その昔、私にはとても好きなSLGがあった。
その名はPOWER DoLLS
POWER DoLLS.
この名を聞いて名作という言葉が出てきた人は、多分私の感性と近い人ではないかと思う。
そしてそのPOWER DoLLSは、第2シリーズまでが名作となれば、同じ感性と言い切っても良いのではないかと思う。
工画堂スタジオの名作SLGであるPOWER DoLLSは、普通男が圧倒的多数の戦場の中で、女性だけの特殊部隊DoLLSが活躍するストーリーを持つターン制シミュレーションゲームである。
何故女性だけの部隊なのか? というヒミツについては、ゲーム内というよりは関係するメディアミックス作品の中で語られる事が多く、そこにはちゃんとした意味が存在する。それが何か? という事はココでは言わないが、シミュレーション作品らしくメカの設定なども細かく、またストーリーに関しても実に良く出来た作品だった。
そして何より特徴だったのは、ストーリーを持つミッションを多数持っていた、という事であり、そのミッションが特殊部隊と言うだけあってかなり難解なものであった事、またミッションを成功させても脱出ルートを確保できなかった場合、別の手段で脱出を試みる事が出来るという所も面白さの要素であった。
このPOWER DoLLSが爆発的人気を持ったのが第2シリーズで、DoLLSの隊員が増員、メカも新世代機となり、より緻密な世界が描かれていた。
ゲームの基本はターン制シミュレーションゲームという事は何も変わっていない。
目的を達成する事でストーリーが進んで行く所も変わらず、過激なミッションを成功させた後に脱出ルートを確保できなかった場合に独自ルートで脱出を試みる事ができる事も変わらない。面白さの真髄がそこにあるのだから、変わる訳がないのである。
しかし、このPOWER DoLLSも第2シリーズを超えたあたりからその面白さに陰りが見え始める。多分、私と同じように感じた人も多いと思う。
いろいろな話があるが、制作チームの人員が変わったとか、いろいろな要素があっただろう事は想像に難くない。
人気だけが一人歩き
そのPOWER DoLLSの人気は、いつしか語られるだけの伝説となり、人気だけが一人歩きするようになる。
つまり「POWER DoLLSの流れを組む○○○」とか、コンテンツとして異質であってもPOWER DoLLSと何かしらが共通していれば、その名前で人気をある程度とれるという、商売上の伝説である。
ハッキリ言って、それで成功した例を見た事がない。見た事がないのに、それに続くものが絶えないのは、やはりそれだけPOWER DoLLSが名作で人気があった、という事の表れでもある。
そしてまた、一つの作品が“POWER DoLLSの流れを組む”形で展開される。
その名は“Valiant Dolls”といい、スマホで展開するThird Person Shooting Game(三人称視点シューティングゲーム)である。
まぁ、ゲームジャンルがシューティングである事を否定するつもりはない。こういうシステムで世界観を共有するなんて事はよくある話だし、その中から名作が生まれる事だってある。しかし…認めたくないのはその『世界観を共有している部分がある』という根本的な部分であり『そこから作り出された設定がメチャクチャである』という事である。
ナンナンダ、この設定は…
まずこのビジュアルから見てもらいたい。このビジュアルは、Valiant Dollsの主人公、イリス・グリーンである。
アレ? と思った人、その疑問こそ私が許せないと言っている根源である。
本作、搭乗型のパワーローダーは登場せず、主人公達はヴァリアントスーツという装着型のパワーローダーを身にまとって戦闘するのである。
(゚Д゚)ハァ?
しかもこのヴァリアントスーツ、女性の血液に反応する特殊精製オニウムを利用するため、必然的に女性しか装備できない、という設定が施されている。
(゚Д゚)ハァ?
何だ、それ?
百歩譲って身にまとうタイプのパワードスーツが開発されたのはヨシとしても“女性しか装備できない”というのは、変じゃないか?
いや、もう百歩譲って女性しか装備できないという事をヨシとしても、このビジュアルのように軽装でいいのか? コレはあまりにも変だろう?
だって…投入されるのは戦場だよ?
しかも設定では“アーティキュラモーターにより、オニウムシリンダーを組み込んだ駆動系を動かすことで、生身の人間のスピードと力を驚異的に増幅させる”とあり、“その機動力を生かした戦闘スタイルは他を圧倒しており、白兵戦において無類の強さを誇る。また、戦術次第では搭乗型パワーローダーと対等に渡り合うことも可能である”とまで書かれているのに、この生身部分をさらけ出してるデザインって…アリなワケ?
搭乗型パワーローダーが生身の兵士に負けるワケがない、とは言わない。
機械化部隊にはかならず弱点があるし、純粋な戦闘力とは物理的破壊力と比例するものではないから、生身の兵士が勝つこともあるだろう。
しかし、もしこの設定が無問題なら、多分搭乗型パワーローダーは不要になり、ヴァリアントスーツを運用した女性兵士だけで構成した連隊がいくつかあれば戦場は制圧できてしまう事間違いない。
或いは、このヴァリアントスーツを着た女性兵士が運用する戦車や装甲車等を含めた制圧部隊があれば、大規模戦闘から小規模戦闘まで無敵な立ち回りが出来てしまう。
私にはそう思えてならない。
ただ、ゲーム上ではこのヴァリアントスーツによる部隊はネメシア小隊と呼ばれる部隊のみであり、しかも人員は4人らしい。
…だとしても、この設定を“POWER DoLLSの流れを組むもの”として扱う事は、私としてはものすごく抵抗がある。
おもしろいかどうかはわからない
ま、そんなメチャクチャな設定のValiant Dollsだが、既にiOS向け及びAndroid向けが配信中である。
価格は800円でいわゆるアイテム課金ではない。
買うか? と聞かれたら、私は買わないと思う。
もし、POWER DoLLSの流れを組んでいない、となれば、ゲームの善し悪しで買う可能性もあったかもしれないが、POWER DoLLSの流れを組んでいるとなれば絶対に買わない。買ってしまえばそれを認めてしまったことのように思えるから…。
ただ、そんな昔の事なんてどうでもいいんだよ、という人は、ひょっとしたら面白いかもしれないので、買ってみるのも良いかも知れない。
この辺りは、個人の判断の余地だと思う。
私としては、ぜひともPOWER DoLLS2をリテイクして欲しいと思う。
理想は、今の3D技術を使ってPOWER DoLLS2までのストーリーとミッションをPS4などのプラットフォームを使ってアクションゲーム化して欲しいところである。
アーマードコアのようなスタイルだったら、POWER DoLLSシリーズはもっと面白くなると思うのだが…。
ま、超高難度のシミュレーションゲームでもいいんだが、ちょっと立体的に作り替えてくれると面白さは倍増しそうである。
ただ…やはりオリジナルを超えるのはなかなか難しい所ではないかとも思う。
どっちにしても、語り継がれるだけのゲームであるPOWER DoLLSは名作だったという事実は変わらない。
ただ…そこから生まれていく新作が、過去を汚しているように思えてならない事態は、POWER DoLLSのオリジナルを知る者として悲しい限りである。
Valiant Dolls 公式サイト
http://bears-studio.com/works/valiantdolls/