会社が廃業となるのは、何も資金問題だけじゃない。
後継者がいない日本
昨年、情報として耳に入ってきた中で、ちょっとした驚きだったのが、岡野工業が廃業を決めたという事であった。
岡野工業と聞いて、ピンとくる人はモノづくりが好きな人だったり、経済関係の話が好きな人ではないかと思うのだが、岡野工業はかつてはラジカセの曲面をしたスピーカーガードを製造する機械を製作したり、携帯電話の充電池カバーを製造する機械を製造したりと、モノづくりの基本となる技術を確立し、いろいろな製造機械をゼロから作り出していた町工場である。
そんな町工場をひときわ有名にしたのは、刺しても痛くない3ミクロンの注射針を医療機器メーカーからの依頼で開発したという事で、当時この話で岡野工業は日本を代表する技術企業となった。ちなみにこの注射針は今でも世界でこの岡野工業しか作る事ができないと言われている。
岡野工業は従業員は3名しかいないが、それでも年商8億円という超優良企業なのだが、岡野社長には2人の娘さんしかおらず、共にモノづくりには興味が無いという事で、同族で会社を継ぐという意思がなく、また社長も誰かに継がせる予定もないという事で、岡野社長が85歳になった段階で廃業する事にしたらしい。現在84歳というから、もう一年経たずして廃業という事である。
何とももったいない話ではあるのだが、このように後継者不足を理由にして廃業を選択する中小企業が、今増加しているという。昨年、自主廃業をした中小企業は約3万あったそうだが、その内49%は黒字経営でありながら後継者がいないという事で自主廃業した。
マニュアルだけではダメ
技術立国日本にとって、この後継者がいなくて廃業するというパターンは少子高齢化を迎える以上、避けて通れない問題ではあるものの、その事によって国内の雇用が650万人、GDPは約22兆円が失われる可能性が予測されている。おそらく、東京オリンピックのある2020年以降、徐々にそうした問題が表面化し、2025年には本格的にその姿が見えてくると思われる。
こうした問題に各企業もいろいろと対策を講じてきてはいるが、現時点ではまだ業務マニュアルを整え、第三者でもその業務を止めずに遂行できるようにするレベル…という企業が多いのではないかと思う。
だが、そもそも技術は確立したからといってそこで終わるものではなく、さらにアップデートを繰り返していかなければならない。でなければ技術は進化しないのだ。
しかし、問題はその技術を進化させる人材がいないという事である。
これは今の中小企業であればほとんどの所が当てはまる問題であろう。
だが、大企業には人材はいる。大企業には、そのブランドで人材を引き寄せる力があるのだから、間違いなく人はいる。
だから本来、このような技術の継承は大企業が率先してやれば良いのだが、それが出来ない社会になってしまっている。
何故か?
それは今の人材評価の基準が常に利益と損失のバランスで成り立っているからだ。
おそらく、どの企業も「チャレンジするという事は重要だ」と社員に言って聞かせているだろうが、残念な事にそのチャレンジにすら、利益と損失という天秤を背負わせているところが多い。これでは失敗を恐れるなという方が無理である。
本来なら、企業のトップやキーパーソンが自ら率先して失敗し、それでも評価される事例が必要だと私は考える。
もちろん、その損失が会社が傾くほどでは当然ダメだが、何よりも新たなものを生み出すキッカケを作る糸口になるようなら、それを評価する事が重要である。
そういう文化が生まれない事には、大企業に技術を確立する事などできないと思う。


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