日本の今のケータイ(スマホ含む)の大部分は、3G回線というケータイキャリアの通信回線を使用する。厳密に言えば、MVNO(仮想移動体通信事業者)によるサービスもあるため、もうちょっと違う言い回しになるが、3G回線を利用してその電波が届く範囲ならどこでも通話やデータ通信が可能になる。
それに加え、最近のスマホなどはWi-Fi通信が可能で、データ通信に限りWi-Fiで通信して3G回線よりも高速にデータ通信が出来たりする。最近は3G回線の上位(?)にあたる、3.9G(4Gと言っているケースもあるが厳密には3.9G)回線のLTEでデータ通信が可能になる個体もあるため、Wi-Fiでなくても高速通信が可能になる場合もあるが、一般的にWi-Fiであれば格安で高速通信が可能という端末が多い。
で、この3G回線とか3.9G回線とWi-Fiについて、誤解をしている人が多いらしいという話がある。それがSCEのPS VITAという端末で起きた現象によって明らかになった。
PS VITAには2種類の個体が存在する。
一つはWi-Fi専用端末で、無線通信はWi-Fiのみが可能というタイプ。
もう一つが3G回線とWi-Fiが使用できるタイプで、発売当初はこの3Gモデルが価格も高かったのだが、価格改定時に3GモデルもWi-Fiモデルも同じ価格となり、私などは3Gモデルの方が圧倒的にお買い得じゃないか、と思ったものである。
ところが、世間では私のように考えるのではなく、通信費がかかると思ったのか、3Gモデルを避け、Wi-Fiモデルを買い求めるという人が少なくないようだ。
価格が改定されてからというもの、PS VITAは以前の6倍ほど売れるようになったのだが、その売れた個体はWi-Fiの方が多いというのである。しかも、店頭ではWi-Fiモデルの品切れが続出しているにも関わらず、3Gモデルは余っているというのだ。
店頭に買いに来てWi-Fiモデルがないとわかると立ち去る人や、店員に説明を受けて始めて納得して3Gモデルを買っていく人もいるようで、どうも買いに来る人が3G回線付きモデルの事をよく分かっていないという事が浮き彫りになった形だ。
PS VITAの3GモデルはNTTのSIMを利用出来るようになっていて、NTTの3G回線契約をすれば通信が可能になる。もちろんそれだけでなく、docomoのスマホと同じくWi-Fiでの接続も可能であり、その点でWi-Fiモデルよりも通信機能の選択肢が広い。
だが、この3GのSIMが利用出来るという事が、3G回線と契約していないと使えない、という認識になってしまっているようで、それが原因で3Gモデルが不人気らしいのである。
分かっている人からすると、この認識は大きな間違いで、当然3Gの契約をしなければその3G回線通信が使えないだけで、普通にWi-Fiモデルと同等以上の機能で利用が可能だ。3G回線の通信が無効であればその旨の表示が出るだけで、基本的にはそれ以外に不都合は起きない。
逆に、3GモデルにはGPSが内蔵されているため、Wi-Fiモデルよりも高精度に自分の一乗法を取得できるというメリットがある。Wi-FiモデルにはGPSが搭載されていない為、この部分はWi-Fiモデルより高機能と言えるワケだ。
さらに、3Gモデルはもう一つの使い方を提供してくれる。
それがNTT回線を利用したMVNOのSIMカード利用という手段である。
MVNOサービスを提供している、格安のデータ通信サービスで月額500円弱~980円程度のサービスを契約している人は、それらのSIMカードが利用可能だ。
もちろんSIMカードサイズが合っていなければ利用はできないが、サイズさえ合っていればPS VITAで3G通信が格安でできるわけである。
それにこれは何もPS VITAに限った事ではない。
私の第3世代iPadはSIMロックフリーの海外仕様のもので、それにIIJmioのMVNOサービスのSIMを使って3G通信している。もし、このIIJmioのサービスをやめてしまったとしても、このiPadはWi-Fi通信で使用することが可能だ。単に3G通信で利用出来なくなるだけの話である。
単純に考えれば分かる事だが、どうも日本人のそうした通信デバイスに疎い人達(失礼な物言いだが他に言いようがない)は、この原理に行き着かないようである。
おそらくそれは、長い間日本という国が“ケータイは通信キャリアのもので、ケータイのハードと通信回線事業者は同一である”という幻想の歴史を歩んできたからだと言える。
海外は、こうしたケータイハードと通信事業者が一対になっている事がないため、消費者もそういう考えに行き着かない。この違いが、今回のPS VITAのようなケースを生み出したのではないかと思う。
日本もおそらくそう遠くない内にSIMロックフリー化が定着するだろうと思うが、現時点でSIMロックフリーを推進しているのはdocomoぐらいしかない。auもSoftBankもまだSIMロックされた端末しか扱っていない(少なくともApple製品はそうである)。
こういう状況が、通信業界における日本のガラパゴス化を進めている原因だと思うが、折角世界に先駆けてIT大国となった日本が、ケータイ業界のみ未だガラパゴスだと言われている原因は、こうした昔ながらのルールに問題があるからだろう。
今後、日本でも今迄の常識が覆る事は往々にしてある。これからは消費者も賢くならないといけない、という事の一例ではないかと思った次第である。