docomoからiPhoneが発売される。
おそらくこの情報を最も恐々と感じたのは、auとSoftBankだろう。
auやSoftBankは、今までiPhoneを取り扱う事で、docomoからの流出組みを受け止める事でシェアを伸ばしてきた。docomoの絶対的な通話エリアと通信品質よりも、端末の魅力が勝っているiPhoneは、ユーザーからするとdocomoを切り捨ててでも欲しい逸品だった事になる。
ところが、そのdocomoがiPhoneを取り扱うとなると、今まで流出してきたユーザーがdocomoへ戻っていく可能性がある。
auとSoftBankは、この流れを食い止めるために、価格で優遇策を採るか、docomoに対向するだけの通信品質を得るしかない。後者は現実的に難しいと言わざるを得ないとなると、価格でdocomoを上回るパフォーマンスを発揮するしかない。
だが、実はauとSoftBankには出来て、docomoにはできない戦略が一つある。
それが固定電話を含めたサービスパッケージである。
固定電話の契約とケータイの契約を抱合せて、より安くするプランというのは、実はdocomoには出来ない戦略である。docomoは同グループ内でのそうした商売を禁じられている。国の事業を受け継いだ特別法人ならではの規定である。JRが駅前不動産を扱えないのと同じである。
だからauやSoftBankは今以上に価格で勝負に出てくるとみられる。というか、それ以外に勝負できるものを持っていれば良いが、今の所それ以外に方法がないと見られる。
一方、docomoは全国の2,400近くの店舗の約半分の店舗でiPhoneを取り扱う予定で、その拡販に力を入れている。
docomoからすれば、今まで流れ出た顧客を取り戻す絶好のチャンスと考えていて、シェア奪還の意気込みは強い。
だが、そうした各キャリアの思惑とは別に、こんな話もある。
IT Media
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1309/13/news038.html
既存のiPhoneユーザーの約4割は「iPhone5sやiPhone5cへの乗り換えは様子を見てから」というのである。
要するに、これは製品の魅力の問題。既存ユーザーが現行機種と比較して乗り換えたいと考えるだけの新製品かどうかという事である。
docomoからすると、買い換えてくれないと取り入れる事ができないため、こうした4割の既存ユーザーをどうやって取り込むかが今後の課題になる。
先日も書いたが、私自身はまだiPhone5の2年支払いが終わっていない事もあって新機種に乗り換えることはないし、もし2年経過していたとしても、スマートフォンをやめてガラケーへと戻し、タブレットを併用するスタイルにしてしまうかもしれない。ここ数年使ってきて、自分の使い方とランニングコストを考えた結果、スマートフォンとタブレットは同時持ちする必要がないし、タブレットがSIMフリーなら、格安プランで運用する方がランニングコストとしては扱いやすい事が分かっている。
おそらく、私のような運用を考えている人もいるだろうし、ここ数年でそうした事を学習した人もいるハズで、そうなるとdocomoをはじめとした通信キャリアが思い描いている流れとはわずかにズレが生じている可能性もある。
結局の所、既存ユーザーの中でも、流行モノでiPhoneを使っている人は草々に乗り換えるだろうし、実用面を重視する人はしばらくは見送る傾向にあるだろうと思う。
docomoからすると、既存ユーザーは乗り換えてくれないとユーザーを獲得する事ができないのだから、そこにテコ入れをしないと意味がない。
帰参を得ようとするdocomoとUターンを阻もうとするau、SoftBankの戦いは、来週あたりにサービス合戦となって激突するかもしれない。
ただ、ふと思う事もある。
iPhone5の時、テザリングを巡ってauとSoftBankが激しい争いを展開し、結局両者似たような結論になった争いがあった。
これらも結局はユーザーを獲得するための戦いだったワケだが、この戦いにはその後、いろんな問題を孕んだ結果をもたらした。
auが「来年3月までのLTEの普及率は…」と発表した結果が、実は有言通り実行されておらず、しかもそれが達成する見込みがなかった、という問題が発覚した。
これは提供するバンド帯の違いもあって、iPhone5の対応バンドから外れた周波数でauのサービス拡充が行われていて、iPhoneが対象外だった事に起因する問題だ。
当然、auに期待してiPhone5を購入したユーザーからすると激怒対象だった。
だが、auは基本的にLTE以外の対応はSoftBank以上のサービスを持って展開している…というような(正確には違う言い回しだったかもしれないが…)話で特別対応するような事はしなかった。
またSoftBankに関して言えば、イツモの事である。何かしらのヌケがあったり、対応しきれていない事などは日常茶飯事だ。
ケータイ電話の周波数問題は、実は水もので、いつも同じ結果に収まるという事はない。
電波にはかならずノイズが乗るものだし、品質も常に変動する。ましてユーザーの住んでいる地域によっても変わる。
そんな水のように流れていくような媒体に対し、絶対のものを求めるというのはユーザーのエゴでしかない事を理解した方がいい。
おそらく、iPhoneで勢いを付けるであろうdocomoでも同じ結果が待っている。組織として大きなdocomoであっても、先行して通信網を持っているdocomoであっても、結局は地域差は出るし、ユーザー数の多さが逆に通信品質の低下をどうしても招いてしまう事も多々ある。
そういう事を十分理解した上で、3つのキャリアを選ばないと、ユーザーがまず第一に不幸になる。docomo絶対原理などというものはもはや存在しないのである。
と、ここまで書いておいて、トドメをさすかもしれないが、私最近ちょっと思う事がある。
「iPhoneって…そんなにいいか?」
私からするとiOSは良いと思う。たまたまiOSを扱えるスマートフォンがiPhoneだけだから、結局はiPhoneが良いという事になるのかもしれないが、私はiPadの方が良いと思っている。
スマートフォンがネットに力を入れ始めると、その画面がどんどんと大型化していき、今では5型とかそういう大きな液晶サイズのスマートフォンが出てきてしまっている。それで電話するというのだから、私からすると電話しにくい事この上ない。
私はiPhone5ですら、Bluetooth端末で通話しているくらいである。
結局はネットに特化したタブレットを持ち、通話に特化した端末を持つ方が、ユーザーは幸せになれるように思えてならない。
そろそろユーザーが自分のライフスタイルに合わせた端末選びをして、さらにそこに通信キャリアとの付き合い方を見直す時代に来たのではないかと思うワケである。
通信費が高いというのは、自分のライフスタイルに合わせたチョイスをしているのではなく、おそらくキャリアが用意したスタイルに乗っているだけ、というのが理由なのではないかと思う。
そこら辺、そろそろ賢く生きる時代になったと言えるだろう。
さて、そうは言ってもiPhoneは三つ巴の戦いを迎える。
最終的な勝者はだれになるのか?
その部分には興味がある。見届けていきたいと思う。