Ryzen 5000シリーズは、チップセットのBIOSアップデートで更なる進化を遂げる(らしい)…。
より細かな設定を
AMDがRyzen 5000シリーズに対応したAMD 500/400シリーズのマザーボード向けに自動クロック/電圧調整技術である「Precision Boost Overdrive 2」(以下PBO2と略)に対応したアップデート「AGESA 1.1.8.0」を配信開始した。各マザーボードメーカーは12月よりBIOS更新にて対応するとみられる。
このPBOは、今までのRyzenにも搭載してきた技術で、プロセッサの温度やVRM電流、パッケージ全体の電力に応じてVRMが供給できる電力容量限界を引き上げ、電圧とクロックを高めてプロセッサの性能を引き出す技術である。
しかし、前バージョンのPBOでは、軽負荷状態時の電圧はそのままで、1つのコアに高負荷が集中している場合、そのコアの電圧のクロックを高めても他の軽負荷状態の消費電力は変わらなかった。Ryzenは複数のコアが1つのパッケージ電力と温度キャパシティを共有している為、軽負荷状態のコアもパッケージ電力と温度キャパシティを一定値消費していて、高負荷コアと食い合っていた。
そこで、PBO2はこの軽負荷状態のコア電圧を下げる「アンダーボルテージ」をサポートし、軽負荷状態のコア消費電力を削減すると共に、高負荷が集中しているコアに余った電力と温度キャパシティを回す事を可能にした。
これらの機能は、最近のCPUでは相応の機能が搭載はされているのだが、PBO2はより細かい調整が可能になった事で、よりアグレッシブに性能を引き上げる事ができるようになった。
ある意味、Ryzenは設定の調整でより効率の良い動作が可能だという事でもあり、使用者の状況に応じてカスタマイズできる環境がある、という事でもある。
考え方の違い
ただ、こうした性能向上の幅がまだある、という事をわかっていて、標準でどうしてその設定にしていないか? という疑問は残る。
おそらく、使用する冷却パーツによって設定が変わったり、或いはPC全体の冷却性能に依存したりと、状況と環境によって変動があるためだとは思うが、それを考慮してもAMDはセッティングが甘いような気がしてならない。
RyzenやRadeonでは、ベース電圧を少し下げた方がBoostクロックが架かりやすくなって性能が伸びる、といったケースも過去から言われている。
この場合、その設定したベース電圧が本当に正しかったのか? という疑問が残るわけで、個人的には製品に対して詰めが甘いのではないかとすら思える。
おそらく、この辺りは半導体の歩留りの関係で、指定電圧ギリギリになってしまう製品を救済する関係から、ベース電圧を若干高めにしている可能性もあるのだが、私の知る範囲では電圧が足りなくてフリーズした、などという話は聞いたことがない。
やはり、安全性第一という側面が、性能をわずかに落とす原因になっているように思えてならない。考え方の違いなので、その判断は難しいものと言えるかも知れない。
変わる半導体
ただ、私は現行のRyzenにしても、Intelコアにしても、ここ数年先は変わらずともそのさらに先は、今とは違う方向に進んでいく可能性を考えている。
何はともあれ、Apple Silicon M1の存在が圧倒的で、これにどう対抗していくかがx86コアの一つの定めになるような気がしている。
今のままだと、Apple Siliconにただやられるだけの状況になってしまう。
また、一部の調査ではx86コアは決して性能では負けていないという話もあるが、実運用でM1に届いていないのは事実だし、発熱でも負けている事は紛れもない事実である。
Appleは何だかんだと一つの答えを出した事は間違いが無く、今度はAMDとIntelがAppleに対しての対抗策を打ち出す必要があるだろう。