いつかこんなゲームが現実になるのではないかと思っていた。
かつて私も似たような事を考えた事もあったが、その時にはそれを実現するデバイスが存在しなかった。
だが、私がそれを考えてから随分と時が経ち、気がつけばスマートフォンなどという汎用的なデジタルデバイスを大部分の人が所有する時代になった。
そう、複数のスマートフォンで、TRPGを多角的にプレイできる…そんな時代がもうすぐやってくるのである。
プレイヤーに必要なデバイスはスマートフォンであり、それは一人一台必要になる。
TRPGではゲーム進行役となるゲームマスターは、このゲームに存在するのかどうかはわからないが、あえていうなら、全員のスマートフォンの情報を神の視点で管理できるデバイス、つまりセンターデバイスがそのゲームマスターのポジションなのかもしれない。
このセンターデバイスには、ゲームの世界で起こる事の全てが表示されているのだが、各プレイヤーが持っているスマートフォンには、そのプレイヤーキャラクターの視点で見たものしか映っておらず、この世界の背後にうごめくものの存在は、スマートフォンからは確認ができない。
つまり、スマートフォンはそのゲームの中に存在する仮想世界を1視点で見ているにすぎず、全てのスマートフォンとセンターデバイスは、その三次元的な世界観を共有しているという事になる。
まさしくヴァーチャルリアリティ。
このゲームは、そう呼ぶに相応しい作りになっているのである。
このゲームは、FLYING HELMET GAMESという海外の開発メーカーが考案した“Eon Altar”というゲーム。
このメーカーはソニーコンピュータエンタテインメント、Electronic Arts、Ubisoft、Biowareで活躍したメンバーが集まって作られたメーカーで、その開発者たちが作り上げたもの。
FLYING HELMET GAMES
http://www.flyinghelmetgames.com/ (現在はリンク切れ)
何とも野心的なゲームではあるが、アイディアとしては真新しいと私は思っていない。
前述した通り、ヴァーチャルリアリティとも言える仮想世界を映し出すカメラが複数集まって、その世界観を別の視点で見ているに過ぎないのだ。だが、その事がどれだけ革新的で、新しい表現になり、新鮮な面白さを生み出すことか?
インターネットによって遠隔地にいる人達があつまって遊べる時代に、わざわざ一箇所にスマートフォンを持ち寄ってプレイするゲームは、一見時代が後退したように思えるかもしれないが、そこから生み出される強烈な表現は、おそらく何よりも新しく感じられるハズだ。
だが、私はここからさらに先を進んだ事を以前考えていた。
私はモバイル端末にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を接続し、それらがネットワークに繋がって、単一の世界でプレイするゲームを考えていた。
プレイヤー一人一人が見えているものはHMDに見えるもののみ。そこに自分のステータスなどが表示されてはいるのだが、自分以外のパラメータは一切見えない。ゲーム進行役はセンターデバイス(据置機を想定していた)が担当し、プレイヤー一人一人が自分のキャラクターの視点でのみゲームをプレイするワケである。
使っているデバイスがスマートフォンに置き換われば、FLYING HELMET GAMESの“Eon Altar”と同じである。臨場感では私が考えていたものが優るかもしれないが、ゲームの戦略性を考えれば“Eon Altar”の方がゲーム的でオモシロイかも知れない。
それに“Eon Altar”の方が、現実味がある。これは実に重要な要素だ。
私は結局絵に描いた餅しか持ち得なかったが、FLYING HELMET GAMESは現実的な答えを提示したのである。これは賞賛に値する。
現時点では日本語版の存在は陰りも見えない。
だが、私は日本のゲームデベロッパーならこのアイディアをより昇華させたシステムを考案してくれるのではないかと期待している。
例えば…プレイヤーキャラクターの視点はスマートフォンに表示し、各プレイヤー用のセンターデバイスを据置機かPCに受け持たせそれをインターネット上で同期し、プレイヤー同士は遠隔地にいてプレイできる…なんて事である。
米国などと違い、日本人は一箇所に集まってゲームをプレイできる環境が余り整っていない。そうした集まれない人達でもこうした複数人によるエンターテイメントを提供しようとするなら、そうした同期システムで実現するしかない。
中々にして良いアイディアだと思うが、これをさらにブラッシュアップして日本から画期的なゲームが出てきてくれないかな、と願わずにはいられない。
どちらにしても、一度でもTRPGの面白さを味わった者ならば、この“Eon Altar”の可能性には興味が持てるはずだ。
日本でプレイできる事を祈りつつ、新たな日本製ゲームの登場を切に願いたい。