リサは言った。世界最速のゲーミングCPUだと。
Intelを超えるという事か?
米国で開幕するCES 2023の全日基調講演で、AMDのCEOリサ・スー氏がRyzen 7000シリーズに3D V-Cacheを積層した「Ryzen 7000X3D」シリーズを発表した。提供開始は2月予定で、価格は未定との事だが、情報はまもなく出てくるのではないかと予想される。
TSMCの3Dダイスタッキング技術を利用して、SRAMをRyzen 7000シリーズのコアに三次元積層したもので、通常版のRyzen 7000シリーズと比べてL3キャッシュが64MB増量されている。
このキャッシュメモリ増量という事が、性能にどれだけの影響を与えるか、という事については、Ryzen 5000シリーズの3D V-Cache搭載版である「Ryzen7 5800X3D」の性能を見てみれば大凡検討は付くだろう。
キャッシュにデータを一時格納する事で、それらのデータを再利用するケースが多いアプリケーションであれば、その速度は爆発的に向上する、という事は、既に証明されている。
AMDは、キャッシュを増量させる事でIntelの牙城を崩そうとしているワケだが、Intel第13世代もまた、第12世代よりもキャッシュ量が増やされているので、Intelの第12世代コアの時とは単純に同じ結果になる、とは言えないだろう。
だが、それでもこの3D V-Cache技術が特定の条件の時に性能を大きく向上させる事は間違いない。
今度は最上位モデルも
今回のRyzen 7000シリーズの3D V-Cache搭載モデルは、16コア/32スレッドの最上位版であるRyzen9 7950X3Dが用意されたのは嬉しい誤算であった。
逆に6コア12スレッドのRyzen5には3D V-Cache版が用意されておらず、3D-V-CacheはミドルハイクラスのCPUのみのオプションという位置付けにしているのかもしれない。
だが、個人的に言わせて貰えば、Ryzen5にこそこの3D V-Cacheモデルが必要なのではないかと。IntelのミドルレンジクラスがEコアを搭載した事で、Core i5が実質上有効な選択肢となった事に対し、有効な対抗手段が用意されていない事が問題なのであり、AMDはIntelのシェアを奪いたいなら、Ryzen5にこそ、キャッシュ増量版を用意すべきだと思う。
ただ…それならより上位のCPUを買えば良い、という判断にもなるわけで、ここらへんは価格設定によって何が正解かが変わってくる話かもしれない。
私的に…
まぁ、もともと3D V-Cache搭載のCPUが年明けに出てくるという噂は知っていて、その上で年末にRyzen7 7700Xを購入しているので、個人的には別段今回の発表を驚いているわけではないのだが、2月に上位版CPUとしてRyzen7 7800X3Dが登場するというのは、ちょっと微妙な感じがしないでもない。
どれぐらいのパフォーマンスの差があるのかという事については興味はあるが、ちょっと気になるのはTDPが120wと設定されているところである。
7700Xは105wだったが、これを120wにしなければならないのはもちろんキャッシュメモリが増えたからに他ならない。
だが、もしRyzen7 5800X3Dと同じように、ダイの上の密度が高くなったことでOCができない仕様になっていたならば、キャッシュ性能のみでその性能を出してくるコアだという言い方ができてしまう。
7700XもZen3から比べてキャッシュ容量は増量されている。その上での性能である。そして今回は3D V-Cache搭載型が登場したとして、以前ほどキャッシュ容量での性能向上幅は期待できるものなのだろうか?
一応AMD公式の見解では性能はさらに向上しているとはされているが、果たして実際にはどうなのか?
とても気になるところである。
ま、仮に性能が向上していたとして、価格的に見合うものなのか、また消費電力的に受け入れられるのかはわからない。
キャッシュ増量による性能向上は、効果がある場合とそうでない場合があるので、最終的な性能指標が見えてこないと何とも言えないと思っている。
というわけで、思ったより早い段階で3D V-Cache搭載のRyzen 7000シリーズが発表された。
私の環境ではCPU交換(とBIOS更新)だけで乗り換える事はできるが、果たしてその性能はIntelに一石投じるものになっているのか?
情報解禁を待ちたい。