Alder Lakeがついに11月4日に登場する。Ryzenを超えたと言っているが…。
確かに性能は超えた
Intelが第12世代コアを発表した。
噂では高性能コアと高効率コアを持つという、ARMではBig-Littleというコアの使い分けと同じ仕組みを導入したコアとされていて、実際その通りの構造で登場した。
実際には、高性能コアはPコア(Performanceコア)、高効率コアはEコア(Efficientコア)と呼ばれ、モデルによってそれらの搭載数が異なる。
たとえば最上位のCore i9-12900KだとPコア8コア/16スレッド、Eコア8コア/8スレッドという構成になっている。PコアはHyper-Threadingで動作スレッドが倍化するが、Eコアは物理コアとスレッドが同数になる。
これだけを見るとAMDのRyzen9 5950Xの方が16コア/32スレッドもあるので、性能的にはRyzen9 5950Xの方が上回るのではないかと考えられるが、IPCはCore i9-12900Kの方が上回り、かつ高いIPCが不要な処理などを受け持つバックグラウンド処理へのタスクはEコアが受け持つが、その割り当て率が高まる事で、最終的な実性能が拡大し、Ryzen9 5950Xよりも高性能な結果が出せているようだ。
この性能を出すには、Windows11との組合せが必須なようで、「Intel Thread Director」という仕組みが性能を叩き出している秘密のようである。
しかも、PコアとEコアという、ARMコアのようなBig-Littleと同じ省電力性を持つ事から、通常使用では電力効率が相当に高められている。
ただ、ベンチマークのような全力稼働の場合は、かなりの電力を消費するので、電力効率が上がるというのは、あくまでも平均的な使い方の時に限られる。
と、このような事が理由ではあるものの、性能でRyzenを上回った、としてIntelではRyzenを超えるCPUとして第12世代CPUを発表してきた。
製造プロセスでは未だAMDに分はあるとしつつも、性能では追いつき、そして追い越した、というIntelの主張は間違ってはいないが、その実態はOSのタスクマネジメントをも駆使した方法と言えるだけに、必死さが窺えるものではないかと思った。
…いや、実際にはCPU内部にOSのスケジューラをモニタリングする機能を組み込み、より効率的なタスクをOSのスケジューラに渡すというアプローチは、とても正しいやり方だと思う。
複雑化する電力管理
Alder Lakeの電力管理は今までのコアよりも複雑化していると言える。
前述したように、ARMのBig-Littleと同じ、負荷によって使用するコアを切替える事から、その時々の状況をより細かく管理し、最適な状況判断を求める必要があるからだ。
Intelは今回、TDP(熱設消費計電力)というスペックを表記しなくなった。
代わりに「Processor Base Power」と「Maximum Turbo Power」という2つの数値で、その消費電力を表記している。
これによると、Core i9-12900KはProcessor Base Powerは125w、Maximum Turbo Powerは241wと表記している。
241wと聞いて、今までの2倍も消費する? と思われるかも知れないが、そこはちょって待て。
そもそも熱設計消費電力という数値も、消費する電力数値を表記しているというわけではない。あくまでも動作する上で引き上げられたりするクロック周波数などから考えられる電力から発生する熱を放熱できるように設計する指標でしかない。だから過去のCPUもTDP以上の電力を消費しているし、それが顕著になって放熱が間に合わないと判断した時は、動作クロック周波数を下げるというアプローチを採っている。
なので、Processor Base PowerとMaximum Turbo Powerも、従来の呼称を置き換えた者、と考えるとわかりやすい。
Processor Base Powerは、従来のベースクロック時のTDP、Maximum Turbo PowerはTurbo Boost時のTDPと考えるとわかりやすい。
実の所、Maximum Turbo Powerの241wという数値は、第11世代コアの時は250wであり、それよりも引き下げられている。ただ、第12世代はMaximum Turbo Powerとして明確に表記する事で、メーカーにより長時間Maximum Turbo Powerで動作できるようにこの熱設計消費電力で設計して欲しいという指標になっている。
つまり…第12世代であるAlder Lakeの高性能は、結局は大量に消費する電力の上に成り立っている、という言い方もできるわけである。
ARMのBig-Littleと同じ方法論を採ったといっても、ARMほどの省電力性には届いておらず、またAMDの高性能を超える為に大量の電力を消費する仕様になった、という側面があるようである。
メモリとPCIe
Alder Lakeでは、ついにメモリはDDR5に対応する。メモリのデータ転送レートはDDR4の倍になるようで、ライバルのAMDより先行して対応した事になる。
対応するPCIeについても、5.0に対応する。前世代くらいから4.0に対応したばかりなのに、もう5.0である。
ストレージでPCIe5.0に対応するものが出てくれば、PCIe4.0接続よりもさらに高速なアクセスが可能という事になるが、そのデバイスがいつ出てくるか、という問題がある。
また、ビデオカードにしても前世代でようやくPCIe4.0に対応したばかりで、これが5.0に対応してくるとなるとすぐに対応ビデオカードが出てくる可能性は低いのではないかと思われる。
ここにきて、Intelの必死さを感じるというか、AMDよりも先行する、という意思の表れだと思うが、他のデバイスメーカーを置き去りにした感がある。
ま、AMDも次世代では対応すると思われるが、AMDは来年初めに3D V-Cache搭載のZen3+を発表すると目されているが、このZen3+ではまだDDR4、PCIe4.0に留まると考えられる。Zen4が出るまではIntelの後塵を拝する事になるだろうが、問題はその性能比である。
果たしてIntelはここまで先行してAMDとどこまで差を付けられるのか、が気になる所である。
私のメインPC入れ替え計画は、現時点で頓挫している。
GPUの価格に納得がいかないという事が全ての足を引っ張っている状況なのだが、価格はこれ以上安くはならないのではないか、と最近は思っている。
どこかで見切りを付ける必要があるのかな、という半ば諦めの境地にいるのだが、半導体不足が解消されれば、今よりは状況はよくなるのかな、とも期待している。
せめて半導体不足が解消されれば、見えてくるものが変わる可能性があるので、そこを見てから考えたい…と思っていたら、遅くなりすぎるかも知れない。