その昔、私がまだPCのパワーユーザー(と思しき考えを持っていた)だった頃、ある一つのコンセプトを持ったPCを作りたいという欲求があった。
当時はまだMini-ITXという規格が存在する前だったが、小さなPCでハイエンドな性能を持つPCを作りたいという考えがあったのである。
というのも、当時もそうだったがAMD系のCPUやマザーボードは小さいマザーボードでも高機能なものが多く、また当時のAMD製CPUはIntel製CPUよりも発熱量が小さかったという事もあって、小型PCを作りやすかったからだ。
だから形は小さくてもハイパフォーマンス、というPCが比較的作りやすかったというのもあって、場所の問題などを考えた結果、私の環境でもそうしたハイエンドミニPCというスタイルが最も適していた為、そうした流れのPCを作りたいという考えがあったのである。
一度はそうしたミニPCを作ったのだが、残念だったのはミドルレンジクラスのビデオカードですら熱問題で搭載が難しかった為、結局ミドルローやローエンドのビデオカードを搭載せざるを得なかった。
そして時は流れ、現在はMini-ITXという当時よりもずっと小さいマザーボード規格が存在し、そしてその機能も決して引けを取らず、制限があるのはスロット数ぐらい、という夢のような環境が作れる状態となった。
まさに夢のような環境があるわけだが、それでもそうしたニーズを満たす事に一つだけ問題があった。
それは、そうしたニーズに応えられるケースが非常に少ないという事だ。
これは今も昔も同じで、小さくすれば当然熱処理に問題が生まれ、作業スペースも限られる事から、どうしても購入層の幅が狭くなり、結局メーカーから思ったようなケースが発売されないのである。
だが、私は一つの理想のケースを見つけた。今週、アキバに登場したCubitek製“Mini Tank(CB-TKI-B210)”である。
Mini-ITXと言うにはちょっとケースの大きさが大きいかもしれないが、何より電源ユニットがマザーボードスペースの下に配置されているという、イマドキな作りになっている珍しいMini-ITXケースと言えるだろう。
スペックを見ると、その大きさも仕方がないかと思えてくるから不思議である。
5インチベイ2基(1基は3.5インチ共用)、3.5インチシャドウベイ4基、2.5インチシャドウベイ2基を備え、長さ340mmまでのビデオカード、高さ160mmまでの大型CPUクーラーを搭載可能というから驚きである。また、マザーボード下に配置する電源は奥行き200mmまでのATX電源が搭載可能であるため、ハイエンドビデオカードを搭載したとしても何とか給電できる電源を搭載する事ができるだろう。
またこの画像の位置からは見えないかもしれいなが、PCI Expressのスロットはケースに2基分取り付けられている。これはもちろん要2スロットのビデオカードを取り付けられるようになっている為だ。
それと後ろ側から見える中央のファンの左側に2個のゴム穴が見えるが、これは水冷用チューブを外に出す穴である。このケースは標準で水冷化可能で設計されている。
それと、本体前面にはeSATA端子が1つあり、サウンド端子の他に2基のUSB 3.0ポートも装備されている(残念ながらピンヘッダ接続には非対応だが)。
これだけの機能を持ちながら本体サイズは幅256×高さ320×奥行き400mmと、Mini-ITXとしては大きいものの、ハイエンド構成にしても問題のない機能性の割に小さいサイズに収まる。
これならmicro ATXの方が小さいじゃないかという人もいるかもしれないが、コイツで実現可能な機能は完全にハイエンドであるから、それはこのサイズより小さいmicro ATXには無理な事。
高機能とサイズを凝縮するとこうなりました的なPCが実現可能というのは、ある種のニーズにぴったりではないかと思う。
ATXのマザーボードを使っている人に質問してみたいのは、そのマザーボードの拡張性と機能を貴方はどこまで使っているか? という事だ。
実際問題、使わないスロットも多いのではないかと思う。
特に最近はチップセットでほとんどの機能をまかなえてしまっているため、特に拡張カードを挿す必要がなくなりつつある。
一部地デジキャプチャカードなどがあるかもしれないが、それらもUSB3.0が本格的に普及したとき、おそらく外付けユニットでどうにでもできる状態になるだろうし、逆にそういうユニットはあえて外付けの方が小回りが利いて良い場合も多い。
内蔵すべきものをハイエンドに小さく収める。
このPCが求めているものは、まさにそこに尽きるのである。
個人的にこのケースで次のハイエンドマシンを考えてみたいなぁ…とか思ったりした。
それがIntelのIvy Bridgeとなるのか、それともAMDのBulldozerコアとなるかは分からない。それらもスキップしてその次の構成になるかもしれないが、その時、できるならPCは小さくまとめてしまいたいな、と思っている。
省電力化もそうだが、小さくできるものは小さくしてしまった方がいい。
何となく、今のニーズはそういう所もあるのではないかと思う。