電脳コイルは間違いなく今期最高のアニメだろうと思う。
どの当たりが今期最高なのかというと、もちろんそのストーリーも然る事ながら、作り上げた世界観のすばらしさに最高という賛辞を与えたい。
電脳空間を扱った作品は多いが、電脳空間の表現をもっともクールに再現しているのは、間違いなく攻殻機動隊だと私は思っている。
だが、電脳空間をもっともローカルに…もっとベタな表現をするなら、一般生活っぽく表現したのは、間違いなく電脳コイルだ。
デジタルデバイスによるネット情報の視覚化は、今現在でも研究されている分野の事だし、世の中にウェアラブルPC(身につけるPC)という言葉があるのも事実だ。
電脳コイルでいうところの“メガネ”は、まさにウェアラブルPCの一つの形であり、そこから生み出される電脳デバイスは、実現可能不可能を度外視しても近未来に実現してほしいと思える夢と言える(空間に表示される操作可能なキーボード等)。
そうしたデバイスをもってして電脳コイルの世界は成り立っていて、そこから電脳空間に生きる未知の生命にストーリーは触れている。
この無から生み出された生命体というテーマは、やはり攻殻機動隊でも扱われていて、攻殻機動隊では“人形使い”、電脳コイルでは“ミチコさん”と言われている。
電脳コイルでの名称が“ミチコさん”という非常にローカルな呼び方なところに、電脳コイルのローカルさがあるわけだが、言わんとしている事は攻殻機動隊と同じ。
ただ、その存在の扱い方はかなり違う。
人形使いはネットそのものを意味するところが大きかったが、ミチコさんはどちらかというと学校の怪談に出でくるお化けのような意味で子供をアッチの世界(電脳世界)に連れ去っていく存在として扱われている。
つまり、電脳コイルという作品は、電脳世界という未来の夢のような世界と、昔からある怪談の接点に存在する、と言っても過言ではないと私は思っている。
電脳コイルは確かに面白いのだが、作品として面白い=世間に認められるという事ではない。
こういった作品というのは、放送する時に対象となる年齢層を想定し、最適なチャンネルと時間帯を決定する。
私が問題とするのは、電脳コイルの視聴対象と考えられている年齢層。
NHKが想定している年齢層は、おそらく小学生なのだが…この設定と世界観の難しさはどう見ても小学生レベルの話ではない。
おそらく中学生だってアヤシイ。
どう考えてもおっきいお兄ちゃんとかなのだが…
NHKはナニをどう考えて番組の構成を狙ったのだろうか?
おそらくそれが電脳コイル最大の謎である。
ただ、作品の面白さに気がついた人たちは、そろそろそうした想定される年齢層という枠を飛び越えてエヴァンジェリスト(伝導者)になっていく。
本当の意味で面白い作品というのは、作品が勝手に一人歩きを始める。
電脳コイルは間違いなく今一人歩きを始めつつある。
あとはエヴァンジェリスト達がどう伝播させていくかだ。
派手さに欠ける作風を、興味が沸くように伝播させる。
言っているよりずっと難しい事だが、興味が沸いた人が一度でも作品を見れば、その根底に流れる面白さを理解してくれるハズだ。
この面白さは、もっと普及すべきだと思う。
Japanimationとして、世界的にも理解してもらえる作品だと、私は信じて疑わない。