Intelのデスクトップ向け第11世代Core「Rocket Lake-S」が発表された。IPCを大幅向上し、GPUにXe Graphicsを採用するという大幅進化を遂げた。
IPCが2桁%向上するらしい
第11世代Core Sシリーズは、10月初旬の段階ではアーキテクチャが新しくなり、PCI Express4.0に対応する事が知らされていたが、それ以外の情報はなかった。ここに来ていろいろな情報が出てきた。
まず一番大きな違いは、アーキテクチャとしてはCypress Coveが採用され、組み込まれるGPUとしてXe Graphicsが採用されているという事である。第10世代のデスクトップCPUまでは、基本的にはSkyLake/KabyLakeアーキテクチャが採用されたCPUだったが第11世代になりようやく新しいアーキテクチャが採用された。
統合されるPCI Expressも3.0から4.0へと進化し、ポート数も16ポートから16ボート+4ポートとなった。
その他、いろいろな強化点が加えられ、最終的にIPCが2桁%向上するという触れ込みである。
Intelがこのような言い回しをするのは、明らかにAMDのZen3アーキテクチャへの対抗だという事がわかる。何故ならZen3は前モデルであるZen2と比して19%ほどのIPC向上と発表している。Zen2はIntel CPUとIPCで並ぶ実力がある事が証明されているため、Zen3は明らかに既存IntelコアよりもIPCが向上した、と発表したのだから、Intelも第11世代CoreでIPCが大幅に向上したと触れ込む事でZen3を牽制したと言える。
前述したようにIntelは第10世代CoreまでSkyLake/KabyLakeアーキテクチャを採用していた。この時期は実に5年以上にわたっており、ようやくそれが更新されたワケである。Intelが大きくIPC向上を謳うのは、今までとは明らかに違うという宣言に近いものがあるのかもしれない。
最大コア数は8コア
ただし、IPCが2桁%向上したが、最大コア数は第10世代Coreよりも少なくなる。Comet Lake-Sでは最大で10コア/20スレッドの構成だったものが今回のRocket Lake-Sでは8コア/16スレッドに留まる。
AMDのZen3では16コア/32スレッドの5950X、12コア/24コアの5900X等が用意されているが、Rocket Lake-Sではそこまでの多コア構成は準備されていない。
それはおそらく製造プロセスが今だ14nmレベルから進化していない為である。但し、今回は14nmでもそれをさらに進化させた14nm++++と呼ばれる14nmプロセスの最新版で製造されるとしており、その中身としては10nm品に性能が限りなく近づいているとされている。Intelは他ファウンダリとはちょっと違う部分があるので、10nmと言っても他ファウンドリの7nmに近い要素があるため、10nm品に限りなく近いとなると実際には10nmプロセスと互角の集積化が可能になっている可能性がある。ただ、8コア/16スレッドより上のモデルが存在しないとなると、それでも7nmと比してコア面積は大きいのかも知れない。
Intelとしては、それ以上の多コアシリーズなら上位モデルのCPUへ移行を促す、という意思表示なのかもしれない。
チップセットはIntel 500シリーズ
他にも内蔵されるGPUはTiger Lakeに内蔵されたXe-LPと同等のXe Graphicsになるという話もあるが、こちらについてはまだ規模としてどれぐらいの性能を持ったものを内蔵するかはわからない。Xe-LPの最大規模は96基のEUで構成されたものが、おそらくこのフルサイズのXe Graphicsは搭載されない可能性がある。というのは、Intelは過去よりデスクトップ向けCPUに内蔵するGPUではフルサイズのGPUユニットを採用するケースはほとんどないからだ。外付けGPUに頼る事が多いのでデスクトップ向けは最大規模のGPUを載せるより緊急時に利用出来るレベルのGPUさえ搭載されていれば、その意義はほぼ達成出来るからだ。
また、チップセットはIntel 500シリーズに対応すると予想される。今回はPCI Express4.0に対応する事がCPUから予想されるので、チップセット側もそちらに対応する必要がある。また、今回の情報でUSB 3.2 Gen 2×2(20Gbps)に対応したUSBコントローラなどが統合されている事も明らかになった。Intel系のマザーボードは機能が豪華になる事が多いが、それらは統合されたチップセット内のコントローラーが豪華である事も理由である。
こうした総合的な性能・機能で、IntelはAMDと戦っていこうという事なのだろう。
この方向性はある意味間違っていない。PCの性能は何もCPUだけで決まるものではない。PCはOSが乗って使った時の性能・機能で最終的な勝負になる。ベンチマークではCPUの性能だけが取り上げられるが、一般的な消費者であれば、実際に使用する時の性能と機能が重要になる。そういう意味でIntelがAMDの苦手とするチップセット機能で差を付けてくるのは、当然とも言える。
今回のAMDのZen3では、新たなチップセットは公開されなかった。既存のX570系でZen3が利用できるとしている事で、チップセット側の新機能は既存技術に留まる。もっとも、X570系は先んじてPCI Express4.0に対応していたりするので、Intelはようやくソコに並んだという事にもなるが、それ以外の部分ではIntelが優勢という可能性も高い。実際に新CPUと新チップセットが発表されるのが楽しみになってくる。
というわけで、第11世代Core Sシリーズは2021年の第1四半期に正式発表され市場投入される計画だという。2021年もIntelとAMDの戦いは熱くなりそうである。