価格が高すぎて新製品でもサイレントスタート。
大容量メモリをどう考えるか
NVIDIAのGeForce RTX 4060 Tiを搭載し、メモリを16GBに増量した新モデルが7月18日から発売されている。
以前よりRTX 4060シリーズの中にメモリ倍増版がある事は言われていた話だが、それがついに発売されたという事である。
が、何故かそんなに話題に上っていないというのが今の状態。
何故? と思ったら、店頭実売価格として、RTX 4070の価格の方が安いから。
上位モデルはメモリを12GB搭載しているので、メモリが8GBでは心許なくても12GBあれば十分という人にとっては、RTX 4060 Ti 16GB版は全く魅力的に映らない。
単純にメモリ容量だけが倍増しているモデルなので、コア性能はRTX 4060 Ti 8GB版と同じだが、それで3万円近く高い価格が設定されているので、上位モデルの方が実売価格で下回っているというのが現状である。
VRAMが16GB搭載されている事で恩恵を受けられる人というのは、4K以上の解像度を当たり前に使う人だったり、GPGPUで生成AIをフル活用する人などに限られる事を考えると、特定用途向けのもの、という事にもなるわけだが、余裕を持っておきたいという人もいるわけで、そういった人たちが検討するにしてもこの価格は高すぎると言える。
今更考えるメモリ設計
NVIDIAのAmpereやTuring世代は、メモリ帯域幅はそんなに狭いわけではなかった。ただ、メモリ帯域幅をある程度確保する事で価格が高めにつくという問題もあった。
Ada Lovelace世代では、コア価格を下げたくなかったという事からか、メモリ帯域幅を思い切り絞り込み、その分の性能を大容量のL2キャッシュメモリで補い、性能低下を抑えるという手法を採ってきた。これによってコスト増をなんとか避けた、という事もできるが、そもそものコア単価が高いため、製品としての価格は決して安くはない。
そうしたある種、メモリをケチるところで価格を抑えたのがAda Lovelace世代なので、メモリ大容量のRTX 4060 Ti 16GB版の価格が高めになるというのは、ある意味間違っていないし、RTX 4080以上の製品が異様に価格が高いという事もこの意味で考えると理解できる話である。
ただ…ライバルであるAMD製品は、メモリ帯域幅を広めにとったよりメモリ容量の大きい製品を投入してきているので、なぜNVIDIAではこの価格設定になっているのかという事については、疑問が残る事に違いは無い。
RTX 4060 Ti 16GB版をオススメできる人
このように、価格的なデメリットが大きく目立つ16GB版だが、この製品をオススメできる人というのはどういった人なのかを改めて考える。
やはりとにかくオフラインでGPGPUを活用する人に尽きる。
ここでいうGPGPUは、生成AIの処理も含めての事である。
私自身、RTX 4070 Tiを使用していても、12GBのメモリで不安を覚える事がある。
単純な映像出力としてのビデオメモリではない用途の場合は、容量は多いに越した事はない。
逆に、普通にフルHDのゲームを楽しむだけという人であれば、8GBのビデオメモリであっても問題はないと言えるだろう。高リフレッシュレートのゲームであっても、おそらく問題はないはずである。
RTX 4070 Tiもメモリ増量版が出てくれればなぁ、と思わなくもない。
ただ、そうなるとRTX 4080の価格を上回る可能性が高くなる。そうなればRTX 4060 Ti 16GBモデルと同じ道を辿るだろう事は容易に想像はつくが。