伝説の音楽制作ツールが公開された。
8bit時代の音楽制作
MMLという言葉を知っている人は多分相当昔からコンピュータを知っている人ではないかと思う。
最近余り聞かない言葉ではあるのだが、これはMusic Macro Languageの略でMML言語は昔、コンピュータで音楽を鳴らす為のプログラム言語の一つだった。
MUCOM88は、そんなMML言語で音楽を制作する為のツールなのだが、これは世界樹の迷宮シリーズの作曲家「古代祐三」氏が開発した音楽制作ツールで、8bit時代のパソコンPC-8801シリーズが全盛期の頃、イース、ソーサリアンなど、数々の名曲がこのツールによって生み出されてきた。
そんなMUCOM88が、古代祐三が所属する株式会社エインシャントより、12月20日に無償公開した。現在同社のWebサイトからPC-8801用のディスクイメージとしてダウンロード可能で、Windows版のオープンソース化も併せて発表されている。
このディスクイメージを使えば、PC-8801に搭載されているYM2203及びYM2608からそのまま当時のMML言語の音楽を鳴らす事ができる。
が、ほとんどの人は既にPC-8801を所有はしていないはずなので、Windows上でMUCOM88を動作させるためのシステムも提供されている。
Windows版の開発を担当したのは、HSPの作者として知られるおにたま氏のオニオンソフトウェアで、このWindows版「MUCOM88」は、コマンドライン版、GUI版の両方が用意されていて、MML言語で技術された音楽をPC-8801の音源と同様に演奏させる事ができる。
また、Sound Chip Common interface(SCCI)を経由する事で実際のFM音源チップ(YM2608)による演奏が可能になる。知識のある人は挑戦してみてもいいかもしれない。
MUCOM88
https://www.ancient.co.jp/~mucom88/
MUCOM88 Windows Version
https://onitama.tv/mucom88/
ツールがあっても…
リアルタイムにPC-8801シリーズの音楽を聴いていた人はよくわかると思うのだが、当時のコンピュータ音楽の中心は間違いなくFM音源サウンドだった。
扱えるデータサイズが大きくなかった時代だけに、今のようなCD音質の音などは夢また夢の時代で、人間の声が再生されただけでも話題になるほどの時代である。
それもそのはず、データをやり取りするだけでもフロッピーディスクという1枚1MBにも満たない媒体で物理的にやり取りしていた時代である。そんな中で音楽を作るとなると、どうしてもFM音源のようなパラメータで音を作って音階と音程と長さを指定して演奏する方法に依存しなければならない。MMLはそうした音楽のパラメータを言語化したものと言えるが、それだけに理解するにはかなりの慣れと感性が必要だと私は思っている。
なのでツールを手に入れたからといって、古代祐三氏が今までやってきた事が簡単にできるかというと、決してそうではない。
前述した通り、楽器を演奏できたとしてもFM音源ではその楽器の演奏のようにはいかないのである。FM音源をMIDIインターフェースでコントロールできればまだ楽器演奏のMIDIデータでFM音源を鳴らす事はできるが、PC-8801に搭載されているだけのYM2203やYM2608を直接演奏させる事はMIDIデータでも不可能なのである(環境を作ってやれば何とかなるのかもしれないが…)。
根気よくMMLを理解し、モチベーションを維持できれば、古代祐三氏を再現し、模倣する事もできるかもしれない。そういう意味で、このツールは今までの軌跡を追いながら、根気よく理解を深めていくものになるのではないかと思う。
クリエイターとは、かくも過酷な職業なのか…という事を、存分に理解する事になるだろう。
そういう意味では今の音楽制作事情は昔から比べると手軽になったなと。
ただセンスを問われるのは今も昔も変わらない。


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