Appleの思惑とソフトバンクの現実

　iPad2が発表となった。
　そして3月25日より発売されるという、6月発売ではないか？ という業界の予測を斜め上に裏切る告知もあった。提供は従来と同じくソフトバンクで、3G+Wi-FiモデルとWi-Fiモデルの各2系統にそれぞれ内蔵メモリが16GB、32GB、64GBの3種になる。
　スペックは大凡噂通りで、CPUに1GHz駆動のA5を搭載し、性能的にはA4のデュアルコア版といった位置づけ。但し、グラフィック性能はピーク時で初代iPadの9倍に達するようで、大幅な進化を遂げたと言える。
　またディスプレイは1024×768ピクセルの9.7インチIPS液晶を搭載し、5倍デジタルズームの静止画や720pのHD動画を撮影できるアウトカメラと、VGA静止画と動画を撮影できるインカメラを備える。
　これでiPadもFaceTimeによるビデオチャットが可能になった事になる。

　また、今回は初代よりも33%の薄型化に成功しており、背面も初代iPadと異なり平面部分が存在する。色も今回はブラックとホワイトの2種を同日発売するという事で、iPhone4のようなホワイト難民が出る事はないとしている(ちなみにiPhone4のホワイトモデルの話はまだ出てきていない)。
　今回のiPad2の発表そのものは驚くべき事ではないのだが、私的にソフトバンクにもの申す事がある。

　今回のiPad2と共に発表されたものに、iOS4.3がある。
　このiOS4.3には、パーソナルホットスポットという機能が加わるのだが、これは元々あるiPhone4などのテザリング機能をより明確化した機能になる。
　要するにiPhone4にiOS4.3を入れたとすると、このiPhone4をモバイルルーターとして、他Wi-Fi機器を3G回線でネット接続可能にしてしまうという機能である。
　しかも今回のパーソナルホットスポットは、USB、Bluetoothを加えて最大5つ(Wi-Fiは最大3つになる)のデバイスとネットワークを結ぶ事が出来るのだが、残念な事に日本向けのiPhoneやiPad、iPad2ではiOS4.3を導入してもこの機能が使えない。
　というのも、ソフトバンクに供給されているApple製デバイスは、すべてテザリング機能をOFFにしているからだ。ソフトバンクの回線の圧迫を恐れての措置と思われるが、テザリング機能は有効にできないようになっている。
　が、私が思うに、AppleはiPad2のネットワークに関してWi-Fiモデルで問題なくあらゆる所でネット接続可能という思惑でいるのではないかと思った。
　要するに、iPhone4をスマートフォンとして持っていれば、iPad2はWi-Fiモデルでも3G回線でネットワークに接続できますよ？ という事を言いたいのではないかと感じたのである。
　もちろん、iPad2にも3G+Wi-Fi版は存在するが、パーソナルホットスポット機能があれば、3G回線を普通に持っているiPhone4があれば、iPad2はWi-Fi版で問題なく3G回線接続できてしまうのだ。
　しかし、前述したように、Appleのそんな思惑はソフトバンク製品では実現しない。
　そもそもテザリング機能をOFFにされてしまっているだから。
　だからもしiPhone4を持っていたとしても、iPad2でどこでもインターネットを接続できるようにするためには、iPad2も3G+Wi-Fi版を購入し、回線契約しなければならないのである。
　正直、なんでこんな便利なものを不便に使わなきゃならないんだ？ と思えてならない。
　そもそも、できる事をできないようにしてしまっている時点で間違いなのだが、回線料を2重取りする事に何の悪意も感じていない今の体制にはガッカリである。
　もしこのテザリング機能が可能だったら…私はiPhone4ユーザーでも気軽にiPad2を購入しようと思うのではないかと考える。その心理を実現できないソフトバンクが供給するという現実を何とかして欲しいものである。
　まぁ、結局はソフトバンクのレールを歩むしかないわけだが…しかし、納得の難しい話である。