ニコニコ動画を中心に初音ミクが大爆発中だ。
日本のヲタクに音楽制作という一般人には取っつきにくい作業を、何の戸惑いもなく行わせてしまうその魅力は、まさに萌えヲタクを萌えさせたキャラクター性とそこに眠る無限の可能性があるニオイがそうさせたに違いない。
ニコニコ動画のコメントでも言われている事だが「もう一定レベル以下の歌手の必要がなくなる」という言葉は、案外的を外してはいないのかも知れない。
というのも、ここ最近ニコニコ動画にアップされる初音ミクに歌わせた曲のレベルが、恐ろしいまでに向上してきている。
これは使い手がVOCALOID2を使いこなし始めている現れでもあり、YAMAHAがVOCALOID ENGINEの性能を引き上げていけば、生の歌声と遜色ないデータを生成できるようになる可能性を示している。
実際、VOCALOIDとVOCALOID2とではかなり生成される歌声に差があり、進化した結果がより人間の声に近いものである事からも容易に想像がつく。
この先、VOCALOIDはどこに向かっていくのか?
おそらく、YAMAHAが当初想定していた状況は、このようなものではなかったと思う。
今、VOCALOIDは全く異なった側面を持って展開して行くことになる。
YAMAHAは当初VOCALOIDは音楽制作に携わる人が作曲した音楽に声を当ててテストするようなモノとして考えていたらしい。
要するに、目指すところは人間の声そのものという所だっただろうが、どう考えても使い方としては専門性の高いセクションで使われるモノという認識だったようだ。
しかし、今の時点でこの想定は大きくハズレ始めている。
初音ミクの登場によって、ユーザーは専門職から一般人へと大きくその幅を広げた。
もともとVOCALOIDはマシンボイスである以上、疑似人格を持たせる格好のターゲットである。
日本のヲタク層がそこに眼を向ければ、そこにゼロから生まれたキャラクター性に大きな可能性が生まれるのは、むしろ必然である。
初音ミクとはそうした必然の流れから生まれるべくして生まれた存在だ。
そこに情熱があれば、VOCALOID ENGINEの使い手が増え、使用技術が向上し、結果として人の声により近づいていく。
VOCALOID ENGINEの目指す先が普通に聞こえる人間の声である以上、火が付いた層がヲタクであれば、もう技術の先は見え始めてくる。
限りなく自然に歌うVOCALOID…
その時点で、歌の下手な曲は存在しなくなる事になる。
ただ、人間にはあらゆる声質が存在する。
VOCALOIDは残念ながら声質までをも生み出す事はできない。
声の伸びはVOCALOIDの方が綺麗でも、その声そのもののフォルマントフォントは人間でなければ与える事ができない。
いろんな声で歌うVOCALOIDを作るには、それだけのフォルマントフォントが必要になる。VOCALOIDの最大の欠点はまさにそこ。
そういう意味では、どんなに歌声が綺麗であろうとVOCALOIDはマシンボイスを超える事は決してあり得ない。
そんな欠点を持っていたとしても、初音ミクをはじめとした今後登場してくるであろうVOCALOID達は進化を止める事はないだろう。
より自然な声を。
VOCALOIDのテーマはまだ始まったばかりなのだから。