Internet Explorer 7問題が解決したので、とりあえず前に告知(?)したDVD版空の境界の感想など書きたいと思う。
先に言っておくが、私は原作も読んでいなし、奈須きのこ氏作品の中毒者でもない。ましてTYPE MOON関係の作品が好きで好きでたまらないという人でもない(むしろ逆かもしれない)。
だから感想の中に明らかに反感を買う内容があるかもしれない。
まず最初に。
おそらく、この劇場版(DVD版)空の境界は、奈須きのこ氏の作品ではあるが実際はそうでない。
奈須きのこ氏の文体は、実はかなり読みづらい。というか、その読みづらさの中に氏のアイデンティティが多分に含まれていて、読みづらいを通り越したところに真の面白さが隠れている(と思っている)。
一見、煩わしいほどに小難しく記載された文体の中に、その独特の雰囲気と表現が込められているわけだから、理解できない者からすればそれは単に理解しがたい難文となる。
ところが、この劇場版はその小難しさがない。作品の中にある理解しがたい世界観の難しさはあるのだが、表現の煩わしさがないのだ。
逆を言えば、世界観の説明が足りないが故の理解の難しさだけが取り残されている。
原作を知っている人からすると、その辺りが何となく理解されて、小気味よい表現がそのままストレートに出てきているのかもしれないが、原作を知らない人からすると、まずこの世界観の理解が最優先に立ってしまう。
だから全く予備知識がない人が観ていると、進行する物語と世界観について行けず、ただ映像の流れを追っていくだけになる。ある程度の理解を得るには数回視聴しなければならないだろう。
まぁ…もともと全く予備知識のない人向けに作られているとは思えない作品であるが。
私はとりあえず月姫をプレイした事があるため、ある程度の予備知識がある。だから直死の魔眼と言われても理解はできるため、作品の言いたい方向は理解できた。
だが、キャラクター達の背景にある設定などは全くわからないため、やはり見始めの数十分は理解不能状態にあった。
観ているウチにある程度の人物相関が分かってきて、なおかつそのキャラクター達の立ち位置が見えてくると、わずかに知る世界観が物語の進行を加速させ、理解が急速に早まった。
もっとも、理解できたものは作品の世界観ではなく、あくまでも物語としての流れだけ。恐らく、世界観を理解するには原作は確実に読んでいなければならないだろうし、奈須きのこ氏の作品に精通する必要があると思う。
だから作品として面白かったか?と聞かれると、この第一章だけではおもしろいともつまらないとも言えないというのが本音である。
では映像として観た場合はどうだろうか。
映像はさすが劇場版というべきか、実に見事に描かれている。
ここら辺は絵に精通した人が正しい評価が出来るところだろうが、私から観た段階だと及第点である。
ただし。
それは静と動の間合いの取り方という部分においてのみである。
動の部分はもうちょっと迫力が欲しかった…と個人的には思った。
この第一章は“俯瞰”というものに焦点を当てているため、もっと上下の動きに注力すべきだったように思う。
攻殻機動隊シリーズの草薙素子を表現するとき、監督神山氏は「素子は普通のキャラだと横の動きのところを縦で表現する」というようなコメントしたと思ったが、まさしくこの作品も縦の動きにこそ作品のテーマを反映させるべきだったと思う。
もちろん、そういう表現が無かったわけではないが、イマイチその迫力というか焦点が甘かったように思う。
全七章。
おそらくこの作品を正しく評価するには、全てをリンクさせないといけないのではないかと思う。
ただ、この第一章だけで観た場合、前述のような感想を持った。
空の境界を知らない人間が感じた事だけに、評価としては間違った方向に向かっているかもしれないが、月姫を知っている私がこうなのだから、奈須きのこ氏の作品を全く知らない人からすると、評価とか以前の話になるかもしれない。
この劇場版「空の境界」はそんな作品じゃないかと思う。