HONDAは2010年中にコンパクトカーの金字塔“Fit”のハイブリッド版を発売すると言われている。
それが報道されてからかなりの時間が経っているが、噂では10月頃から発売されるらしいという情報もあり、そうなると発表は8月頃ではないか? とも言われている。
気になるのはその価格で、当初の噂では160~150万円くらいと予測されていたが、ここにきて車両最低価格が139万円ではないか? という話が出ているらしい。
もちろん139万円にいろいろな金額が上乗せされ、走りだし価格はもっと上に行くことになるが、それは他のどの車でも同じこと。
問題はこの車両価格139万円という価格設定で、この価格帯は当然の事ながら現行Fitの価格帯にも重なるし、何より軽自動車の価格帯に重なってくる。
今のコンパクトカー全般もそうなのだが、軽自動車の価格帯とコンパクトカーの価格帯が完全にクロスしている。それでも現状のコンパクトカーは税金等の維持費の問題で、軽自動車と車両価格が同じでも長期的に金額差が出てくる。まだ軽自動車が多少有利か? という所だろう。
ところが、Fit HVの燃費はリッター30kmを越えてくると言われている。車体重量がそうとう軽量化されているようで、トヨタのHVシステムより燃費で分の悪いIMAというHVシステム(エンジンのフライホイールと一体化させたモーターシステム)でも、相当な高燃費を達成できるらしい。
燃費で軽自動車との維持費の差を詰められるFit HVだと、価格がクロスしている分、総合的に見てFit HVが買いやすい車になってくる。軽自動車からの上位アップグレードを考えている人なら、まちがいなく購入ターゲットに入る車だろう。
そもそも、ハイブリッドというシステムの価格を従来の車に上乗せする訳だから、価格的にハイブリッド車が高くなるのは当たり前の話。それがFit HVによって崩される可能性が出てきたわけである。
じゃあ、そもそもHONDAのIMA HVシステムって何なのさ? という話も出てくるかもしれない。
もちろんHONDAはそういう疑問にも答えてくれる。
HONDA 誰でもわかる(といいな)IMA(現在リンク切れ)
この動画サイトはIMAをイメージ的に教えてくれる。
要は小さい事の利便性を伝えようとしている。比較しているのは当然の事ながらトヨタのHVシステム。
もちろん、トヨタとは言ってはいないが。
ただ、このサイトだと具体的な仕組みがわからない。
HONDA INSIGHT ハイブリッドシステム(現在リンク切れ)
HONDAのINSIGHTのページに、IMAの具体的な説明があるので、詳しい仕組みはこちらで見るといいだろう。
エンジンの横に取り付いたフライホイールを丸々小型モーターにしてしまったため、かなりコンパクトに収まっている。もちろんモーターが小さいため、トヨタほどのモーターパワーは得られないが、もともと動力と燃費性能に優れるHONDAのエンジンにモーターのトルクが加われば、効率の良いパワーユニットになる、というわけである。
ちなみに私は現行Fit(1.3L)では、悪くても18km/Lくらい、良ければ20km/Lを超える燃費を出せる自信がある(但し、私の生活圏での話。ストップ&ゴーの多い都会だともっと悪いだろう)。
これにもしIMA HVシステムが加われば…多分もっと燃費は良くなるだろう。
HVシステムを単体で見れば、トヨタのHVシステムの方が効率は良さそうに見える。
実際、モーターパワーを考えれば確かにそれは間違いがない。
だが、車に実装するとなるとそこにはいろいろな状況があり、それら個別の状況に合わせるシステムという面で考えると、仕組みが大きくなりがちなトヨタHVシステムは現時点ですべての車種に適用できるとは言い難い。
ところがIMA HVシステムだと、その小型パッケージは軽自動車に搭載も考えられるシステムといえる。
私が一番気にしている事は、もし車重の軽い軽自動車にIMA HVシステムが搭載されるとどうなるのだろう? という事だ。
大きさから考えると、トヨタHVシステムを搭載するよりずっと現実的な話である。
今の燃費からさらに高燃費になる事は言うまでもなく、そこに軽自動車特有の維持費の安さが加わると、HONDAは他軽自動車メーカーを一気に突き崩すほど…というと言い過ぎだが、かなりのシェアを獲得できるように思えてくる。
もちろん、他メーカーも軽自動車にCVT等を搭載して燃費を良くしてきている。だが、ハイブリッド車と対抗できるほどの高燃費を得られるとは思えない。
2011年、トヨタはVitsをハイブリッド化させると言われている。
その時に搭載してくるHVシステムがどんなものになるかは分からないが、2010年秋に登場するFit HVに対抗するだけの車になっているだろうと思われる。
軽自動車とクロスする市場での戦いだけに、軽自動車メーカーは苦しい展開を余儀なくされるだろうとは思うが、これがキッカケで軽自動車そのものの概念が変わっていく可能性もある。
日本経済を支え続けた自動車業界は今大きく変わっていかねばならない時代に突入した。
そしてそれはここ数年続いていくだろうと思われる。
Fit HVはその先鞭となる車ではないかと思えてならない。