最高処理性能を持つAPUが登場した。
Zen4+RDNA3+AI
AMDがZen4アーキテクチャCPUとRDNA3アーキテクチャGPUを組み合わせたモバイル向けプロセッサ「Ryzen 7040U」シリーズを発表した。
SKUは4種用意され、それぞれRyzen7 7840U、Ryzen5 7640U、Ryzen5 7540U、Ryzen3 7440Uとなる。
最上位の7840Uには8コア/16スレッド、ブーストクロック5.1GHzというスペックが盛り込まれ、Radeon 700MシリーズのGPUを組み合わせる。GPUも最大2.7GHz駆動させる事ができ、ピーク性能を引き上げている。
また、Ryzen 7 7840UとRyzen 5 7640UにはAI専用エンジンとしてRyzen AIなるコアを搭載する。これはXDNAアーキテクチャにより通常のCPU処理の負荷を抑えつつ、高い処理性能と電力効率でAI処理を可能にするもので、NPU搭載PC向けにWindows11が提供する「Studio Effects Pack」にも対応、Webカメラ映像の背景ぼかしや音声のノイズ除去といったAI機能に活用可能になっている。
このAIユニットに関しては、Intelも近々で発表するCPUに搭載するという話があり、今後x86系コアでもこうしたAIユニットを搭載してくる事は間違いなさそうである。
Apple M2を追撃
処理性能に関しては、AMDによるとクラス最高の処理能力を実現したとしており、Ryzen 7 7840UとCore i7-1360Pを比較した場合、Application Performanceのテストでは129~228%、フルHDゲームプレイを想定したテストでは130~239%の性能を発揮するという。
またApplication Performanceについては、Apple M2と比較しても105~175%の結果のようで、Apple Silicon越えの性能を持つようである。
Ryzen 7040Uシリーズの性能レンジは、基本的にはモバイルCPUの領域なので、常に省電力と性能という常に相反する指標の中で効率を出さないと評価にならない。
近年はその効率を出すためにAIユニットを搭載するケースが多く、CPUやGPUの各種アクセラレーションの拡張や、ディスプレイコントローラの省電力化、AI処理向けの新しい命令とスループット向上などの処理をAI処理にして性能の底上げを狙っているケースが多い様に思う。
というか、この流れを作ったのはAppleだが、いよいよ他メーカーもその領域に追いついた、といったところだろうか。
ユニファイドメモリにどう食いつくか
今回のRyzen 7040Uシリーズは、プロセッサレベルで随分とApple Siliconに近づいたとは言えるが、一つ大きな違いがある。
それはメインメモリがユニファイドメモリになっていない、という事である。
正確に言うと、L1、L2、L3キャッシュはRyzen 7040Uシリーズは既にユニファイド化してコア内に実装しているものの、メインメモリに関しては外部のメモリモジュールを利用しており、この部分がApple Siliconと大きく異なる部分になっている。
Apple Siliconはメインメモリそのものがユニファイドメモリになっており、コアと同じダイにメモリを搭載しているため、メモリアクセスは非常に高速だが、搭載容量の追加ができず、拡張性に劣る部分がある。
どちらを採るかになるわけだが、純粋に性能だけを追従すると、ユニファイドメモリの性能は無視できない。ただ、サーバ運用を視野にいれると、大容量のメモリが必要になるので、ユニファイドメモリの選択肢はほぼなくなるので、おそらくAMDにしても、Intelにしても、ユニファイドメモリ化を進めるとは考えにくい。
逆に言えば、このユニファイドメモリを採用していなくても性能的にApple Siliconと並ぶ事さえできれば、AMDもIntelも目的は達成出来る、と考えているかもしれない。
これからのPCの根底を支える部分が変わりつつある。
デスクトップPCのコアにもAIユニットは搭載されていくだろうが、それが何時ぐらいからになるかはわからない。
IntelもしくはAMDのどちらかが搭載してくれば、普及は加速するだろうが、さて、それはいつの話になるだろうか?