ロイター通信によると12月7日、IntelがLarrabee設計を基盤としたグラフィックスチップを立ち上げる計画を破棄したと報じた。
これはIntelの広報担当者が12月6日に明らかにした話のようで、ほぼ間違いのない話のようである。
計画破棄の理由はLarrabeeのシリコンチップとソフトの開発が現時点で期待していた段階に達していないためらしい。要するに今の段階で勝負をかけても、NVIDIAのFermiやAMDのRadeonHD5800シリーズを凌駕する性能を叩き出せないという事なのかもしれない。
2009年9月23日に行われたIDF 2009にて実機デモが行われた際には6+8の補助電源を必要とするPCI Express接続の拡張カードの姿だったワケだが、おそらくその体裁でも性能を叩き出すには電力が足りなかったのかもしれない。
少なくともLarrabeeはNVIDIAとAMDのGPUをアタマ一つ以上、上のランクで性能を示さねば意味がないと私は思っている。
おそらくIntel自身もそう思っているだろうし、その為に多くのリソースを投入している。
またそれだけの予算をつぎ込んでいるワケであり、その調査・開発費用は2008年第2四半期だけで14億7,000万ドルと言われている。この金額は同じ期間のAMDの売上高を超える額であり、今回の計画の破棄はIntelに相当な損失を出したに違いない。
損失を出しても、より競争力のある製品を出さねばならないというIntelの判断は多分間違っていないだろうし、この計画の破棄によって生まれる新たな計画によって、PC界全体が大きく変わっていく事になるのは、私が言うまでもない近い未来の話である。
このLarrabeeの後退によって一つハッキリした事がある。
それは今年の初めの方にBlogにも書いたのだが、SCEが次期PlayStation4にLarrabeeを検討しているという事が白紙になったという事。
まぁ、この話そのものが眉唾物であったとも言えるが、SCEはそれだけCellの開発に問題を感じていた時期がある。
PS3は、今でこそ価格を下げた結果売れに売れまくり、ソフトの動向もそれなりに改善されているが、当時は日本市場ですらXbox360には絶対に勝てないぐらいの差が付いていた。
そこから生まれたPlayStation4構想においてLarrabeeを投入するという話は、その時に聞いた段階ではまんざら嘘ではないような話に聞こえた。
しかし、このLarrabeeの後退によってPlayStation4への搭載はほぼ間違いなくあり得ない話となった。
消費電力の問題とソフト開発の面でSCEは同じ轍を踏めない以上、PlayStation4のコアはCell拡張版になる可能性が高い。
Cellにはまだまだ可能性があると信じている私からすれば、安心する話である。
Cellもそうだが、並列コアというのはまだまだ未知数な部分が多い。
それはソフト開発という部分の話であり、現在のPS3を見ていればよく分かる話である。
AMDにしてもFusionというGPU混載CPUの立ち上げに随分と慎重のように見えるし、そういう意味ではCellはよく完成されたコアだと思う。
PS3は今ようやく動きが滑らかになってきたワケで、このソフト開発のリソースを次期PS4に持ち越さなくてどうする、と思ったりする。
ただ、PS4にCell拡張版を採用するとすると、PS4はPS3の登場の時から比べると性能パフォーマンスに驚きは少ないかもしれない。
PS2、PS3とそれぞれが演算性能を10倍以上示してきたワケだか、PS4はそんな感じにはならないだろう。
何はともあれ、コア開発の雄であるIntelですら、計画を破棄する分野の事。
慎重にかつ正確にその先のコアを作り上げて欲しいものである。
情報ソース:IT Media ニュース
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0912/07/news041.html