1080に続いて1070が発表された。
前モデル比1.7倍
PascalアーキテクチャのGeForce GTX 1080の発表に続き、今度はその下位モデルである1070の仕様が公開された。
1070は、CUDAコア数1,920基、ベースクロック1,506MHz(ブーストクロックは1,683MHz)、8GHz駆動のGDDR5メモリ(メモリバス幅256bit、容量は8GB)という仕様で、バンド幅は256GB/secに達し、その熱設計電力(TDP)は150Wとなっている。
前モデルとのクロック上昇率は1080同様高いが、搭載しているCUDAコア数は256基増と前モデル比15%増に留まっている。1080は25%増だったから、1080と比べると同じだけの進化をしていない事がわかる。
メーカーとしてもそのあたりは最初から名言していて、一般的なゲームでGeForce GTX 970比1.7倍の性能としている。1080は980比2倍としていた事から考えても、下回った性能と言える。
価格は順当?
で、この性能になった背景に価格の問題が多分関係しているだろうなと思っている。
というのも、1070はOEMボードで379ドル、founders Editionで449ドルとなっており、今日のドル価格110.33円で計算するとOEMボードで41,815円、founders Editionだと49,538円となる。この価格は、あくまでもドルをそのまま円換算したものなので、実際にはこれよりも5,000~10,000円くらい価格が上がる。そうなると、5~6万円というのが1070の実勢価格になるのではないかと予測される。
さて、この価格をパッと見たとき、これは安いと言えるだろうか?
1070は970と同じ立ち位置であるため、ハイエンド製品という区分に入る事にはなるのだが、そもそもハイエンドといってもこの上には1080があり、おそらくその後はTitanというグレードが登場すると見込まれている。まして、PascalアーキテクチャであるGP100はGPGPUを目的としたコアであるため、Titanより上のGPGPUを想定したグレードが登場するるかもしれない(TitanがそのままGPGPUグレードになる可能性もあるが)。
であると、1070はハイエンドの区分にあるとは言えミドルハイより少し上、という立ち位置でなければならない。
私からすると、2万円台のビデオカードはミドルレンジと言っても下の製品で、3万円台がミドルレンジ、ミドルハイだと3万円台後半から4万円台、4万円台半ばから後半がハイエンドの一番下、という認識がある。5万円台に入ると、それはもうハイエンドの中間という感じがするのだが、1070はまさにその区分に入ってきてしまうことになる。
そもそも、こんなにもグレードを分ける必要もない、という言い方もできるかもしれないが、半導体は歩留りの関係でどうしても性能差が出てきてしまう製品であるため、作られた半導体を無駄なく販売するにはグレードを増やして性能差を付けて販売する事が多い。
こうした背景を考えていくと、1070の価格はこれでも高いと言わざるを得ない。
おそらくNVIDIA側もそうした考えがあるのだろうと思う。で、1080の価格差等を考えた時、純粋に1080と同じだけの性能比率を持たせて1070を設定すると、性能を絞ったとしても5~6万円台になってしまい、絞らないと7~8万円になってしまうと考えたのかもしれない。
性能が販売する価格の幅によって絞られるというのは、製品構成上あり得る話ではあるが、今回のPascalアーキテクチャは従来品との性能差が激しすぎたため、こういう処置を取らざるを得なかったものと考えられる。
Pascalアーキテクチャは複数?
GeForce GTX 1080が発表された時、その搭載アーキテクチャは“Pascal”だと公開された。もちろんそれが間違いという事はないのだが、実際、GPGPUとして設計されているGP100とグラフィックス向けとして発表されたGeForce GTX 1080/1070に搭載されているGP104は、以前のMaxwellコアであったGM200とGM204の関係とは明らかに異なるレベルで、別コアのような違いがあると言われている。
具体的には専門のサイトを見てもらった方が良いのだが、簡単に説明すると、FP64(64bit浮動小数点演算)とFP16(16bit浮動小数点演算)を完全に制限したものがGP104で、フルスケールで浮動小数点演算を可能にしたものがGP100だという事である。
impress PC Watch 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/20160518_757916.html
詳しい人だと「Maxwellと同じじゃないか」と思われるかもしれないが、違いは二つある。
一つはFP32(32bit浮動小数点演算)性能に完全特化させている事である。
GP104(GeForce GTX 1080/1070)のFP32性能はGP100とほぼ変わらない性能を持ちながら、他の機能を切り捨てた結果、コアのダイ面積が半分くらいになっている。という事は単位面積あたりのFP32性能が異常に高くなっているという事になる。
PCのグラフィックス関係ではほぼFP32性能しか要求されないため、GP104(GeForce GTX 1080/1070)は完全にグラフィックス用に作られている事がわかるわけである。
この流れもMaxwellと同じなのだが、MaxwellではFP32以外の機能の切り捨て方がまだ甘いというか、今のPascalほど顕著ではなかった、という所が大きな違いの一つ目である。
二つ目は、GP104(GeForce GTX 1080/1070)には搭載されていてGP100には搭載されていない機能があるという事である。これはMaxwell時代ではあり得なかった事である。
GP104に追加で搭載されている機能というのが、Simultaneous Multi-Projection(サイマルテニアスマルチプロジェクション)と呼ばれる機能である。
これはソフトウェアでも実装できる機能で、ポリゴンデータのトランスフォームに関わる機能なのだが、これをより効率よく行う事ができる機能がGP104にはハードウェア機能として実装されている。
GP100にこの機能が搭載されていないのは、開発時期の違いによる問題で、GP100の開発後にGP104に搭載された機能だかららしい。
もっとも、それだけの問題だったのかどうかは今となってはわからないが、GPGPUに必要な機能というよりは完全にグラフィックス機能で必要となる機能であるため、ある意味GP100には不要でGP104にこそ必要な機能だったとも言える。
この二つの事から、同じPascalコアでありながら、違うアーキテクチャとも言える構成になっているのが、今世代のNVIDIAコアと言える。
蓋を開けてみれば恐ろしい程の進化を遂げたGP104(GeForce GTX 1080/1070)だが、私はこの新しいGPUへの移行はしばらく見送る予定である。
というのは、私自身今のスタイルであればまだGeForce GTX 970で十分な性能と考えているからだ。もし価格が安くなってくれば、また話は変わってくるが、現時点ではまだまだ安くならないだろうし、モニターも4K表示ではないので、現状では970で問題なしとしている。
ただ…GP104(GeForce GTX 1080/1070)にすると、恐ろしい程のフレームレートが出るのだろうなと思うと、試してみたい気持ちではある。
果たして、私がGP104(GeForce GTX 1080/1070)を導入するのはいつの日になるのやら…。