条件とは、16時間のアイドル状態でバッテリが5%しか減っていないことを満たすという条件である。
5%という数字は、バッテリ全体の容量に対してだから、バッテリーが大きい方が有利ではあるが、前述したように単純にHaswellのシステムアイドル時
の消費電力が100mWだとするならば、1時間あたり0.1Wでそれが16時間、つまり16時間で1.6Whしか消費しない事になる。この1.6Whを
5%とするバッテリ容量は32Whという事になるが、これは薄型化するために小さめの容量のバッテリを選んだというLaVie
Xの33Whよりも小さい数値で、Haswellを搭載する事でLaVie Xですら、MicrosoftのConnected
Standbyをサポートする事が可能となるのである。
さらに、この100mWというシステムアイドル時の消費電力は、別の見方をすれば
LaVie
Xでも330時間のシステムアイドル時間がある、という言い方ができる。普通のノートPCなら、容量が44Whもしくは48Wh程度だから、
440~480時間である。日数にしてLaVie
Xなら14日弱、44Whなら18日強、48Whなら20日の間、システムアイドル状態を維持できる事になる。これなら1日外出していても、出先での使い
方が普通の使い方ならバッテリ切れになる心配はまずないと言える。
このように考えれば、この1チップ版Haswellの省電力性がいかにズバ抜けているかがよくわかると思う。
強がりを言うわけではないが、私はデスクトップをIvy Bridgeで構成しているが、正直、デスクトップはIvy
Bridgeで十分だと現時点では思っている。ビデオカードも外付けを使用しているから、純粋にCPUの能力だけで考えれば、差はないとは言わないが全体
として大差がない。
しかしノートPCのようなバッテリ駆動だったり、内蔵GPUを使用せざるを得ない状況では、Ivy BridgeとHaswellではその差が歴然としてくるように思えてならない。
Haswellの次に来る、Broadwellではさらに進化するとは思うが、Ivy
BridgeからHaswellのジャンプほど大きな進化にならないのではないかと予測する。もっとも、22nmプロセスのHaswellから14nmの
Broadwellへと微細化プロセスがシュリンクされる事で得られるメリットがBroadwellにはあるのだが、逆に14nmという微細化が生み出す
熱問題(ホットスポット問題)が今以上に顕著になるため、私的には今後はそこが焦点となると見ている。また、Broadwellの登場時期も予定よりは遅
れるように思えてならない。微細化が進むと半導体の立ち上がりは時間がかかる為、従来通り2年ペースで進むとも言えないのではないかと予測する。
どちらにしても、先はまだ長い。
Haswellはしばらくの間は最高のパフォーマンスと最高の省電力を与えてくれる事になるだろう。
ノートPCを検討したいなら、今年9月以降まで待った方が絶対にお得であると断言する。
ちょっとでも快適かつ長く使いたいなら、その方が賢明だろう。
参考:impress PC Watch
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/20130426_597567.html
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/20130426_597640.html