Thunderboltというインターフェースを知ったのは、2011年2月24日だった。
この日はAppleがMacBook Proの製品ラインナップを一新した日で、その新型MacBook ProにThunderboltというインターフェースが搭載されたため、私は初めてその名前を目にしたのである。
もともとこのThunderboltというインターフェースはAppleとIntelとの共同開発による産物という事だったため、Apple製品に搭載されたのだろうと思っていた。
ところが、中国・北京市で2011年4月12日~13日に開催された「Intel Developer Forum 2011 Beijing」において、IntelがThunderboltの概要を明かにし、どうもIntelのSandy Bridgeの次に来るIvy Bridge世代において、このThunderboltコントローラーのバンドルがあるかもしれない、という話が出たようで、Windowsの世界にもThunderboltがやってくる可能性が見えてきた。
なので、ちょっとThunderboltを調べて見る事にした。
これがIntel Developer Forum 2011 Beijingで公開されたスライドで、これを見るとスペックがある程度見て取れる。
どうも10Gbpsの双方向通信で電気的ケーブル(多分銅線)なら10wの電力供給が可能だがケーブル長は3mまで、光ケーブルを使用するとどれだけでも長さは延ばせる…どうもそんなスペックらしい。
さらにデバイスとの接続はデイジーチェーンで7台までのデバイスを接続しても遅延は8nsという高速通信が可能らしい。Appleはデイジーチェーンがホント好きだな(爆)
…しかし、electrical cableとoptical cableがなぜ両方書かれているのかが分からない。
銅線仕様なのか、光ケーブル仕様なのか、このスライドを見ただけではイマイチわからない。
そこでもっと詳しく説明しているサイトを見つけてみる事にした。
で、検索の結果出てきたサイトがコレ。
元麻布春男の週刊PCホットライン
新インターフェイス規格「Thunderbolt」は普及するのか
このサイトを見ると、どうもメタルケーブルと光ケーブルは併用できるらしいのだが、仕様そのものがよくわからないとある。
そもそもThunderboltはLightPeakという技術だったらしい。
LightPeakはシリコンフォトニクス技術で安価な光高速通信を可能にするものだったらしいが、今回Thunderboltとして登場したらしく、その名残で光ケーブルというオプションが用意されているらしい。
だが、光ケーブル仕様だと、デイジーチェーン接続には無理があるのではないかと思うし、そもそもメタルケーブルと光ケーブルを1本のケーブルにすると、非常に取り回しの悪いケーブルになってしまう。光ケーブルは極端に曲げる事が出来ないし、逆にメタルケーブルはそんなに長くする事が出来ないからだ。
それにデイジーチェーンという接続方法も、そもそもメタルケーブルでないと実現は難しい。光ケーブル単体では給電できないし、何より光信号を通す関係上、繋いでいるデバイス全ての電源が有効になっていないと伝送そのものができない。メタルケーブルならケーブル内に通電しているだけでコントローラーのみを駆動させて途中のデバイスが落とされていても通信だけは可能になる。
前述サイトにもあるように、LightPeakがThunderboltとして登場してしまったからには、光ケーブル仕様という使い方はあまり考慮されていないのかもしれない。
ただ、メタルケーブルであっても光ケーブルであっても、通信帯域は片側10Gbps、双方向で20Gbpsという通信速度は変わらない。この速度こそ、Thunderboltの最大の武器なのではないかと思う。
しかし、USB3.0ですらまだその帯域の使いどころが不明である現状を考えると、10Gbpsという通信速度のメリットはあまり生きてこない。
ただ、広い帯域を必要としているデバイスが一つある。それはビデオカードである。
解像度1920×1080ドットでリフレッシュレート60Hzのビデオ信号は約5Gbpsの帯域を必要とする。これが3D映像となればリフレッシュレートは2倍の120Hz必要だから約10Gbpsの帯域を使用する。計算で行けばフルHDであってもThunderboltで耐えられる事になる。
イメージはノートPCのビデオカード外付化である。今までノートPCはどうがんばってもデスクトップPC並のビデオ性能を得る事が難しかったが、Thunderboltなら匹敵するビデオカードを使用する事ができるようになるかもしれない。
ただ、もちろんそれが可能だという話とは直結しない。コントローラーの性能によってはミドルレンジクラスのビデオカードを接続する事もできないかもしれないし、デイジーチェーンで他デバイスと接続していればその分帯域は圧迫される。特にディスプレイを接続している場合は深刻な帯域不足になる。
これらのことから分かるように、まだThunderboltは未開な部分が多い。
コントローラー次第と言ってしまえばそれまでだが、そのコントローラーに関しても今度は普及という問題を抱える事になる。
USBの場合はPC本体にそのホストコントローラーがあれば周辺機器には不要だったが、デイジーチェーンで接続するThunderboltは周辺機器側にもコントローラーを必要とする。それだけサードパーティ側の負担になる事は間違いない。
とりあえず本格的に普及すると思われるのはIvy Bridgeが登場する2012年以降になると考えられている。Ivy Bridge世代のプラットフォームにバンドルするかもしれないというのだから、これは間違いない話だと言える(Ivy Bridgeが遅れればその限りではないが)。
登場した時、そのThunderboltのメリットが何であるかはこれで問題なく理解できているだろうが、願わくばコントローラーの性能が向上し、ノートPCに強力な外付ビデオカードが可能になっていてくれれば…と思うばかりである。