Sonyは国内で唯一有機ELテレビを開発・販売していたメーカーだが、1月7日付けの読売新聞だと、その有機ELパネル採用の家庭用テレビに関して生産を終了すると発表した。
恐らく、この発表は先日の韓国LGの55インチ有機ELパネル採用3Dテレビの登場がキッカケだろうと思われるが、Sonyはこれで家庭用テレビに関しては液晶パネルによるモデルに集中する方針を採るようだ。
Sonyは2007年に世界初となる有機ELテレビを発売し、液晶テレビやプラズマテレビより画像が鮮明、かつパネルの厚みは3mmと薄い事をアピール、世界に「技術のSony」は健在である事を見せつけた。この商品は1台約20万円という高額設定ながら、発売当初は注文が殺到した製品だったが、今回の発表によってついにその栄光も幕を閉じる事となった。
たしかに韓国LGの55インチ有機ELパネル採用3Dテレビのインパクトは大きかった。
新しい4色ピクセル(red、green、blue、white)技術と色向上技術による高色彩&高画質に加え、新しい製造プロセスによって従来の有機ELパネルよりも大幅に低価格化できるという発表は同じ有機ELパネルを開発しているメーカーからしてみれば、結構驚きの内容だったに違いない。
実際、ここ最近の業績不振で設備投資を抑えていたSonyからしてみれば、現状の劣勢を覆すのは並大抵の事ではないだろう。そうなれば勝てないステージでの勝負から去るのもビジネスとしては方法の一つに違いない。
Sonyとして放送局などの業務用有機ELパネルは開発を続けるとしているが、今回の発表は事実上の撤退と考えて間違いないだろうし、それは即ち、韓国LGへの敗北宣言と見られても仕方のない結果といえる。
かつて液晶にしてもシャープの亀山工場は一つのブランドを築き上げたが、それも韓国企業の技術によって崩れ、今また有機ELパネルで敗北と続いている。
もうこの分野では韓国勢に勝つことはできないのだろうか?
恐らく、唯一勝機が見えるとすれば、それはタブレットやスマートフォンに使われる中小型液晶パネル分野だけではないだろうか。
この分野は高精細化が求められ、しかも大量生産を可能とする技術を要する。特にAppleの品質要求は高く、韓国企業も量産化するにあたり苦労していた部分である。ここを日本企業が押さえる事ができれば、そこから景気を取り戻し、技術開発へと繋げられる…そんな気がしてならない。というか、これをモノにできなければ世界で生き残れない時代に入っているのではないかと思う。
同じ製造業に身を置く者として、この行く末は気になって仕方のない所である。