不振が続くニンテンドー3DSだが、その理由はやはりキラータイトルとされるソフトが発売されないからだろうと思っている。
任天堂ならマリオやゼルダといったソフトがあってしかるべきだが、残念ながら6月16日まではそうしたタイトルがない。
しかもその6月16日に発売されるゼルダにしても、過去に発売した時のオカリナのリメイクであり、新作ではない。
狙いとしては、今までのタイトルを3D化させる事で新作のように見せてしまうという手法なのかもしれないが、これらはあくまでもリメイクであって新作ではない。
リメイクをウリにしてしまうと、客層のターゲットの中心はどうしても過去作品をプレイした人に近い所に寄ってしまう。そういう意味ではニンテンドー3DSはDSよりも(販売に関して)冒険しない方向性を任天堂自身が見せているように思えてならない。
リメイクも確かに必要だが、それはあくまでもそのプラットフォームで新作を出してから…と私は思うのだが。
さて、そんなニンテンドー3DSの中で、私がイチオシしたいソフトが“スティールダイバー”である。
このソフトは海外では100点満点中59点ほどしか評価されなかったらしいソフトだが、それはこのソフトを見る視点がここ最近多いソフトとは異なるからだと思っている。
このスティールダイバーは、流れるような画面の中を神業のようにすり抜け、高得点をたたき出すゲームではない。
感覚としては、操作の難しいものを何とか乗りこなす面白さに直結する。
つまり、もどかしいまでの操作を如何にして華麗に行い、スマートに勧めていくか? というソフトである。
どちらかというと、フライトシミュレーターに近いと言った方がわかりやすいかもしれない。ここ最近はそうしたフライトシミュレーター的なゲームを見なくなったが、ゲームの面白さの原点には、確かにこうした“上手く操作する事が目的”というゲームが存在するのである。
まだそんなに進めているワケではないが、一通り3つのモード全てをやってみた。
まずは潜水艦モードをプレイしてみた。
この潜水艦モードと呼ばれるのは、横スクロールのミッションクリア型モードである。
3D化された上画面がプレイ画面で、タッチパネル側は潜水艦を操作する為のスロットル類がある。
この潜水艦モードでは、操作に十字キーやボタンを使わない。あくまでもタッチパネルに表示されている2本のスロットルをスライドさせて前進・後進、深度の上下をコントロールする。
しかも水中の潜水艦を操作するものだから、機敏に動くワケではなく、慣性が働いているから、次の動作を予測しながら早めに操作しないと障害物などが避けられない。
3種類ある潜水艦はそれぞれ独特な特徴を持っていて、その特性に合わせた攻撃をしないと魚雷を目標に当てることも難しい。
スピード感があるわけでもないし、このもどかしい操作をじっくりと行っていかなければならないゲーム性は、ここ最近ほとんど見なくなったものだ。だから慣れていない人出あれば、これを「面白い」と評価する人もいれば「まるっきり話にならない」と感じる人もいるだろう。
ある一面では大絶賛できるゲーム性だし、他の一面では駄作と言われてしまうゲーム性。
もともとフライトシミュレーターもそういう分野のゲームだが、このスティールダイバーはまさしくそのフライトシミュレーターと同じ分野の作りになっている。
個人的にはこのゲームはかなり面白いと思った。
もどかしいまでの操作の中で、動きを予想しないといけない緊張感。そして表示される3Dの水中表現は、確かに今までにはないパターンのゲームだと思う。
一つだけ不満を言えば、潜水艦モードでも前進・後進の出力レバー操作を十字キーの左右に当てて欲しかったし、深度の上下をXボタン・Bボタンに割り当てて欲しかった。基本操作部分だけでもボタンで操作出来れば、もどかしい中にも多少のレスポンスは感じられると思うのだが…。
次に潜望鏡モードをプレイしてみた。
これは昔、エレメカ(ビデオゲームが流行る前に主力だった機械式ゲーム)ゲームにもあった、潜水艦の魚雷で戦艦を撃沈させるゲームに似ていて、潜望鏡を覗いた画面のモードだ。
ニンテンドー3DSに搭載されたジャイロを上手く使っていて、本体を持って左右に回ると視界も左右に移動する。そして敵戦艦を見つけたらそこで魚雷を発射して撃沈する。もちろん敵戦艦も爆雷攻撃してくるワケで、そうなると潜行して回避しなければならない。
このモードはどこか懐かしい感じのするモードで、くるくる回る椅子に座ってプレイすると、ぐるんぐるん回りながらプレイする事になり、多分他からみるとバカみたいに見えると思うw
だが、やっている事は単純でもかなり新鮮に感じるし面白い。
立体に見える画面の先に遠近感をもった敵戦艦が見え、それを狙い撃つ面白さは確かに新鮮だ。
このモードは潜望鏡のズーム操作が十字キーの上下に割り当てられ、潜行回避がBボタン、魚雷発射がAボタンと割り当てられている。なのでパッドを使わずに遊べるのは良い感じだ。
最後に海戦モードだが、これはもう大戦略のようなモード。
ただ、根本的に違うのは自分と敵、ターン交代制で進むのだが、行動は1回のみ。
ソナーを使って敵艦船を見つけるのにも1回と数えられてしまうので、なかなかにして難しいものを要求される。
ある程度のヤマカンを使わないと進める事ができないため、そこに苛立つ事もあるかもしれない。
ただ、これもシミュレーション好きであればそんなに苦にはならないと思うし、コンピュータ戦だけでなくダウンロードによる対人戦もできるため、そこに面白さを見いだす事もできる。
ちなみにヘックス上でこちらが潜水艦での攻撃戦闘が開始されると、潜望鏡モードと同じ画面になる。防御戦闘だと50m、100m、150mの3パターンの深度への回避選択となる。
こちらが駆逐艦での対潜水艦戦闘だと、50m、100m、150mの3パターンの深度への爆雷攻撃となる。
前述したが、通常は敵艦船が全く見えない状態で、ソナーを使って敵を発見しなければならない。当然、ソナーを使えば敵の位置もわかるが自分の位置も知られてしまう。
こういった駆け引きを自分のターンに1回だけの行動で交互に行う。
ユニット毎に1回ずつの行動ができる大戦略シリーズのような行動選択の多さがない分、駆け引き要素はより強いよう思えた。
最終的に私はニンテンドー3DS黎明期の名作だと感じたが、往々にして人を選ぶタイトルでもあるように思う。
もともとDSiウェアとして作られる予定のあったソフトだという事らしいが、このソフトほど海中の臨場感を3D表現して魅せる演出ができるタイトルはないように思う。
もしこれがDSiウェアとして発売されるだけのタイトルだったなら、ここまで私も面白いと思わなかったかもしれない。基本は確かに面白いが、何より目に入ってくる情報を含めて臨場感を楽しめるというのは、ニンテンドー3DSならではではないかと思う。
万人にはオススメしないが、フライトシミュレーターのようなソフトを面白いと感じる人にはオススメできるソフトである。
価格もそんなに高くないので、ニンテンドー3DSを持っている人で条件に当てはまる人なら、押さえておいても良いタイトルだと言えよう。