今回ほどカテゴリーを迷った事は珍しい事だ。
コンピュータ系全般の“PC”にすべきか、それとも持ち運びを前提としたモバイル機器全般の“ケータイ”にすべきか?
まぁ、単純に目的から考えれば“ケータイ”という事になるため、カテゴリーはそうしたが、中身を考えれば“PC”カテゴリーでも間違いではない。
WILLCOMが“Atom搭載機で世界最速発売”として発表したのが、シャープ製端末であるWILLCOM D4である。
CPUにインテルのIA32コアであるAtomを搭載し、OSにWindows Vistaを搭載するという、ある種モバイル機器としては前代未聞のハイスペックモバイルである。
発表からかなり時間が経っているが、今まで触れなかったのは私自身のモバイル機器への興味が薄れてしまっていたから。
東京在住時なら、恐らく真っ先に飛びついたであろう端末である。
スペックなどの詳しい内容はこの記事でも参照してもらうとして、発表された内容を私なりに考えてみた。
まず最初に考えてしまうことは、コレはPCなのか、それともケータイなのかという事だ。
カタチだけみれば、PDAとケータイの中間とも言える。
しかしその性能は現時点ではPCよりではないかと思える。何しろOSがVistaなのだから。
当然、その使用スタイルはノートPCとほぼ同じになるだろう。
違うのは、コイツは単体で電話として使用できる事であり、データ通信カードを必要とせずにネット接続できるモバイルPCだという事だ。
データ通信カードを必要とせずにネットに接続できるという事は、要するにデータ通信カードを搭載したノートPCと同じという言い方が出来る。
このサイズで、インターネットも電話も可能。おまけにWindows VistaだからOffice文書がそのまま使えるという利点もある(D4にMS-Office Personal版がプリインストールされている)。
性能だけで言えばほぼ非の打ち所がないワケだが、問題は連続稼働時間。
通信モジュールまで含めたCentrino Atomの熱設計電力(TDP)は0.6~2.5w程度。
公開されているAtomの最大クロックは1.8GHzだが、WILLCOM D4は1.33GHzで稼働だから、最大でもTDPは2wを少し超える程度と考えられる。
あとはこれに液晶モジュールやHDDをはじめとしたデバイスとW-SIMの消費電力が加わるワケだが、LEDバックライトを採用しているとはいえ、液晶パネルの消費電力はそれなりにあるだろうし、何より40GBのHDDの消費電力もそれなりにあると思われる。
開発中という事で、メーカー公認の連続稼働時間は非公開になっているが、標準バッテリーでの実働時間が5時間を超えるようなら、ノートPCをモバイル機器としている人が乗り換えても不満が出る事はないと思う。
標準バッテリーで電話としての使用を含めて実働10時間くらい動いてくれれば、おそらく大絶賛されるに違いない。
だが、実際それぐらい動くのかどうかはわからない。
何しろ大きさが大きさであるから、大きなバッテリーを搭載する事ができない。一応メーカーでは大容量バッテリーの発売を決定しているようだが、そもそもそれでは電話として使いにくい。
標準バッテリーでの稼働時間がノートPC以上に求められるのは言うまでもない。
搭載されている機能は前述のサイトを見てもらえばわかるが、これでもかというほど多機能。
これだけ多機能だと、確かにノートPCの必要性を感じない程なのだが、私が考える最大の問題は、そのインターフェースの入力性である。
これはモバイル機器が常に抱える問題であり、現在主流の方法によるインターフェースであるなら、モバイル機器として優秀(小さい)であればあるほど問題となる部分である。
どんなに優れたモバイル機器であっても、人の手のサイズは変わらないわけで、小さくなればなるほど入力性が悪くなる。
特にノートPCと渡り合う場合、この入力性が常について回る。
この入力性の問題があるからこそ、ケータイであっても折りたたみキーボードなんてものが商品化されるワケで、この部分を劇的に進化させない限り、完全にノートPCに置き換わることはない。
ではWILLCOM D4はどうなのか?というと、残念ながら健闘しているとはいえ、その部分が完全解決しているとは言えない。
一応、モニタが5型のタッチパネルになっているため、マウス入力という部分においては問題はないだろう。
だが問題は文字の入力だ。タッチペンによる直接書き込みをサポートしているかどうかはわからないが、キーボードによる入力は両手親指による入力が限度ではないかと思う。
テーブルの上で両手によるタッチタイプが出来れば最適だが、キーピッチ12.2mm(横)では苦しいと言わざるを得ない。
結論として…問題はある。
だが、その問題はWILLCOM D4に関わらない問題であり、従来製品との比較で考えれば、間違いなく現時点で最高のモバイル機器と言える。
ただ、ここ最近非常に元気な低価格UMPCと渡り合う場合、価格がネックになる可能性はある。
13万円弱というプライスは、5万円台で登場しているUMPCと比較した場合に非常に高く感じられる。
PHS通信モジュールを最初から搭載しているとしても、利用シーンを考えたときそれがメリットになるとばかりは言えない。
魅力あるデバイスとは思うが、あとは使い方次第。
私がWILLCOM D4を見た場合、そんな感じである。