現在、プリンタと言えばほとんどの人がインクジェットプリンタを想像するだろう。
だが、プリンタ黎明期と言える時期には、インクジェットプリンタがそもそも存在しなかった。
その頃主流だったのは、熱転写式であり、業務用ではドットインパクト式であった。
熱転写式は、インクがテープの上に載っているカートリッジにサーマルヘッド(熱が加わるヘッド)を組み合わせて、ヘッドがテープ上のインクを紙に転写してプリントする方式の事で、パソコンが今ほど普及する前のワープロの時代からの伝統的な方式であった。
一方、ドットインパクト式は、実のところ今でも現役で使われているケースも多く、複写式のプリントには今でも普通に使われている。例えば銀行であり、例えば郵便局等々。
熱転写のインクリボンは熱に強いビニール製であったりするが、ドットインパクトプリンタは布製のリボンにインクを染みこませ、インパクトヘッド(ピンが打ち出されるヘッド)がその布に向かってピンを打ち出し、その圧力で紙にインクを付けていく方式である。
物理的にピンで打ち出す為、カーボンが裏面についている紙にプリントすれば複写できるというメリットがあり、業務用では今でも現役なのである。
しかしながら、この両者の方式には弱点が存在しており、熱転写式はインクリボンの転写効率が悪い(熱が伝わらない部分のインクが丸々残る)という事、ドットインパクト式はその動作音がキーキーうるさい事が問題とされ、一般向けのプリンタとして新しい方式のプリンタが待ち望まれていた。
そこから生まれたのが、バブルジェット方式であり、それが今のインクジェット方式と変わっていった(多少語弊があるかもしれないが、概ねこんな感じ)。インクジェット方式にもインクがタンク内で揮発するなどの問題はあるが、何より動作音が小さい、インク効率が良いなどのメリットが強く、改良を重ねて今の製品が生まれてた。
では、熱転写方式やドットインパクト式はその後どうなったのか?
私の知る限り…ではあるが、熱転写式はほぼ姿を消したと言える。
最後まで一般用の熱転写プリンタを販売しているのはアルプス電気という会社で、マイクロドライプリンタという独自技術のカラー熱転写プリンタを製造販売していたが、2010年5月末日でネット直販も終焉を迎える事が予定されている。…もうすぐだな。
ちなみにこのマイクロドライプリンタ、金色や銀色のプリントが出来るという特徴があり、個人で使う分にはかなりオモシロイ事ができるプリンタであった。
そしてドットインパクトプリンタだが、これは今でも一部が業務用として使っている為、未だに製造されている。実はここからが今日の本題。
6月24日にエプソンからVP-1900シリーズ2機種が発売となる。
基本仕様は、印字桁数が136桁、ピン数は24ピン、漢字書体は明朝とゴシックが内蔵されている。また制御コード体系は、ESC/P24-J84とESC/Pスーパーであり、接続は従来シリアルコネクタが主流だったがUSBによる接続が可能となった。対応用紙は、単票、単票複写紙、連続用紙、郵便はがき、連続ラベル紙などである。
何より新しいのはUSB接続となった事で、上位機種のVP-1900NはネットワークI/Fカードを内蔵しており、Ethernetに対応する。
価格は…既に一般的な価格ではないため、8~9万円ぐらいになる模様。
ちなみに以前このドットプリンタの名器と呼ばれていたのがエプソンのVP-1000である。
その後VP-1500というプリンタも発売されたが、大きなサーマルヘッドを搭載していたのがVP-1500までで、VP-1600からはサーマルヘッドが小型化された。普通、小型化されるとより新型で良いというイメージがあるが、当時はサーマルヘッドは大きい方が安定すると言われていた事もあり、名器と呼ばれたのはVP-1500までだった…と私の周辺では言われていた。
…ま、今ではどうでもいい話ではあるが。
何はともあれ、未だ残ったプリント技術。果たしていつまで残るのやら…