完全ではないにしても、動作する環境がもう揃い始めた。
ARMでもRosetta2で
先週から、M1搭載のMacの話題が各所で言われていて、その都度反応している私だが、もちろん私がそれに注目しているからこそ、このBlogでもそうした話題が多くなっている。
私の一番の関心どころは、やはりMacでWindowsが動作するのか、というポイント。
私がIntelコアのMacBook Pro 13インチを購入したのも、このMacでWindowsが動作する環境が作れるからであり、Apple Silicon搭載Macを待つか迷っていたのも、Windowsの動作状況が大きく影響していたからだ。
だが、私のその悩みも実は杞憂だったかもしれない。
というのも、今の時点でM1搭載MacでWindows環境が実現するかもしれない道が見え始めたからだ。
この動画を見るとわかるが「CrossOver 20」というWindowsのエミュレーションソフトを使用する事でWindowsのアプリケーションがエミュレートされて動作している。
具体的な動作状況としては、32bitのIntelコアWindows向けバイナリを動かす際は、Wine 5.0(LinuxやMacでWindowsアプリをエミュレートするソフトウェア)ベースのCrossOverで32bitから64bitにブリッジして、さらにRosetta 2を介して動作する…そんなイメージである。
つまり、M1チップ上でエミュレーションにエミュレーションを動作させて動かしている、そんな感じである。
それにも関わらず、これだけ動かせている事にまず驚きである。
課題も多い
ただ、DirectX11が関与するものは動作しない等、Windowsでは当たり前に動作するものが結構動かないなど課題もまだまだ多いのも事実で、これらが一気に問題解決するかというと、そう簡単な事ではない事も予想できる。
米Parallels社も、意欲的に取り組むだろうとは思うが、M1搭載Macでx86アーキテクチャのプログラムをスムーズに動作させるのは、まだまだ試行錯誤が必要だろうと考えられる。
ただ、それでも今の時点でこれだけのものが動いているという事実は間違いないわけで、Rosetta2のトランスコードの処理能力はかなり高いものと考えられる。
これは私の予想ではあるが、来年のそう遅くない時期には、M1搭載MacでWindows環境はそれなりに現実的になってくるのではないかと思える。やはりDirectX11、DirectX12あたりの動作がそのカギを握っているのではないかと思うが、米Parallels社あたりは、この問題に対して何かしら突破口を切り開いてくるものと思っている。
ARM版Windows10
そしてここに来て、Appleの幹部からある事実が語られた。
M1搭載Macで、ARM版Windows10を動作させる事は技術的に可能であり、それを実現するのはMicrosoft次第だ、というのである。
もともと、この可能性はいろいろと噂されており、ARMベースのM1チップであれば、ARM版Windows10が動作するのではないかという予測は言われていた。
しかし、ARM版Windows10はプリインストール用にベンダーに対してライセンスするだけで、個人が自由にインストールする製品やライセンスを提供していないので、この時点では不可能だ、というだけが問題視されていた。
この件に関して、Appleの幹部がコメントを出した事は間違いは無いが、残念ながらMicrosoftからは公式・非公式問わずコメントが一切出ていない。
Appleが、一定のWindowsアプリを動作させたいニーズに注目している事実はコメントからも明らかになったが、当のMicrosoftからはコメントが出ていない以上、このARM版Windows10の話はこれ以上進展がないのも事実である。
Microsoftからしてみれば、MicrosoftのOffice365等はMac版も提供しているし、しかもM1搭載Macでネイティブに動作するOffice365も用意されているし、その他のMicrosoft製ソフトも徐々にネイティブアプリを提供していけば、何もARM版Windows10を供給しなくてもMicrosoft自身には何ら問題はないワケで、その必要性に疑問を感じているのかもしれない。
だが、世の中全てがMicrosoftと同じ対応をしているわけではないので、ニーズとしてWindowsがM1版Macで完全動作する状況が望まれているのも事実だ。私だってM1搭載MacでWindows10が完全動作するなら今後乗り換え時に悩まずに済むわけで、好ましい状況といえる。
とにかく今はMicrosoftの判断が全てではないかと思うが、同時にRosetta2経由含めてWindows10がM1搭載Macで動作する状況を実現できる米Parallels社やその他企業の動きに注目していきたい。