自宅にハイエンドを持つ時代は終わるのか?
STADIA
GoogleがChromeブラウザ上で動作するクラウドゲーミング技術である「STADIA」を発表した。
“STADIA”は、Chromeブラウザが動作するデバイスであればほぼ全てでゲームをプレイする事かできる。その仕組みは、ゲーム自体の処理をGoogleデータセンターのマシン上で処理し、クライアント側にそのデータをストリーミングする、というものになる。
Sonyなどは、以前より「PS Now」として展開していたサービスだが、Googleの“STADIA”のスゴイところは、Chromeブラウザが動作すればそれだけで良い、という所に尽きる。
特別新しい技術ではないが、その規模と安定性は、Googleだからこそ、と言えるサービスかもしれない。
前述したように、ゲーム本体はGoogleがSTADIA専用に開発したデータセンターのマシン上で動作する。このマシンにはAMDと共同開発した10.7TFLOPSの性能を持つGPUが搭載されており、この10.7TFLOPSという性能は、PS4 ProやXbox One Xを超えるものであり、当然だが4K HDR 60pでゲームを動作させられる。またそれだけでなく、STADIA GPUをマルチGPUで動作させる事もでき、現時点で8K解像度を視野に入れているという。
STADIAのハードウェアスペックとしては、GPUとして56CU、HBM2メモリ、10.7TFLOPSという性能なので、想像するにRadeon VIIクラスのちょっと下レベルのものと想定されるが、アーキテクチャとしてはVegaではなく、次世代のNaviを想定しているかもしれない。これにCPUとして2.7GHzのx86コア(おそらくマルチコア)が組み合わされ、16GBのメインメモリを持つものになるという。…コレ、どうみてもZen2アーキテクチャだろ(爆)
とりあえず、これらのハードで動作するアプリケーション開発用のローカル開発機も用意されるとしていて、既にミドルウェアとしてUnityとUnreal Engineが対応を表明しているという。
ま、x86コアなので、このあたりのSDKには困らないものと思われる。
専用コントローラー
ゲームなので、画面を表示させるだけでは当然ダメ。
そこで既存のキーボードやマウス、ゲームコントローラーでのプレイも可能だが、Googleは専用コントローラーを開発した。
見た目は普通のコントローラーだが、Wi-Fi機能を内蔵し、コントローラー自体がSTADIAデータセンターに直結され、プレイする仕組みになっているという。
ゲームをプレイするデバイスは前述したようにChromeブラウザが動作する全てのデバイスとなるが、例えばスマートフォンでプレイしていたものを一時中断し、PCでログインすれば即座にPCでゲームプレイを続行する事ができる同期システムが搭載される。またマルチプレイに関しても大画面を画面分割して表示させる事も可能だが、その場合処理するGPUは表示デバイス毎に用意されるわけではなく、データセンターに接続したコントローラー毎に用意されるため、プレイ性能の劣化はないとしている。これがコントローラーがデータセンターに直結される最大の意味ではないかと思う。
STADIAコントローラーには独自にキャプチャボタンとGoogle Assistantボタンが搭載され、キャプチャボタンを押すとYouTube上で配信が可能になる。ま、このあたりはGoogleのいろんなIPの連携技といったところである。
また「Status Share」と呼ばれる機能があり、これを使うと1人のプレイヤーがプレイしている情報を任意の場所で保存し、共有できる。この時、その情報へのリンクが短縮URLに記され、他プレイヤーがそのURLをYouTubeやSNSで共有すると、共有された情報と全く同じ状況でゲームプレイを再開、体験できる。縛りプレイなどの特殊な状況を作り出し、そこからランキングプレイができそうな機能である。
NVIDIAは…
こうしたストリーミングによってゲームを展開するサービスは、前述したようにPS Nowなど他サービスが先行しているが、NVIDIAも「GeForce NOW」として提供している。
奇しくもGoogleの今回の発表の前日、SoftBankが「GeForce NOW」の国内展開を予定しているという発表を行ったのだが、こちらは全世界で15のデータセンターにおいてサービスを既に提供している。
ユーザーはPCがなくても、Macやスマートフォン、タブレットなどでゲームをプレイ可能、と、言っている事は従来サービスと全く同じである。
“GeForce NOW”の場合、もちろんこのデータセンターで動作するマシンはNVIDIA製のGPUなどを採用したものになるので、Googleの“STADIA”とはNVIDIA対AMDの構図が出来上がる事になる。
ただAMDはGoogleと提携した事で、データセンターを自前で用意する必要が無く、全てのリソースを新型マシンの開発に注げるという利点がある。現在、PS4もXbox OneもAMD製コアを採用しているため、今後コンシューマ機がどのような扱いになっていくかにもよるが、AMD製のコアがあらゆるサービスの土台になるのと同時に、NVIDIAがその土台をどこまで削り取っていくか、という戦いが起きるのではないかと私は予想している。
このあたりのAMDの戦略は、かなり上手く行っているように思える。
今後のゲーム
今後、コンシューマ機と呼ばれるハードウェアはなくなるかもしれない。
その代わり、月額いくら、というサービス料金でゲームをプレイする時代が当たり前になり、場合によってはPCゲームですらそういう時代に突入する可能性がある。
ただ、こうしたサービスは通信キャリアがあって成立する話であり、どうしてもレイテンシ(遅延)との戦いにもなる。
このレイテンシ(遅延)を嫌い、やはり各個のハードウェア性能に重点を置き、通信負担を減らす方向が良い、となる勢力(つまり現在のスタイル)も生き残るかもしれない。
なので、ストリーミングゲームサービス勢は、このレイテンシをどのように克服していくかが今後の課題になるし、従来と同じ形態を望む勢力は、如何にして各家庭にハイエンドな機材を提供できるかが勝負の分かれ道になると考えられる。
ストリーミング勢としては、この課題に対し、5Gサービスで補っていくとおそらくは考えているのだろうと私は思うが、無線通信は必ずいつでも安定するとは言い切れないので、こうした通信施設の拡充はサービスの安定に直結する問題になる。おそらく今後は通信キャリアにどのようにサービスパッケージを提供するかが問題になっていく。
従来と同じ形態を望む勢力としては、徐々に売れなくなってくるであろうハイエンドハードウェアの単価をどうやって安く売っていくかが課題になると思うが…そもそもオフライン開発機を製造する関係から、ある程度のハイエンド部品は出回る事になるだろうから、案外地道に生き残るのかもしれない。自作PC好きな私としては、生き残って欲しいし、安くして欲しいと願わずにはいられない。
ただ、大勢はストリーミングサービス側になるだろう事は、ほぼ間違いない。
あのGoogleがこのようなサービスを便利さをもって展開するのだから、ストリーミングサービスが本流、それ以外はその本流にどこまで食いついていくか、の戦いになるだろう。
…ま、Google一強体制になる可能性は大いに考えられる訳だが。
この勢いに乗って、ドラクエ風Googleマップがホントに実現したらどうしようか? と真剣に考えた私がいるのはココだけの話である(爆)