Intel Alder Lakeに対抗するAMDの次期主力CPUはIPC 15%向上。
新機能、盛りだくさん
AMDがついに次期主力CPUであるRyzen 7000シリーズを発表した。
TSMCの5nmプロセスで製造されるCPUで、CPUソケットはLGA1718に変更、DDR5とPCI Express5.0に対応し、ほぼ全ての仕様をアップデートした。
ソケットが新しくなったので、従来との互換性はまずないのだが、唯一CPUクーラーだけはSocket AM4用のソリューションを使い回せるという。
Ryzen 7000シリーズに投入されるアーキテクチャは、Zen4アーキテクチャとなり、今秋にに投入される計画で、これはIntelが今年後半に投入予定としている「Raptor Lake」と競合する製品になる。
Zen4で構成されるRyzen 7000シリーズの概要としては、以下になる。
・5nm製造プロセスで、内蔵されるCCDは2つ
・I/Oダイは6nm製造プロセスでCCDとチップレットで繋がる
・I/OにRDNA2のGPUが統合されている
・I/O関連は高速化されている
・メモリはDDR5に対応
・24レーンのPCI Express 5.0に対応
・CPUソケットはLGA1718で、Socket AM5と呼称される
・最大TDPは170Wに対応可能な設計
・Socket AM4のCPUクーラーと互換性あり
・チップセットはX670E、X670、B650と3つのSKUが用意される
まだ謎が多い
見た目で大きな変化は、やはりSocket AM5という変化で、従来のCPU側にピンがあるスタイルからマザーボード側にピンのあるスタイルへと変更となる。
ピン数もAM4の1,331ピンからAM5は1,718ピンと増えており、PCI Expressのレーン数やUSBポート数、ディスプレイ出力のポートなどが増えるというメリットが予想される。
またZen4は5nm製造のCCDと6nm製造のIOD(I/Oダイ)で構成されるが、これはZen3の時までだと7nm製造のCCDと14nm製造のIODだったため、IODに関しては大きな変化が予想される。
1つのCCDにいくつのZen4コアが搭載されるのかはまだ非公開だが、デモでは16コア版が使われているとの事なので、少なくとも16コア版が存在している事は間違いない。
もし従来と同等なら1つのCCDに8コアが搭載され、2CCDで16コアという事になるが、噂では24コア製品もあるのではないかと言われていたので、1つのCCDに12コアを搭載できるように設計していたとすれば、デモ版は1CCDあたり8コア(4コアをDisableにしている)という形で2CCDとして動作させている可能性もある。
また、搭載されるキャッシュは強化されていて、L2キャッシュが1MBとZen3から2倍に増加している。これにより、Zen3からのIPC向上幅は15%になるという。
今の時点では3D V-Cacheのような飛び道具は使っていないようだが、この技術を使ったコアが登場すると、まだまだキャッシュ容量を増大させたモデルが登場するかもしれない。
5GHzが当たり前に
デスクトップPC向けとしてターボブーストが5GHzを越えるというのも、Zen4の特徴とも言える。
デモでは16コアのRyzen 7000が5.5GHzでずっと動作している様子が公開されており、TDPが170wと引き上げられた事も合わせてより高クロック動作するCPUに仕上がっているようだ。
ただ…個人的に言えば、もうTDPをこれ以上引き上げられるのは遠慮したいところだが、AMDもAlder Lakeのなりふり構わない高性能化に追従するために、TDPを引き上げてでも性能を出してきているのかも知れない。
また、Zen4では新命令セットに対応している事が明らかにされているのだが、どのような命令に対応したのかまでは明らかにされていない。
ライバルのIntelはマシンラーニングやディープラーニングを利用した処理速度を高める命令セットが追加されているので、AMDも似たような対応を採ったという事かもしれない。これについては今後明らかになるとの事なので、情報待ちとなる。
GPUなし版もある?
次期Ryzen 7000シリーズの最大の特徴はCPUにGPUが内蔵されるAPUとして登場する、という噂が以前から出ていた。
今回の発表でも、前述したようにGPUが統合されたものとして発表されているのだが、まだ確実にGPUが統合されたCPUだけが投入される、という事ではないようだ。
今回のZen4は、IOD(I/Oダイ)にGPUが統合されるので、GPUなしのIODを製造するとGPUなしのRyzen 7000シリーズを製造する事も可能という形になっている。
統合されるGPUはRDNA2アーキテクチャのもので、Ryzen 5000シリーズまでのAPUの性能と比較して2倍のGPU能力になると言われている。
問題は、RDNA2のユニットがどれぐらい搭載されるか、という事だが、ノートPC向けのRyzen 6000シリーズでは最大で12CUが統合されているという事を考えると、同等かそれ以下、という事になるのではないかと予想される。もっとも情報源は全くなく、IODが14nmから6nmに微細化した事で、より多くのユニットが搭載されるようになるのかもしれない。
現時点で明らかになっているのは、IOD内蔵のGPUを利用した場合、ディスプレイ出力が最大4ポートになり、HDMI2.1もしくはDisplayPort2.0に対応したポートを実装できる、という事。4K+HDRが当たり前になる今後の情勢で考えれば、それらには完全対応する形になるという事である。
また、このIODには新しい省電力機能が搭載されているという事のようだが、これに関してもこれ以上の情報はまだない。
他にも情報は多岐にわたるが、そういった事は専門の情報サイトを見てもらいたい。
impress PC Watch
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1411114.html
非常に期待できる次期Ryzenだが、私の思うところは、これでまた価格が引き上げられるのかな、という事である。
過去には、価格据え置きで高性能化、というのが当たり前だった時代があるが、最近は高性能化するのは良いとしても価格はうなぎ登りに上がって言ってしまっている。
高性能化しているのだから価格が上昇するのは当たり前だ、という人もいるかもしれないが、セキュリティの問題や普及の問題で過去のハードウェアはどんどん使いづらくなってしまうので、ただコストが引き上げられるだけというのは、消費者としては納得しづらいところがある。
できれば、時代の変化と共にテクノロジーが底上げされ、世代が変わるというスタイルをどこかで見直して欲しいところである。
さて…私のメインPCはいつになったら更新できるのやら…。