STAP細胞の件から、理化学研究所、いわゆる理研の存在がいい加減という感じがしていたが、まさかここまでとは…
関係各所に謝って!
「関係各所に謝って!」という言葉の元ネタはモモノキファイブの中村先生の言だが、でも本当にそう叫びたい人がいる話が理研で起きたようだ。
朝日新聞デジタルの伝えるところによると、理化学研究所が国内外の研究機関の注文に応じて実験用マウスを提供している事業で、注文とは異なったマウスが繰り返し提供されていたようである。
その影響は41機関にのぼり、178匹の遺伝子組み換えマウスが提供されているようで、提供を受けた41機関の実験データが使えずに支障が出ているケースもあるという。
…いや、朝日新聞デジタルは「支障が出ているケースもある」というが、コレ、普通に考えたら提供されたマウスを使っている実験全てに支障は出ているのではないかと思うのだが…。
Yahoo!ニュース 朝日新聞デジタル
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140622-00000009-asahi-soci
この41機関がどういった所なのかまではわからないが、もしiPS細胞研究に関係するところにまで影響しているとすると、かなり大きな問題になりそうだ。
STAP細胞でも理研はとんでもない失態をやらかしているが、その責任を小保方研究リーダー側にのみ向けさせているように私には見えてならない。
確かにSTAP細胞研究の、小保方研究リーダーの研究ノートは信じられないものだったが、その小保方氏が理研に所属する際の手際も、理研の杜撰さを表していたし、今回の件も理研という組織そのものを揺るがすほどの杜撰さを呈しているとしか思えない。
理化学研究所の存在
このBlogでは、滅多な事がないかぎり政治に関わる事を言わないようにしている。理由はいろいろな考え方があるから。Blogだから私見を言っても問題はないのかもしれないが、一人の視点だけで政治を語るといろいろと問題になるだろう、という事であまり言わないようにしている。
まぁ…それでも時々政治的な事を言ったりするのだが、今回はSTAP細胞の件や実験用マウスの件など不祥事が多い為、ちょっと突っ込んで考えてみたい。
理化学研究所は歴史的にみてその設立は大正時代に遡る。当時の必要性思想と今の思想が同じかどうかはわからないが、発足当時から政府からの補助金など公費が投入されていた研究所である。
太平洋戦争後、時のGHQによって一度は解体となったものの、昭和23年(西暦1948年)には株式会社科学研究所として再出発した。
その後、昭和31年(西暦1956年)に「株式会社科学研究所法」が制定され、政府の出資を受けるようになる。この「株式会社科学研究所法」から新たに「理化学研究所法」が昭和33年(西暦1958年)に制定され、特殊法人「理化学研究所」が誕生した。
どうも、この辺りの流れを見ていると、随分と混沌とした組織改革が常に起こされているように見える。戦後、解体したところから再出発した際に、必要な資金をどうやって集めていたのかが気になるのだが、結局は政府の出資を受けていた事は間違いの無い話であり、最終的な特殊法人化はお金の流れをどうやって整流化しようとしたのか、などの行き着いた先の話ではないかと思える。
結局、この特殊法人化のまま理化学研究所は平成15年(西暦2003年)まで継続するが、その後、独立行政法人化され、現在に至っている。
この特殊法人である事と、独立行政法人である事の違いは、実はものすごく単純な話で、特殊法人は資金調達に国の保証を得られるが、独立行政法人は民間企業と同じく国の保証を得られないという事。さらに法人所得税や固定資産税などの納税義務が生じることである。
もちろん、全ての独立行政法人が納税しているわけではなく、そこは利益がどれだけ出ているかで決まっているのではないかと考えられる(私の憶測である)。
つまり、表向きは民間企業と似た性質を持つ存在であるわけだが、おそらく内情では莫大な資金が動く事から、かなり金銭面では雑な処理をしているものと考えられる。
2004年以降には研究費の不正流用問題が出たり、海外出張費の二重取りがあったりと、正式な官公庁でないが故の粗雑さが垣間見える。
こんなもの、民間企業ならすぐに露呈する話であるが、理化学研究所で発覚したものは、発覚した時点でその金額がとんでもなく巨額になっているケースがほとんどである。日頃の杜撰さが原因としか思えない。
この杜撰さは、言うまでも無く金銭面だけの話ではない。
今回のマウス提供問題もそうだが、管理側に問題があるように見て取れる。
というのも、組織的に他の研究所とは異なる特徴を持っていて、教授職や准教授職などの一般職以外に、グループディレクター制という任期付きの教授のような存在を中心に研究が行われている。
このグループディレクターはディレクターとは言うものの、この存在を中心に各研究が行われているため、存在的にはプロジェクトマネージャー的な存在であり、人事権や予算権を持っている。
つまり、グループディレクターが「コレ」と決めてしまえば、内部の人事を好きに出来、また予算すら操作できてしまうのである。
もちろん、研究結果の報告をしなければならない以上、成果が上がらなければ問題となるわけだが、一定の成果が出ていればそこに不正があってもなかなか露呈しない可能性は十二分にあると言える。
ましてマウス事業は確実にある一定の結果は出ているわけで、そこの管理が表面上問題がなければ事業として問題が無い、という風に片付けられる可能性は否定できない。
こういうのは組織が巨大化すればするほど、監査組織を持たないと不正が行われるのは、民間企業であっても同じである。
未だに1部門の担当者が不正をやらかすのと同じだ。
だが、理化学研究所のような所がこういう問題においてとても厄介なのは、その動く金額が巨額だという事と、その研究に必要な資金用途が専門家ではないとよくわからないものがあるという事だ。
つまり、意識の低い人がその職務についてしまえば、不正はなかなか露呈せず、悪用しようと思えばいくらでも悪用できてしまうのである。まぁ…これはある種、すべての存在・組織に言えることではあるのだが。
理化学研究所の特殊性を考えれば、この組織は一度見直す時期に来ているように思えてならない。
個人的に言えば、小保方氏のような研究ノートを書く研究員が在籍している事自体に疑問を感じるし、それはグループディレクターの人事権の乱用のように思えてならない。
普通、株式会社にも存在するのだが、監査役と呼ばれる存在が会社を設立する時に必要になる。この監査役は、もちろんその名の通り会社組織が不正をしないように監査する事を目的として存在する(他にも会計監査も役目になる)のだが、民間企業でも小さな零細企業や中小企業では一族の者が監査役に登録され、ほとんどその機能を果たさない事が多い。
だが、少なくとも理化学研究所のような巨大組織であるならば、そこに監事会と呼ばれる監査官や評議員が所属する会が存在し、その業務を監視していないといけないわけだが、いろいろな問題を見ていると、この監事会がまともに機能していたとは思えない。
小さな零細企業や中小企業ならいざ知らず、国家が独立行政法人として認めた企業で、監事会が機能していないという事の重大さを、国家レベルで追求しなくてよいのだろうか?
日本は世界的にも凄い研究をしていて、成果も出してきている。
私は同じ日本人としてそういう人達を偉大だと思うし、誇りにも思う。
経済大国日本を創り上げてきた要素の一つが、こうした先進的な科学実験にある事は言う迄も無いが、その実験に裏付けが必要なことは科学者が一番よく知っているハズだし、そうした常識や責任を熟知した人が研究に没頭すべきだが、すべての人が完璧でいられるわけがない。であるならば、そうした研究を守る為にも、研究者を人選し、管理し、適正に援護する存在をもっと並列的に、しかも特殊な特権を与えないレベルの管理組織を作るべきだと私は思う。
人のする事だから、絶対はあり得ない。
だから、せめて絶対に近い妥当性のある存在を目指すべきであり、今の理化学研究所にはその素養が欠落しているように思える。
既に国内だけの話ではなく、世界的な話になっている以上、見直すべき組織はさっさと見直し、健全な組織にして新たに出直すべきである。
これでは、真面目に実験している研究員が不憫でならない。