Intelの意地は見えたが、使う気になれない残念仕様。
やはり限界なのかもしれない
Rocket Lake-Sが発売となった事は当Blogでも記事にしたが、そのベンチマークを実施した動画が公開されたので、それを気長に見た。
ハードウェアの詳細は以前の記事や技術系サイトに譲るが、ベンチマーク動画を見て思った事を書いてみたい。
今回のRocket Lake-Sは、10nm世代であるIce LakeのWillow Coveアーキテクチャを14nmプロセス製造のままバックポートしたものだという。
ただ、Intelとしては単にバックポートしたという意味合いでWillow Coveの14nm版とされたくないのか、新たにCypress Coveアーキテクチャという名称にしてお触れを出しているようで、IntelとしてはWillow Coveは10nmプロセス、Cypress Coveは14nmという棲み分けをしているようである。
この結果、デスクトップ版CPUとしては、IPCは格段に向上しているのだが、IPCの向上の為にいろいろとトランジスタを占有したのか、内蔵する最大コア数が前世代の10コアから8コアへと減少せざるを得ない構成になったようだ。
AMDのRyzen9には、Ryzen9 5900Xという12コア24スレッド製品が存在するので、Intelとしても10コア20スレッドの製品を投入したかったのだろうが、14nmではもうCPU基板ギリギリまでシリコンが場所を取っているようで、10コア搭載する事ができなかったというのが実情のようである。
結果、前世代では最大10コアあったものが、Rocket Lake-Sでは最大8コアという事になるので、マルチスレッド性能では一部前世代に性能が届かない、という事もあるようである。
ベンチマーク
で、動画で語られたベンチマークなどを見ると、IPCはRyzenを超えたようで、Intelの意地が垣間見れた。
但し、マルチスレッドの性能となると、Ryzenがやはり強いようで、最大8コアのRocket Lake-Sでは勝てないという側面も見えた。
このRocket Lake-Sの性能向上を支えているのは、どう考えてもブースト機能によって支えられていると言っても過言ではないように思える。
Rocket Lake-SのCore i9のみに、Thermal Velocity Boostという機能が搭載されていたり、Core i9-11900KとCore i9-11900KFのみに新たなブースト機能である「Adaptive Boost Technology」といった、特定の条件でクロックを下げない機能を搭載しているなど、もう力業で処理能力を向上する機能を満載してきているようである。
これらの新たに搭載された機能などを駆使した結果、とりあえずRyzen9 5900Xと同等あるいはそれ以上の性能は示したようだが、問題はその時の消費電力である。
最高性能を引き出すために、電力消費を無制限にする必要がある為か、そのハイピッチに動作している時の消費電力が400w近くなるという状態。
対してRyzen9 5900Xは同条件で250wを下回る結果である。どう考えてもワットパフォーマンスでは比較にならない、というのが、Rocket Lake-Sと言えるかも知れない。
本命はCore i7-11700K?
この結果から、正直私は今回の第11世代CoreであるRocket Lake-Sは購入対象外と判断した。
もちろん最初から購入する気はなかっただろ? と言われるかも知れないが、現時点でRyzen 5000シリーズが購入できないとなると、選択肢の一つとしてIntelに流れるという方向性は誰もが考える結果でもある。
ただ、この消費電力を見るとどう考えてもIntelに流れたくない、と思わざるを得ない。
同じ性能かもし仮にわずかに劣るとしても、これより圧倒的に消費電力の小さいRyzen 5000シリーズにする方が、これから先のPCライフは安定する。
ちょっとしたGPUと合わせて使うには、1000wの電源が必要です、というのは、もはや普通とは言い切れない事態である。
なので、私の判断としてはRyzen 5000シリーズが買えるようになるまで待つか、その待ち時間によってはもう次の世代の登場までPC更新を控えるか、という答えしかない。
もしどうしても今PCの更新が必要、という場合なら、Intelの上位CPUではなく、その一つ下になるCore i7-11700Kを選択するという答えに行き着くかも知れない。
おそらく性能としてはRyzen9 5900Xには勝てないだろうが、Ryzen 5800Xといい勝負になるかもしれないし、Ryzen7 5700Xよりは性能は上にくる可能性は高い。
また、Core i9-11900Kよりはずっと表皮電力も低いだろう。そう考えれば、Core i7-11700KはベストバランスなミドルハイCPUと言えるかも知れない。
という事で、今現在ハイエンドPCが欲しいという人は、この消費電力を相当な覚悟を以て受け入れる覚悟が必要だろう。
もちろん、大きいのは消費電力だけでない。その発熱量もただ事ではない。
仮に満足できない冷却機構だったなら、性能は期待するほど伸びない。そうなると、ハイエンドPCにした意味は薄れるだろう。だから冷却機構もそれなりのものは必要になるだろう。
そう考えると、大きくなるのは予算も然り。おそらく40万円の壁は軽く超えてくる。
全てにおいて、相当な覚悟を以て受け入れる必要のあるPC、それがハイエンドなRocket Lake-Sである。