シングルスレッドでもIntel超えを目指すAMDの最新の一手は、IPC 19%アップという武器を手に入れた。
7nm製造ではあるが…
AMDがZen3を11月5日に発売する。
正直、私はもっと送れるかと思っていたら、予定通りに発売に漕ぎ着けてきた。最近のAMDは絶好調に見える。少なくともCPU分野では。
今回のZen3では、製造プロセスこそZen2と同じ7nmに留まるが、従来4コアで構成していたCCXが8コアで構成されるようになった。その為、8コアで32MBのL3キャッシュを共有する事となり、コア間の通信レイテンシが大幅に削減されるようになった。つまり、今間までメモリレイテンシで命令待ちとなっていて速度が落ちていた部分がより少なくなるので、全体として高速化した、という事である。
また、Zen2と比較してクロックあたりの命令実行数を19%増加させている。具体的には、浮動小数点演算エンジンと整数演算エンジンの命令実行数の向上によって、実効性能が上がり、またメモリアクセスのレイテンシが低下した事によってロード/ストア数が増加、結果実行エンジン性能が向上し、性能が引き上がる、という算段である。
また、分岐予測バンドが強化された事で遅延が削減され、プリフェッチが改善、IPCが向上している。
Intelは、この命令実行数の向上に関しては、モバイルCPUでは順当に伸ばしているものの、デスクトップCPUでは4年間も停滞させている。
AMDはそこを押さえた事で、Intel超えの性能を実現したとしている。
メインPCの入れ替え時期か?
Zen3が登場する事で、私もいよいよメインPCの更新をすべき時がきたか、と検討を始めている。
今の情報を纏めてみると、Zen2を選ぶメリットは全くなく、これならZen3へ切り替えるのが最も正しい判断だろうと結論づけている。
モデルとしては、最上位の5950Xが欲しいところだが、799ドルという価格設定なので、おそらく価格的には10万円程度にはなるだろうと予想している。
ただ、現時点の情報で判断する上で残念なのは、5700Xが告知されていない事である。
3700Xは、そのコストパフォーマンスの良さで人気のあったモデルだが、それのZen3版が現在のリストにないのである。
16コア/32スレッドの5950X、12コア/24スレッドの5900X、8コア/16スレッドの5800X、6コア/12スレッドの5600Xがラインナップとされているが、それ以外が存在しない。
後続で中間モデルが今後登場するのかもしれないが、少なくとも今の段階では選択肢としては妥当な振り分けではあるが、コストパフォーマンスに特別優れたモデルというものが見つからない。
この辺り、Zen2の頃から比べるとお得感が少なく感じてしまう。
MBはそのまま?
今回のZen3、5000番台の発表に関して、チップセットの新作は発表されていない。
既存のAMD 500シリーズのチップセットをそのまま利用可能とするのかもしれない。対応ソケットもAM4に留まるようなので、その部分は喜ばしい事ではあるが、個人的にはAMD 500シリーズの更なる低発熱版の登場は期待したかったところである。
AMD 500シリーズは、基板上にチップセットの冷却ファンが搭載されているので、メカニカルなトラブルを懸念する人が多かった。それだけ発熱量が多いという事だが、その発熱の最大の原因はPCI Express4.0の対応によるものと言われている。
今後、SSDの接続を中心とした、高速アクセスが必要なデバイスは、PCI Express4.0へと進んで行く事は予想される事なので、できればこれが原因で発熱量が多くなる、という原因は、Zen3では削除したかったところである。
まだ最終的にチップセットが更新されない、とは断言できないとは思うが、現時点ではAMD 500シリーズのBIOSアップデートでZen3の利用が可能という事らしい。
これについては今後アップデートがある事を期待したい。
新しいメインPCの構成を考えるにあたり、次の課題はGPUである。
Radeon RX 6000シリーズもRyzen 5000シリーズの発表会にチラ見せがあったようだが、気になるのはその性能と価格、そしてFluid Motionへの対応である。
ま、Fluid Motionに関してはほぼ絶望的と言えるが、大多数のユーザーから声が上がれば、AMDは対応を検討するだろうと思われるので、有志を募って要望したい気持ちはある。
というか、今のままではNVIDIAと単に性能競争しているだけで、固有の特徴を切り捨てているだけになるので、AMDとしては動画性能向上を謳って差別化を図ってくれればいいのに、と思うのだが…。