かつてこんなに需要と供給のバランスが悪かった事があっただろうか?
行き届かないハード
PlayStation5の供給が全く追いついていないように思える。
私の周辺で購入できた人はほとんどいないという状況で、転売屋から購入しようかと悩む人が続出しているのが現状である。
もちろん、私は転売屋から購入しようとする知人を押しとどめているのだが、その知人曰く「10万円で購入できるならそれでもいい」とすら言う始末。
デジタルエディションの価格が39,980円である事を考えると、2倍以上でも買いたいという気持ちを持てる事をある意味スゴイとも思うが、こうした知人がいる状況にあって、入手に関して抽選以外の情報が得られない現状がとても異常に思えてならない。
しかも、その抽選に関しても、不穏な情報も入ってきている。
Amazon.co.jpにて、一部の商品について発送時期が12月上旬でなく、来年以降に延期される事が明らかになったようだ。これはAmazon側の失態で、実際のPS5入手量より多い予約者を受入れた事によって、11月18日に募集した予約の内の一部が来年の入荷分に割り当てられ、年内発送に間に合わなくなったという事のようである。
これにより、Amazonでの今後のPS5の予約は、間違いなく来年発送分という事になり、次回予約は当分行われない事が予想される。
Amazon以外では、現物をいくらか用意して抽選を行う小売店などもあるようだが、それらも十分な供給量とは言い難いように思える。200台に満たない数で抽選が行われたりするようだが、おそらくそれぐらいの数ならあっという間に販売が終了してしまう事は、今の需要からは簡単に予想できる事である。
問題が積み重なった事で
どのように販売ルートを定めたらこうなるのかはわからないが、一部の転売屋では本来売りさばく予定だった地域で販売する事ができなくなった事で、大量に不良在庫を抱えて予定より安い価格で転売を始めたらしい事実も見つかっている。
その“本来売りさばく予定だった地域”というのが中国のようで、今回のPS5が中国国内ではネットに接続する事が出来ず、オンラインでのプレイができない事が問題になったようだ。
だが、ここで更なる問題が発生する。それは、SIEが転売されたPS5の修理等を請け負わないとした事、PS5の初期不良問題が案外深刻化している事が重なった。これにより、購入してももし初期不良だった場合は無償修理はできないばかりか、転売品故に有償修理も危うい状況になったのである。転売されたものと正規に購入したものを見分ける方法は、保証書が箱記載ではなくなった事と、購入証明が必要になった事で判別しているらしい。この辺りはSIEとしては英断だと言える。
これにより、転売価格が下落、10万円を超える価格で売買される予定だったPS5が、6万円前後で転売サイト(オークションやフリマなど含む)に溢れ始めた。
この価格でこのような問題が出ていても、それでもまだ売れるのだからPS5の魅力は凄まじいとしかいいようがない。以前よりも見つけやすくなったとは言え、それでも当初想定されていた通りに転売は進んではいないようである。
製造ラインの取り合い?
おそらく、供給が追いついていない最大の理由は、その半導体の製造ラインの取り合いをしているからと考えられる。
今回のPS5の半導体は、AMDのZen2ベースのAPUをベースにしたものだが、その製造はTSMC(台湾セミコンダクターマニュファクチャリング)で、製造プロセスは7nmである。TSMCの7nmプロセスは、他にもAMDのRyzen 5000シリーズなども賄っているラインだが、その他にもAMDのRadeon 6000シリーズなども7nmプロセスのラインを使用している。また、ライバルであるXbox Series XやSに使用されているAPUもAMDのZen2アーキテクチャを利用したものなので、PS5と同様の生産ラインで製造されている事は容易に想像できる。
あと、AppleのM1に関しても製造プロセスは5nmとより高度なラインを使っているが、この5nmプロセスラインはもともと7nmプロセスラインを流用したものと思われる。
つまり、現時点でTSMCの生産ラインはかなり逼迫した状況で、思ったように主要部品であるコアチップが入手できない事がPS5の製造を遅らせていると考えられる。
もちろん、これだけが理由ではないと思うが、最近は製品が一極集中する傾向が強く、訪れた需要を一気に満たす事がとても難しい時代に突入している。致し方ないのかもしれないが、メーカーはそうした供給の難しさを考えた上での生産スケジュールと販売スケジュールを考える必要がある。
どう考えても、今回のSIEの販売計画はそのあたりを考慮していない。いや、おそらくライバルであるMicrosoftのXbox Series XやSも似たようなものかもしれない。
ちなみに…AppleのM1チップの供給も間に合っておらず、韓国Samsungにその生産を依頼する話が出ているという情報もある。Samsungで5nmの製造プロセスが確立できているのかどうかは知らないが、安定品質を考えるとAppleのこのやり方はちょっと無謀なような気がしてならないが、背に腹は代えられないという事だろう。
PS5の供給に関しては、私の予想として来年の第1四半期くらいまではどうにもならないと思っている。
私としてはそれまでに欲しいと思えるタイトルが発売される事もないだろうから、待つ事は問題はないが、それまでにPS5が要求する周辺機器の性能が向上する事を期待したい。
まともに4K HDR 120fpsを出力できるモニタが出てこない事にはPS5の性能を引き出す事すらできないのだから。