AMDが新たなGPUドライバを提供開始。
Radeon Boost
AMDがRadeon GPU向けの新ドライバ「Radeon Software Adrenaline 2020 Edition」を発表、提供開始した。
今回のドライバは大型アップデートとなるもので、多くの機能追加及び拡張が行われており、中でもゲームのレンダリング解像度を動的に上下させる事でフレームレートを向上させるという「Radeon Boost」が目玉機能とされている。
この動的な解像度の変更というのは、状況に応じてゲームのレンダリング解像度をネイティブ解像度よりも低いサイズに移行させてフレームレートを稼ぐというもので、要するに人間の目で追えない動的な部分でレンダリング解像度を下げても、見た目的には解像度が落ちているように見えず、それでいてフレームレートだけは稼げているので動きには追従できる、という機能を指す。
似たような機能は、既に一部のPCゲームやコンシューマ機のタイトルで実装されているが、それらはシーンに拘わらず一貫したフレームレートを実現する事を目的としていて、ゲーム中にシステム負荷が高くなったときに負荷を軽減させる為に解像度を低下させる、という使い方が一般的である。
しかし「Radeon Boost」はそれらとは異なる。機能が働くトリガーが「プレイヤーの操作」であり、その操作に応じて解像度を変動させる。だから、プレイヤーの視覚的動作が遅いとき、或いは止まっている時は、高解像度でレンダリングを行い、高画質でグラフィック描画する。で、いざプレイヤーが大きく移動したり視点を激しく動かした時に、その動作を検知して「Radeon Boost」が働き、レンダリング解像度を低下させ、フレームレートを維持、向上させ、動きに追従できるようにする。
人間の目は、動いているものを識別する際には、高解像度なものを細かく識別はしていない。どちらかというと、動きには敏感に反応するが、その時にはモノの細かさよりもモノの動きを重視して識別する。
「Radeon Boost」は、まさに人の目の特性を利用してGPU負荷を使い分ける機能と言える。
動的に変動
このRadeon Boostだが、常に一律に解像度を下げるわけではない。
ゆっくり視点を動かした時はネイティブ解像度の80%、素早く視点が動いたときには50%というように、動的に変動させてレンダリング解像度を低下させる。
なので、プレイヤーからしてみれば、意識しないところでGPU負荷を下げつつ高解像度でのプレイを可能にする機能と言える。
ただ、問題もある。
それはこの機能のトリガーが「プレイヤーの操作」であるため、全てのゲームに有効にできる機能ではない、という事である。
現時点ではOverwatch、PUBG、Borderlands 3、Shadow of the Tomb Raider、Rise of the Tomb Raider、Destiny 2、GTA V、Call of Duty: WW2の7タイトルで機能が有効にできるが、それ以外に関しては今後サポートタイトルを増やしていく、とAMDは説明している。
このRadeon Boostに対応するGPUは、Radeon RX 400シリーズ(Polaris)以降で、OSはWindows7/10になる。
他にもいろいろ
また、Radeon GPU搭載のPCをホストとして別のデバイスからゲームをプレイできる「AMD Link」も機能が拡張される。最大50Mbpsまでの広帯域ストリーミングに対応し、x265エンコード対応による帯域幅の節約やインスタントGIF作成機能などがサポートされる。
また、この機能拡張と同時にスマホ向けAMD Linkアプリが失神され、インターネット経由でのストリーミングプレイが可能になった。
ちなみに前述のRadeon Boostは、AMD Linkによるストリーミング時でも動作するという。
さらに、整数倍スケーリングが新たに対応した。
NVIDIAなどでは既に実装されている機能だが、バイリニアやバイキュービックなどの従来のアルゴリズムでは、レトロゲームなどをアップスケーリング表示した際にぼやけた見た目になってしまうが、整数倍スケーリングではクッキリした見た目になる。レトロゲームをプレイする人にとってはありがたい機能である。ちなみに対応GPUはGCNベースのRadeonになる。
また、機械学習ベースの画像処理フィルタ「DirectML Media Filter」も追加される。この事で静止画や動画でノイズ除去フィルタやアップスケーリングフィルタが利用可能になる。対応GPUはVega以降のGPUとWindows10 1903以降になる。
まだいろいろな機能追加があるにはあるが、細かい仕様は公式サイトで確認いただきたい。
恐くて入れられない
ただ、私としてはこの新しいドライバはまだ恐くて入れられない。
何が問題かというと、Fluid Motionである。
今回のドライバを入れる事によって、RadeonというGPU全てを対象にFluid Motionが消える可能性が考えられる。
前述の機械学習ベースの画像処理フィルタが追加になったのは良いが、それをもってFluid Motionが使えなくなったでは、機能代替ができない。
実際、入れてみない事には分からないのだが、GCNベースのGPUだからといって、これから先も安定してFluid Motionが使えるとは限らない。
なので、今しばらくは新しいドライバを入れずに使用し、ネットで情報を集めてみようと思う。
というか…AMDはRadeon ソフトウェアの機能追加はユーザーからの要望に基づいているらしいので、RDNAアーキテクチャユーザーももっと声を大にしてFluid Motionを要望してくれるといいのだが。
この先、どうなるのだろう…。