データを何かしらの形に変化させ、記録する。
実は、そうした技術の延長上に存在するものは二つある。
一つはコンピュータ等で使用されている記録媒体。
昔は紙テープに空いた穴の位置によってデータを記録し、その後磁性体の変化でデータを記録するようになり、今現在は光の屈折を利用したディスク媒体へと進化してきた。
そして、記録技術のもう一つの形は、紙などにプリントする方法。
たとえばバーコードやQRコードといったものだ。
バーコードが横一直線の変化を読み取るのに対し、QRコードはタテヨコの変化を読み取るよう設計されている。
これら二つの進化の過程には大きな差はあるが、一つ基本的なところで同じ部分が存在する。
それは、一部を除いてほぼ平面に記録されているという事である。
HDD等では、垂直記録方式という平面だけでなくタテに磁気を配置する方法があるが、それとて基本的には平面でデータを管理しているに過ぎない。
つまり、従来の方法では平面記録という枠を大きく飛び越えた媒体は存在しないという事である。
もし、これが平面を飛び越え、空間に記録する事が出来たなら。
おそらくそこには、従来とは全く異なった大容量記録が可能な未来が隠されているかもしれない。
これはホログラムディスク。
ディスク盤内部に立体的にデータを記録する事を可能にした次世代メディアである。
従来の光ディスク媒体は記録レーザーによって平面方向(X軸Y軸方向)にデータを記録していた。
それに対し、ホログラムディスクは、そのディスク媒体の中で“深さ”方向(Z軸方向)へも記録を行うことで、より高密度な記録を可能としている。
このような立体的にデータを記録するという基本的構想はかなり昔から存在していた。
しかしながら、その難解さは普通ではなく、今までは記録する媒体を何にするか、またそれを読み出す精度を持つドライブをどうやって製造するか等、いろいろな問題が開発を難航させていた。
ところがここ5~6年くらいの間に、DVDをはじめとした光学ディスクの多層化が引き金になったのか、一気にその当たりの問題が解決できる方向に研究が進んでいき、とうとう一つの形へと完成を見た。
今、幕張メッセで行われている、業務用放送機器の総合展示会“2007年 国際放送機器展”(Inter BEE 2007)で、日立マクセルが発表したのが前述の写真の媒体である。もちろん、読み書きできるドライブも存在する。
日立マクセルが準備しているホログラムディスクは130ミリ径で300Gバイトの容量を持っている。媒体はライトワンスで、転送速度も160Mbpsと高速。
従来の光ディスクとはまるっきりそのスペックが異なっている。
ホログラムディスクは、Z軸方向にもデータを読み書きにいくため、そのドライブの遮光性はかなり高くないといけないらしく、実際にはホログラムディスク自体、遮光性の高いカートリッジに入れられる事になるらしい。
一応、現時点での販売も視野にいれているそうだが、今はまだ販売価格がとんでもない価格。
読み書き可能なドライブが250~300万円、メディアが1枚2万5000円前後の見込みで、一般人が手を出せる価格ではない。
ただ、2011年をスタートに一気にフルHD化が進む事を考えれば、業務用途でこの価格なら納得がいく。
ハイビジョンのさらに上を行く画質を求めるのなら、媒体はより大きくなければならないのだから、こうした可能性への投資は、どの企業も考えない事ではない。
ただ私的には早いところ一般人用途に降りてきて欲しいと願うばかりだ。
HDDの増設も良いが、一番よいのはリムーバブルメディアで大容量扱える事だ。それが手軽ならもっと良い。
私はDVD-RAMが思った以上に普及しなかった事が残念でならない。
本来、光学メディアはより手軽に扱えるようにするために、カートリッジに入っているべきだと私は思っている。
Blu-ray Diskは当初カートリッジに入っている方向に進んでいたのに、気がつけばカートリッジレスになってしまっている。残念な話だ。
価格を下げるためにそうしたのだろうが、子供が何気なくメディアを掴んでも問題がないという安全性(データ保全性)は、高密度化する光学メディアでは必要な事だと私は思う。
そういう意味で、このホログラムディスクはその大容量性と遮光性の両立のためにカートリッジ運用が必要な媒体である事を考えれば、すべてを解決できる媒体という事になる。
まぁ、私の個人的な問題を解決する…という意味だが。
どちらにしても、リムーバブルメディアで大容量というのはこれから先必要な事だと思う。
ホログラムディスクの未来に期待したい。